「いーじゃん!J-POP だから僕は日本にやって来た」

  • 2009/06/01(月) 08:25:57

【読書ノート】
いーじゃん!J-POP
書籍名:いーじゃん!J-POP だから僕は日本にやって来た
著者名:マーティ・フリードマン
出版社: 日経BP出版センター
2008年4月7日発行


今や元MEGADETHのギタリストというよりも、いくつものテレビ番組で活躍する日本語ペラペラの凄腕アメリカ人ギタリストといった方がしっくり来るマーティ・フリードマン初の著書「いーじゃん!J-POP だから僕は日本にやって来た」を読みました。読書ノート3冊目にして初めての音楽関係の本です。

本書は大きく分けて以下の3部構成となっています。

PART1「僕がJ-POPに目覚め、日本にやって来るまで」
マーティの少年時代からギターを始めたきっかけ、HAWAII、CACOPHONYといったバンドを経てMEGADETHに加入することになったいきさつなど、彼の自叙伝ともいうべき内容ですね。MEGADETH脱退の裏にJ-POPとの出会いがあったというのは初めて知りました。CACOPHONYでマーティと活動を共にしていたJason Becker(G)や、マーティと同じ時期にMEGADETHのギタリスト・オーディションを受けていたJeff Loomis(G/NEVERMORE)の作品を今年に入ってから聴いていたので、興味深く読ませてもらいました。

PART2「マーティが選ぶJ-POP極私的TOP40」
文字通りマーティが好きなJ-POPの楽曲をランキング形式で紹介しています。TOP10圏内には華原 朋美松浦 亜弥(他のハロープロジェクト系も多数)がランクインするなど、僕にとってはあまり聴く機会のないであろう楽曲が選ばれていますがマーティの解説を読んでると、松浦 亜弥も1回聴いてみようかなと思いました(笑)。

PART3「人気J-POP100曲をメタル斬り!」
本書のメインがこちらです。「日経エンタテイメント!」と「日経トレンディネット」で2006年10月から2008年3月までに掲載されたコラムをまとめていて、数々のJ-POPアーティストをマーティ独自の目線で批評しています。解説のポイントとしてはコード進行、転調、声質、プロデュース力、洋楽からの影響の有無など多岐に渡っています。これまで音楽批評というと評論家の人たちが豊富なボキャブラリを駆使して音楽を語るというイメージで、いざ読んでみると普段使ないようなカタカナ語や抽象的な表現が多くて「結局、この作品はどんな音楽なんですか?」というモヤモヤ感が残ることが多くありました。それに対して本書では外国人のマーティが日本語で書いていることもあって、文章内に難しい単語はほとんどなく非常に読みやすいんですよね。

中にはこんな面白い表現もあります。
・ヘタウマって音痴とは違うんだよね。音痴は音痴。9割9分以上はただの音痴だから、ヘタウマは宝石みたいなもの(P.79)
・GLAYはマクドナルド!?(P.83)
・宇多田は醤油好きなベジタリアン(P.87)
・エアロスミスと比較するなんてB’zに超失礼だよ!(P.106)


他にも、J-POP女性シンガーをアメリカ人が初めて寿司にチャレンジする時になぞらえて解説したP.111、コブクロゆずみたいなデュオがアメリカにいない理由に始まり、これら2つのデュオを比較したP.94、ZARDはヘビーメタルと歌謡曲が奇跡的な化学変化で融合したものだと語るP.216~221など、プロのミュージシャンらしい視点でありながらも僕のような素人にもわかりやすく書いてくれています。

J-POP大好きなマーティなだけに「あばたもえくぼ」的なところがない気がしないでもないですが、音楽評論の本は小難しいというイメージを持っていた僕もすんなり楽しく読めた1冊です。

マーティがJ-POPを高く評価している点をまとめると
1.プロのミュージシャンから見て、時に音楽理論を無視していると思えるコード進行の面白さ。
2.異ジャンルの要素を上手く組み合わせることで、1曲の中に別々の2曲が存在しているJ-POPならではの現象。
3.プログレっぽい変拍子がお茶の間のポップミュージックにメロディを邪魔しないように、こっそり混じっている点。
4.洋楽の一部のメロディを巧みに取り入れ、しかも音色とかスピードが全然違うため全体的な曲の雰囲気も全く異なること。(マーティはこれを「プチパクリ」と呼んでいて肯定しています。)

といった感じでしょうか。

幅広いアーティストを取り上げているので、本当にマーティはJ-POP好きなんだなぁと感心してしまいます。今回は取り上げていなかったDREAMS COME TRUECHAGE and ASKAなどのメタル斬りもいつか読んでみたいな。

また本書の中で印象的だったのが
日本では、邦楽って、洋楽よりもレベルが下だと思い込んじゃってる人が結構いるよね。でも、その考えは間違ってます。それはただのコンプレックスだよ。洋楽出身の僕が言うんだから、絶対に確かです。たぶん、日本人は生まれたときからずっとJ-POPを聴いてて、その世界に慣れちゃってるから、J-POPの深さを当たり前のことだと思っちゃってるんだよね。それって、僕からすれば、灯台下暗しだよ。(P.56)
という文章です。

日本に住んでいて初めて関心を持った音楽が洋楽だったという人は、ごく少数だと思います。多くの人がまず邦楽を聴いて、その先に洋楽との出会いがあるのではないでしょうか(僕もそうでした)。確かに僕自身、HR/HMを聴き始めた1995年当時は洋楽が邦楽よりも優れているという気持ちがなかったといえば嘘になります。でも、そうやって「自分の聴く音楽に壁を作ってしまうということは、自分の感性に合った音楽と出会うチャンスを自ら放棄してるんじゃないか」というのが僕の持論です。

HR/HMを主に聴いている僕にとっての名曲(好きな曲)はHR/HMというジャンルにだけ存在するのではなく、J-POPにも勿論あるし、ジャズ、ブルーズ、クラシック、ラップ、ヒップホップにも数の大小の差はあれ存在するということを、これまでのミュージックライフを通して肌で感じてきました。1995年からいろんな音楽を聴いてきて思うのは、音楽自体に優劣はなくって作り手(ミュージシャン)の感性と僕の感性が合致した時に、その曲は僕にとっての名曲になるんだということです。これからもHR/HMをメインとしつつ、自分で壁を作らずに様々な音楽を聴いていきたいです。ただ一生の中で音楽を聴く時間には限りがあるので、どうしても僕の好きなHR/HMメインになるんですけどね。

また少し話が逸れますが、日本人は音楽に限らず世界的に見ても素晴らしいもの(文化、技術、国民性など)を持っているのに、新聞やテレビで報道される話題は日本のマイナス面を強調したものが多いように思います。添乗員時代にいろんな国を訪れ、いろんな国の人達と仕事をする機会があったのですが、その経験を通して思ったのは「僕は日本に生まれて幸せだ」ということでした。他の国で生まれていたら不幸せだったというわけではありませんし、日本にも改善すべき点はあると思います。そんなマイナス面を認める謙虚さや、それを改善する努力は凄く大切だと思いますが、そのマイナス面ばかりにスポットを当てるというのはちょっと…。もっと自分の国の良いところに目を向け、自信を持った方が楽しい毎日を過ごせるんじゃないかなと本書を読んで改めて思いました。楽天家過ぎますかね。

とにかく、この本は楽しく読めるJ-POP批評本です。マーティの「J-POPメタル斬り延長戦」は現在もこちらで連載中なので興味のある方はもどうぞ。本書の第2弾が6月に出るようなので楽しみにしています。

また、マーティといえばJ-POPの楽曲をギターインストにアレンジした「TOKYO JUKEBOX」という作品を5月20日にリリースしてますね。

TOKYO JUKEBOX
MARTY FRIEDMAN「TOKYO JUKEBOX」

1. 爪爪爪(マキシマム ザ ホルモン)
2. GIFT(Mr.Children)
3. 天城越え(石川 さゆり)
4. Story(AI)
5. ポリリズム(Perfume)
6. 帰りたくなったよ(いきものがかり)
7. TSUNAMI(サザンオールスターズ)
8. 雪の華(中島 美嘉)
9. 駅(竹内まりや)
10. 世界に一つだけの花(SMAP)
11. ロマンスの神様(広瀬 香美)
12. 明日への讃歌(alan)

①、③、④、⑦、⑧、⑩、⑪など好きな原曲が多いし、2005年の年間ベストチューンに世界に一つだけの花(MARTY FRIEDMAN)from「LOUDSPEAKER」をチョイスした僕としては、このアルバムはMUST BUYの1枚といえそうです。
僕はマーティのようなプロの視点は持っていませんが「いーじゃん!J-POP」を参考にさせてもらって「えーやん!日本のポップス/歌謡曲」というカテゴリをこのブログで作って、思い出深い日本の曲を紹介してみようかなぁなんて思ってます。

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メタリストさん

こんにちは。真にオリジナリティのある音楽を今から生み出すのは至難の業だと思ってます。
元々オリジナルとしてあるものを組み合わせて新しいものをつくる点(マーティいわく「プチパクリ」)と、J-POP特有のボーカル(マーティいわく「ヘタウマ」)を受け入れられればJ-POPはかなり興味深く楽しめる音楽なんだなと思いました。
「yeah!めっちゃホリデイ」は最近「エアあやや」でよく耳にします(笑)。あの曲にもいろんな要素/アレンジが含まれてるんですね。確かマーティもお気に入りJ-POPの10位以内にこの曲を挙げてました。また機会を見つけて色々聴いてみようと思ってます。

  • 投稿者: よしよ
  • 2009/06/02(火) 08:30:02
  • [編集]

neppieさん

こんにちは。この本は好評なようで書店の音楽誌コーナーでよく見かけますので、よろしければ読んでみてください。
「TOKYO JUKEBOX」は近々ゲットする予定です。一番聴きたいのは「天城越え(石川 さゆり)」かなぁ。メタルアレンジに合いそうなので。

  • 投稿者: よしよ
  • 2009/06/02(火) 08:20:57
  • [編集]

興味深く読ませて頂きました。
マーティ・フリードマンと言えば、大の親日家でも有名ですが
こんな本を出していたとは知りませんでした。
彼の言う通り、J-POP自体は決して洋楽に劣るものではないと私も思います。
ただ、能やら水墨画などの伝統芸能が素晴らしいと思いますが
戦後、海外から入ってきたジャンルの音楽の創作物に関しては
オリジナリティがあまり無い気はします。厳しい言い方をすると二番煎じです。
しかしながら、元々オリジナルとしてあるものを組み合わせて
新しいものを作る・・・いわゆるJ-POPは
マーティも言っているようにとても面白いと思いますね。

松浦亜弥の「yeah!めっちゃホリデイ」でしたっけ?(曲名うろ覚えですが)
あれを昔、友人の結婚式で演奏したことがあるので分かるのですが
あの曲は80年代のクラブミュージックとか民族音楽とか
色んな要素が詰め込まれていて、とても贅沢な
アレンジですし、曲もいいのでオススメです。
最近のはよく知らないんですけどね(苦笑)。

  • 投稿者: メタリスト
  • 2009/06/02(火) 02:41:56
  • [編集]

興味深い一冊

非常に興味深い一冊ですね!
書店で探してみます。
「TOKYO JUKEBOX」も聴いてみたい!

  • 投稿者: neppie
  • 2009/06/01(月) 14:25:17
  • [編集]

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