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TNT「REALIZED FANTASIES」(1992)

  • 2020/06/10(水) 00:00:00

REALIZED FANTASIES
【No.543】
★★★(1997)

「TELL NO TALES」(1987)、「INTUITION」(1989)の2作品が高く評価され、北欧メタルの雄としての地位を日本で確立したTNTの5thアルバム。直近2作品は本国ノルウェーと日本で好評を博したもののアメリカでのセールスが不調に終わったためレーベルを移籍、そのレコード会社から楽曲に対する注文が入ることも少なくなかったようで当初の予定から大幅に遅れて完成に至ったのが今回のアルバムです。僕はリアルタイムで本作を聴いていませんが、リリース当時は日本のファンからも厳しい意見が多かったようで、後追いの僕にとっても「INTUITION」の次に本作を聴いた時にはかなり違和感がありました。

その違和感の要因としては、バンドがこれまでに築き上げてきた楽曲の透明感や北欧ならではの叙情メロディがかなり減退、アメリカンなロックサウンドに移行していることが大きいですね。それにともなってTony Harnell(Vo)もガナって歌う場面が散見されます。また細かい点かもしれませんが過去作品の収録時間が30分台だったのに対して、本作は50分弱のボリュームとなっている点も気になりますね。このバンドはコンパクトながらも密度の濃い作品を届けてくれるのが大きな特徴だったので4〜6分台の曲が並ぶ本作を聴いて「TNTがフツーのバンドになってしまった…」と一抹の寂しさを感じました。とはいえTonyのハイトーンは健在だし、Ronni Le Tekro(G)によるヘンテコなギターワークも相変わらず冴え渡っているので、従来のTNTと比較しなければそれなりに楽しめるのも事実です。

捻りの効いたギターが耳に残るハードロック①Downhill Racer、②Hard To Say GoodbyeやLAメタル的なドライヴィングチューン③Mother Warned Me、派手さはないもののサビメロがクセになるラスト曲⑩Indian Summerは本作ならではの楽曲だと思います。また坂本 龍一「戦場のメリークリスマス」に似たメロディが登場するバラード④Lionheart、爽やかでポップなメロディが気持ちいい⑤RainなどはTNTらしさが感じられるナンバーです。特に④は彼等がこれまでにバンドが生み出してきた名バラードに比べても遜色なく、この曲のために本作を聴く価値があると思えるほど。その一方でお洒落なピアノやギターソロの響きがQUEENを彷彿とさせる⑧Easy Street、ブルージーな⑨All You Needといった「TNTでやる必要がある?」と感じてしまうナンバーが集中するアルバム後半は微妙ですね。後にRonni自身も「妥協の産物」と語る本作が今ひとつ纏まりに欠けるアルバムになっているのは、バンドが目指す音とレーベルの意向が噛み合わなかったせいかもしれません。個人的にアルバム前半は気に入っているので駄作で片付けてしまうのは勿体ない1枚だと思います。本作を最後にTNTは一時解散、1997年に「FIREFLY」で復活を果たしますが多くのファンから本作以上に厳しい評価を受けてしまうことに…(苦笑)。僕は本作までしかTNTのアルバムは聴いていませんが「FIREFLY」以降の作品もいつかチェックしてみたいと思っています。

【音源紹介】
Lionheart

TNT「INTUITION」(1989)

  • 2020/05/25(月) 00:00:00

INTUITION.jpg
【No.542】
★★★★(1997)

「バンドの最高傑作」、「80年代北欧メタルを代表をする名盤」など高い評価を受けているTNTの4作目。2nd 「KNIGHTS OF THE NEW THUNDER」(1984)でTNTサウンドの礎を築き、前作「TELL NO TALES」(1987)ではその進化形を見せてくれましたが、今回は更に洗練されていて普段HR/HMに馴染みのない人にも受け入れられそうなほど聴きやすい作風となっています。透明感に溢れたサウンドの中で煌くメロディ、それを歌い上げるTony Harnell(Vo)の超絶ハイトーンボイスとRonni Le Tekro(G)による独特のギターフレーズが織り成す音世界は今回の本作で完成の域に達しています。

アルバムはTNTとしては初となる序曲①A Nation Free (Intro)でスタート、この曲がスケール感たっぷりなので荘厳な幕開けとなっています。②Caught Between The Tigersは個性的なギターリフとグルーヴを持ったロックチューンで、典型的なTNTソングとは一線を画す曲調ながらクセになる1曲ですね。それに続く北欧ハードポップの理想郷③Tonight I'm Falling、母国ノルウェーのクラシック音楽家グリーグの「ペール・ギュント」第二組曲の「ソルヴェイグの歌」のメロディ(後にKAMELOTも名曲Foreverでフィーチュアしています)をギターソロに取り入れた美麗バラード④End Of The Line、冒頭のギターメロディだけで心を鷲掴みされる爽やかな名曲⑤Intuitionの3連発は実に強力。それ以降も②に通じるメタリックな側面を見せる⑥Forever Shine On、ポップセンスが弾ける⑦Learn To Love、③や⑤といった超名曲の影に隠れがちですが並のアルバムならキラーチューン間違いなしの⑨Take Me Down (Fallen Angel)、ワルツのような雰囲気の中で泣きのメロディとミステリアスなギターソロが光るエンディング曲⑩Wisdomなど聴きどころが満載です。

惜しむらくはRonniがボーカルをとった小曲⑧Ordinary Loverが作品全体の流れから見て浮いていることでしょうか…。本作リリース後に実現した初来日の記念盤として再発された「INTUITION」(現在は入手困難)にはElectric Dancerという軽快なロックソングがボーナスとして追加されているのですが、なかなかの佳曲なので⑧よりもこちらの方を通常盤に収録して欲しかったですね。ちなみにElectric Dancerは1996年発売のベスト盤「TILL NEXT TIME」でも聴くことができます。とはいえ、全10曲中の約半数にあたる4曲(③、④、⑤、⑨)が名曲という充実振りには脱帽で、各所で高く評価をされていることも納得の名盤です。

【音源紹介】
Intuition

TNT「TELL NO TALES」(1987)

  • 2020/04/30(木) 00:00:00

TELL NO TALES
【No.541】
★★★★(1997)

本国ノルウェーでは3週連続でナショナルチャート1位に輝くなどヒットを記録したTNTの出世作にして通算3枚目となるアルバム。日本デビュー盤でもあった前作「KNIGHTS OF THE NEW THUNDER」(1984)はTNTがアイデンティティを確立するための重要作品だったのは事実ながら、バンドとしては発展途上にあることが感じられる1枚でもありました。それに対して本作では2ndにあったヴァイキングメタル系の曲は姿を消し、メジャー感が大幅に増しているだけでなく「北欧ならではの透明感と美しくもキャッチーなメロディを詰め込んだHR/HM」というTNTらしさを凝縮した仕上がりとなっていますね。

バンドの成長振りをいきなり見せつけてくれるアップテンポ①Everyone's A Star、ノリの良いギターリフからキャッチーなサビへ繋がっていく②10,000 Lovers (In One)、珠玉の美旋律ハードロック③As Far As The Eye Can See(見わたす限り)と続く冒頭3曲は実に強力。その後も邦題のセンスは微妙ながら美しさに溢れたバラード⑤Child's Play(チャイルド遊戯)からシームレスに繋がるアコースティックのインスト小品⑥Smooth Syncopationを挟んで爽やかなメロディが躍動する⑦Listen To Your Heart、曲名からして北欧テイスト満点の名バラード⑨Northern Lights、アルバムラストを派手に締めくくるスピードメタル⑪Tell No Talesを始めとする北欧メタルの最高峰が堪能できる1枚となっています。「KNIGHTS OF THE NEW THUNDER」の記事でも書いたように僕はベストアルバム「TILL NEXT TIME」(1996)がTNTとの出会いだったので、そこに収録されていない⑨を初めて聴いた時には「なぜこの曲が入っていないんだ?」というのが率直な感想でした。

加入2作目となるTony Harnell(Vo)の突き抜けるようなハイトーンは更に伸びやかになっているし、メインソングライターでもあるRonni Le Tekro(G)もクラシカルなインスト④SapphireYNGWIE MALMSTEENばりに弾きまくっているほかリフやソロで、その独特なセンスを遺憾なく発揮していますね。全11曲で31分足らずと、収録時間だけ見るとEP並みのボリュームしかないものの中身は濃密で聴き応え満点の逸品となっています。一般的にTNTの最高傑作は4th「INTUITION」(1989)という声が多いようですが僕にとってはどちらも甲乙付け難い名盤です。メタリックなエッヂもある本作、そこから更に洗練された次作という感じでしょうか。これからTNTを聴く方にはどちらの作品も手に取ってもらいたいですね。

【音源紹介】
10,000 Lovers (In One)

TNT「KNIGHTS OF THE NEW THUNDER」(1984)

  • 2020/04/20(月) 00:00:00

KNIGHTS OF THE NEW THUNDER
【No.540】
★★★(1996)

Ronni Le Tekro(G)率いるノルウェー出身の北欧メタルバンドTNTの2ndアルバム。後にバンドの顔となるアメリカ人シンガーTony Harnell(当時はTony Hansen名義)は本作から加入しています。バンド名を冠した1stアルバムはDag Ingebrigtsen(Vo)なる人物が歌っていたのですが、その時点ではTNTの代名詞である透明感やキャッチーなメロディといった要素は皆無に等しく、歌詞はノルウェー語のB級メタルだったのに対して全編英語詞による本作ではTNTらしさが感じられるようになっていますね。とはいっても前作からの影響もまだ残っていて彼等の作品群の中ではメタリックな印象が強いアルバムです。ちなみにDagの後任にはMICHAEL SCHENKER GROUPを脱退したばかりのGary Barden(Vo)にほぼ決まりかけていたのですが、無名ながら圧倒的な歌唱力を誇るTonyを迎える決断を下したそうです。もしGaryが加入していたらバンドの音楽性も今とは別のものになっていたかもしれませんね…。

僕はバンド初のベスト盤「TILL NEXT TIME」(1996)で初めてTNTの音に触れ、その後にオリジナルアルバムを聴いたので、重厚でありつつキャッチーさも忘れない①Seven Seas、何度も繰り返されるサビがクセになる④Last Summer's Evil、HR/HMのお手本のような⑦Break The Ice、勇壮なヴァイキングメタル⑩Knights Of The Thunderなどベストアルバムの収録曲に耳がいきますね。ただ本作はそれ以外にも疾走感溢れるイントロと爽やかなサビの対比が見事な②Ready To Leave、タイトル通りのロマンティックなインスト小品③Klassisk Romance、いかにも北欧のバンドらしい美麗バラード⑤Without Your Love、TNTにしては珍しく漢臭いコーラスをフィーチュアした⑥Tor With The Hammerといった魅力的なナンバーが並んでいる点も見逃せません。

バンドの代表作と言われる3rd「TELL NO TALES」(1987)、4th「INTUITION」(1989)に比べると粗削りだし、Tonyのボーカルに力みが感じられたり、メンバーのルックスも垢抜けなかったりするのは事実ながら1st「TNT」(1982)から大きく進化していることは間違いありません。デビュー作のソングライティングには前任シンガーDagが関わっている曲がそれなりにあったようなので、TNTというバンドの基礎が確立されたのは本作からだと言えると思います。Dagは実力不足などを理由に事実上の解雇という形でバンドを離脱したそうですが、本作でもドラムを叩いているDiesel DahlがTNT脱退時に結成したTINDRUMの2nd「HOW 'BOUT THIS ?!」(1989)でリードボーカルを務めたり、2012年に敢行されたTNTの歴代シンガーが集ったライヴ(後に「THE 30TH-ANNIVERSARY CONCERT」としてDVD/CDがリリース)に参加したりしているのでメンバーとの関係性は悪くないようです。

【音源紹介】
Seven Seas