ZENO「RUNWAY TO THE GODS」(2006)

  • 2016/05/13(金) 00:00:00

RUNWAY TO THE GODS
【No.470】
★★★★(2006)
年間ベスト2006年第10位

未発表曲を集めた「ZENOLOGY II」(2005)から僅か1年弱というZENOらしからぬ短いスパンで発表された3rdフルレンスアルバム。本作の注目ポイントは何と言ってもシンガーの交代劇でしょう。良くも悪くも個性のあるハイトーンでZENOサウンドの一端を担っていたMichael Flexig(Vo)がバンドを離れ、後任にMichael Bormann(Vo/ex-JADED HEART etc)を迎えています。ハスキーな声の持ち主であるBormannはFlexigと対照的なタイプのシンガーで、情感たっぷりに(時にねちっこく)歌い上げるそのスタイルは好き嫌いが分かれそうですね。Zeno Roth(G)はクセのある歌い手が好みなんでしょうか。ファンの間でも賛否両論のフロントマン交代に関して、僕はFlexigの声が苦手だったので個人的には歓迎しています。Flexigがその出来栄えに満足していなかった「ZENOLOGY II」の音源を公開したことが不満で彼がZenoと袂を分かつことになったという話は残念ですが…。ちなみに当初はTommy Heart(Vo/FAIR WARNING)を後任に迎えるという話があったもののFAIR WARNINGが再結成することになったため流れてしまい、後にJADED HEARTの音源を聴いたZenoがBormannに参加を打診したそうです。

そんなボーカルチェンジが影響してか、ZENO特有のエキゾチックな雰囲気や神々しさは大幅に減退、ハードロックバンドならではの骨太さやパッションが増量されていて普遍的なメロディアス・ハードロックに近づいていますね。この変化をZENOらしさが失われたと見ることもできるかもしれませんが、僕にとっては本作がZENOの中で一番好きなアルバムです。何と言ってもオープニングの①Fanfares Of Loveが問答無用のキラーチューン!プレイボタンを押すと同時に切れ込んでくるギター、ZENOにしては意外なほどストレートに駆け抜ける疾走感、そしてBormannの熱唱が一体となって押し寄せてきます。元々Zenoはミドルテンポの②Climb The Skyを1曲目、①を2曲目にするつもりだったそうですが、複数の日本人関係者から「Fanfares Of Loveをオープニングにするべき」と意見があったため変更したのだとか。重厚な②も好きな曲ではあるもののアルバムの幕開けに持ってくるには微妙なので「日本人関係者の方、グッショブ!」ですね(笑)。

①のインパクトが強過ぎるために、それ以降の楽曲は存在感が希薄になっていることは否めませんが、流石のZENOクオリティなので聴き応えは十分。リフから歌い出しにかけてがDEEP PURPLEBurnしているハードロック⑧I Feel - I Liveも面白いですね。クラシック曲をZENO流にアレンジした⑥Sogno Di Angelo(Mascagni Arr. Zeno)、エンディングに向けて圧巻の盛り上がりを見せる⑪ Sunset Birds Flying Home(Celestial Touchdown)という2曲のインストもアルバムにメリハリをつけています。従来のZENOらしさが色濃く出たバラード⑩Do You Feel The TimeはZenoの母親に捧げられた曲だそうで一部Zeno本人が歌っていますがBormannに全編歌って欲しかったというのが本音ですね…。余談ですが本作のアートワークを手掛けているはZENOのオリジナルメンバーでFAIR WARNINGの中心人物でもあるUle Ritgen(B)だそうです。彼が画家として活動しているのは知っていたものの実際に作品を目にしたことはなかったので、その予想以上の出来栄えに驚きました。ZENOの世界観ともマッチしていますね。本作リリース時のインタビューでZenoは作曲したマテリアルを全て出し尽くしたと語っていたので、次のアルバムを聴くのはだいぶ先になるだろうと覚悟はしていましたがもう10年が経ってしまいましたね…。そろそろ新作をお願いしたいところです。

【音源紹介】
Fanfares Of Love

ZENO「ZENOLOGY II」(2005)

  • 2016/05/02(月) 00:00:00

ZENOLOGYII.jpg
【No.469】
★★★(2005)

兄のUli Jon Roth(G)と共にHR/HM界きっての寡作アーティストとして知られるZeno Roth(G)率いるZENOの未発表音源集第2弾。「ZENOLOGY」(1995)は1987年から1994年までに録音されたマテリアルを集めたものでバンドのリードボーカルMichael FlexigのほかTommy Heart(Vo/FAIR WARNING)、Helge Engelke(G/FAIR WARNING)がシンガーを務めていたのに対し、本作は1983年から1989年にレコーディングされた11曲を収録していてMichaelが9曲、Tommyが2曲で歌っています。バックを固めるのはUle Ritgen(B)、C. C. Behrens(Ds)というFAIR WARNINGのリズム隊なので、もしZENOが1989年に一時解散していなければFAIR WARNINGが誕生することはなく、このラインナップでZENOとして活動していたのかもしれませんね。

東洋的なフレーズを織り込んだ神々しいムード漂うメロディックロックがZENOの特徴のひとつですが、本作ではそういった「らしさ」は希薄になっているように思います。僕は上記の要素がどちらかというと苦手なので、今回のような親しみやすいメロハー路線は歓迎ですね。結果的に「キーボードのフィーチュア度が高いFAIR WARNING」という感じの仕上がりとなっていて、各曲のクオリティに関しても未発表音源を集めたとは思えないほど質の高いものばかり。アルバム制作に並々ならぬ拘りを持って膨大な時間を費やすZenoが世に出すことを良しとした作品なので当然かもしれませんが、お蔵入りになっていたのが不思議なほどの楽曲が並んでいます。高揚感に溢れたハードロック②Tonight、③Hard BeatやZENOにしては珍しくポップで明るい曲調の④Dreaming The Night Away⑥Victoria、グルーヴィーなリフからキャッチーなサビへ展開していくZENO最初期のマテリアル⑤Good Game Bad Gameなど、アルバム前半にお気に入り曲が多いですね。③、④ではTommyがリードボーカルを取っていて、FAIR WARNINGでのパフォーマンスと比べると初々しさがあるものの確かな歌唱力を披露してくれています。ちなみに①Call Of The HeartはFAIR WARNINGの名曲と同じタイトルですが別の曲です。

客観的に見ればメロディックロックファン必聴の1枚であることは事実ながら全体的に曲調が似通っていること、過去のアルバムに収録されていたLove Will Live、Together、Love In Your Eyes、Meet Me At The Rainbowのような飛び抜けたキラーチューンがないことなどからインパクトは弱い気もしますね。この楽曲群に注文をつけるのは贅沢かもしれませんが…(苦笑)。なお日本では本作に合わせてZENOの過去作品3枚にリマスターを施し、各アルバムに未発表曲やデモ音源を追加した再発盤がリリースされています。特に2nd「LISTEN TO THE LIGHT」(1998)はオリジナルとリマスター盤とでは収録曲が異なるので以前のバージョンを持っている身としては、わざわざCDを買い直すには至らずZENOの未発表曲をコンプリートできずにいます…。

【音源紹介】
Dreaming The Night Away

ZENO「LISTEN TO THE LIGHT」(1998)

  • 2016/04/25(月) 00:00:00

LISTEN TO THE LIGHT
【No.468】
★★★(1998)

メロディックロック界の伝説的名盤との呼び声も高いデビュー作「ZENO」(1986)をリリース後に表舞台から姿を消したZENOが未発表音源集「ZENOLOGY」(1995)を経て完成させた2枚目のオリジナルアルバム。本作のタイトルと1stアルバムのジャケット(光る何かを耳にあてる少年)がリンクしますね。1989年以降、Zeno Roth(G)は第一線から身を引いていたようですがゼロ・コーポレーションから未発表の楽曲をアルバムにすること(後の「ZENOLOGY」)を提案されたことがきっかけで音楽に対するモチベーションを取り戻したそうなので、ゼロ・コーポレーションなくしてZENO復活はなかったかもしれません。ただしZENOが活動を再開したといっても前作に参加していたUle Ritgen(B)らはFAIR WARNINGでの活動があるため不参加、メンバーはMichael Flexig(Vo)のみでZenoがギター以外の楽器も演奏しドラムはプログラミングを使用しているため事実上2人によるプロジェクトとなっています。

オープニングの①Goddess Of Sunriseが僕の苦手なオリエンタルムードを前面に出した曲なので掴みは今ひとつですがドラマティックな②Love In Your Eyesで一気に盛り返します。サビは勿論、他のパートのメロディも細部まで丁寧に練り込まれていて「完璧主義者Zeno Rothの真髄ここにあり」という感じですね。そんな②と並ぶキラーチューンがZENOにしては珍しくメタリックな質感もある疾走曲④Meet Me At The Rainbowでしょう。粘り気のあるトーンで胸に迫ってくるギター、サビ手前でMichaelが「Do you remember?」と低音で歌うパートも聴きどころです。また⑥Follow The Windも上記2曲には及ばないものの並のアルバムならハイライトになりそうなハードロックだし、それらの間に配された③I Would Die For You、⑤Light Of The Morning、⑦Listen To The Lightといったバラードでも珠玉のメロディが味わえます。アルバム前半(特に②〜⑦)の充実振りは目を見張るものがありますね。

ただし後半に入ると荘厳な⑩Eden On Fire、ポジティブな空気に溢れた⑪Tomorrow Ariseなどの佳曲がある一方でインストが3曲もあって間延びしていたり、Jimi HendrixBob Dylanに捧げた60年代風のロック⑨Some Rocks Don't Roll(僕の苦手なタイプ)があったりしてテンションが下がってしまうのが難点。ボーナストラック⑭Walking On A Thin Lineの方がアルバムの音楽性に馴染んでいるので⑨と入れ替えてくれた方が嬉しかったですね。と言いつつもデビュー作や「ZENOLOGY」以上のお気に入り盤であることは間違いありません。ちなみに僕が持っているのは1998年にゼロ・コーポレーションから発売されたバージョンですが1998年リリースの輸入盤、2005年のリマスター再発盤も存在していて、それぞれの収録曲が異なるというファン泣かせの状態になっているようです。前者は⑭の後にWorld Of TomorrowTimeの2曲を追加、後者では⑭がカットされているかわりにWorld Of TomorrowとTommy Heart(Vo/FAIR WARNING)が歌うHow Can I Know、「ZENOLOGY」収録の超名曲TogetherのTommyバージョンを聴くことができます。YouTubeでこれらの未発表曲を聴いてみたところ、どれもZENOらしいナンバーだったので未発表音源集第2弾の「ZENOLOGY II」(2005)にまとめて欲しかったですね…(Timeは収録されていますが)。

【音源紹介】
Meet Me At The Rainbow

ZENO「ZENOLOGY」(1995)

  • 2016/04/10(日) 00:00:00

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【No.467】
★★(1995)

僕のミュージックライフにおける最重要バンドのひとつであるFAIR WARNINGと関係の深いZENOが1987年から1994年までにレコーディングした曲を収録した未発表音源集。ZENOは大手レコード会社EMIと契約金100万ドルという大型契約を締結、デビュー作「ZENO」(1986)発表後はBLACK SABBATHのサポートアクトを務めるなどしつつ2ndアルバム制作の準備に取りかかっていました。ところが1stアルバムの売り上げが期待していたほど伸びなかったことなどからEMIはバンドとの契約を解除、それがきっかけとなりMichael Flexig(Vo)が脱退してしまいます。バンドは後任として後にFAIR WARNINGのフロントマンとなるTommy Heart(Vo)を迎え、契約獲得を目指していたものの上手くいかず1989年には中心人物であるはずのZeno Roth(G)がバンドを離れてしまい事実上の解散状態に。そんな中、90年代に多くのメロディアス系HR/HMバンドを発掘した国内レーベル「ゼロ・コーポレーション」の発案でZENOの未発表曲をアルバム化することになり制作されたのが本作です。ちなみにZENOのオリジナルメンバーでもあるUle Ritgen(B)は本作に参加していたメンバーと共にFAIR WARNINGを結成することになります。

このアルバムにはZENOの2作目に収録予定だった曲だけでなく解散後に書かれたものも混在するため、録音時期はもちろん参加メンバーにもバラつきがあります。シンガーについては1stでも歌っていたMichaelが5曲、Tommyが3曲、そして何故かFAIR WARNINGのギタリストHelge Engelkeが3曲でリードボーカルを担当しています。前作で感じられた敷居の高さは薄まっているように思いますが、今回も僕のツボにハマることはなかったですね。そんな中で燦然と輝いているのがMichaelがエモーショナルに歌い上げるパワーバラード③Togetherです。デビュー作収録の3曲目Love Will Liveも超がつくほどの名曲でしたが、こちらも負けていません。これまでに聴いたメロディックロック曲の中でも5本の指に入るほど大好きな曲で、歌詞の内容も踏まえて自分の結婚式でも使った思い出深いナンバーです。なお、この曲のTommyバージョンが次作「LISTEN TO THE LIGHT」(1998)の2005年再発盤に追加収録されていたので聴き比べてみたところ声質的にはTommyの方が好きですが、この曲に関してはMichaelが歌う原曲の方がしっくりきますね。「原曲を大事にしたい」というZenoの思いからそのまま収録されたHelgeが歌った曲はMichael、Tommyという実力派2名に比べると聴き劣りしますが、僕が知る限りHelgeの歌が聴けるのは本作だけなので、そういう意味では貴重かもしれません。

③以外ではまるでサウンドトラックのように壮大で曲名も秀逸なインスト⑫Crystal Dreams②Is It Love、④Surviving The Night、⑧Out In The NightといったTommyが歌っている曲が気に入っています。FAIR WARNINGのデビュー作にも収録されていた①Heat Of Emotionは本作のMichaelバージョンよりTommyの力強い歌声の方が好きなので、彼が在籍するZENOも聴いてみたかったですね。3rd「RUNWAY TO THE GODS」(2006)制作時にTommyを迎えるという話もあったもののFAIR WARNINGが活動を再開していたため実現には至らなかったそうです…。僕にとって本作は③を聴くために時々CDラックから引っ張り出すという感じでしたが、ゼロ・コーポレーションが制作したバラード系オムニバス「美彩’d〜beside〜」(1995)にもTogetherが収録されているので、そちらを買ってからはこのアルバムを聴く機会はほとんどなくなってしまいましたね(苦笑)。

【音源紹介】
Together

ZENO「ZENO」(1986)

  • 2016/03/27(日) 00:00:00

ZENO.jpg
【No.466】
★★★(1995)

「ギター仙人」ことUli Jon Roth(G/ex-SCORPIONS)の実弟Zeno Roth(G)を中心としたメロディックロックバンドZENOの1stアルバム。正式メンバーはZenoのほかハイトーンが持ち味のMichael Flexig(Vo)、後にFAIR WARNINGを立ち上げるUle W.Ritgen(B)というトリオ編成で、それ以外はDon Airey(Key/RAINBOW)など複数のサポートメンバーを迎えています。本作はBURRN!誌を始め、多方面でメロディックロックの伝説的名盤とみなされているし、デビュー当時も新人バンドとしては破格の条件で大手レーベルEMIと契約を結ぶなど大きな話題となっていたようですね。

ZENOの音楽性はとにかくメロディアスな楽曲群を雄大なアレンジで聴かせつつ、オリエンタルな雰囲気も感じさせるというスタイルで時には神々しさすら漂っています。ただし結論から言うと、僕好みの要素を多分に含んでいるのは事実ながら本作にそれほどのめり込むことはありませんでした。ZENO特有の崇高なサウンドに敷居の高さを感じてしまうし、Michaelの天を突くようなハイトーンも凄みよりアクの強さの方が印象に残ってしまうため苦手だったりします。世間的な評価が非常に高いアルバムなので、その素晴らしさを理解しようとリピートしましたがFAIR WARNINGの音楽に魅了され後追いでZENOを知ったこともあって、どうしてもFAIR WARNINGに戻ってしまうんですよね(苦笑)。

というわけで本作に対してネガティブな点を先に書いてしまいましたが、このアルバムが全く肌に合わなかったかと言うと勿論そんなことはありません。中でもZENOらしい壮大なスケールで聴かせるバラード③Love Will Liveは掛け値なしの名曲です。正に聖歌と呼ぶに相応しいこの曲は、本作が発売される1年前の1985年に大ヒットしたWe Are The Worldのように世界中で歌われていても不思議ではないほどの普遍的な魅力を持っていると思います。それ以外ではポップフィーリングに溢れた②A Little More Love、FAIR WARNING風のギターメロディが飛び出す⑤Far Awayなどがお気に入りですね。ちなみに本作は2005年に未発表曲⑫Don't Count Me Outと「伝説のデモ」と呼ばれた本作収録曲の初期音源4曲を追加したリマスター盤が再発されています。僕はオリジナル盤を持っていたものの、手放してしまっていたのでリマスターバージョンを買い直しました。⑫は僕の好みから外れたタイプの曲だし、デモにはあまり関心がないのでボーナストラックにはそれほどありがたみを感じませんでしたが、音質は良くなっているので聴くなら再発盤の方がオススメですね。

【音源紹介】
Love Will Live

ちなみに上記は未発表音源集「ZENOLOGY」(1995)の2005年再発盤に追加収録されたエクステンデッド・バージョンで原曲は4分40秒ほどの長さです。