TIME REQUIEM「OPTICAL ILLUSION」(2006)

  • 2015/08/16(日) 00:00:00

OPTICAL ILLUSION
【No.440】
★★(2006)

MAJESTIC、TIME REQUIEM、SPACE ODYSSEYで発表した5作品から厳選した10曲をリメイクしたベスト盤「THE ULTIMATE ANDERSSON COLLECTION」(2006)をリリースしたRichard Andersson(Key)が僅か半年のスパンで放つTIME REQUIEM名義での3作目。TIME REQUIEMの前身バンドMAJESTICの2nd「TRINITY OVERTURE」(2000)から在籍していたMagnus Nordh(G)、Apollo Papathanasio(Vo)はバンドを離れRichardの幼馴染みでSPACE ODYSSEYのギタリストでもあるMagnus Nilssonが加入、シンガーにはGoran Edman(Vo/ex-YNGWIE MALMSTEEN etc)を迎え、リズム隊はAndy Rose(B)、Jorg Andrews(Ds)という「THE ULTIMATE ANDERSSON COLLECTION」と全く同じラインナップとなっています。リメイク作品とオリジナル盤とはいえRichardが同じメンバーでアルバムを制作したのは今回が初めてですね。ちなみにGoranはもうメタルを歌わないと思っていたのですがネオクラ系バンドからのオファーをほとんど断っている中、Richardは本物だと感じることができたため参加したそうです。

SPACE ODYSSEYの2nd「THE ASTRAL EPISODE」(2005)がTIME REQUIEM寄りのプログレメタル風だったので、TIME REQUIEMの音楽性がどうなるのか注目していたのですがデビュー作で顕著だった張り詰めるような緊張感、その中でキラリと光る哀メロといったTIME REQUIEMのアイデンティティはかなり薄れていますね。このバンドにしては珍しいアコギと笛の音色に導かれて始まるオリエンタルなムードを湛えた①Sin To Sinからして違和感があります。その一因となっているのがシンガーの交代でしょう。野太いハスキーボイスが特徴だった前任者Apolloとは対照的なGoranの声質を考えると、この変化は自然なのかもしれませんが別バンドになってしまったかのように感じる場面も少なくありません。その最たる曲がYNGWIE MALMSTEENバンドでGoranが歌ったTeaser(「FIRE AND ICE」収録)に通じる明るさを持った⑦Miracle Manですね。曲全体としては薄味ながらサビではクサメロパートに移行する②The Talisman、④The Ashen Soulには「ハッ」とさせられるし、ネオクラの王道をゆく⑧Sphere Of Fantasyは気に入っていますが、過去のアルバムほどのめり込めない自分がいます。

Richardのキーボードに関しては、これまでのような速弾き一辺倒で曲を覆い尽くすことはなく、彼にしては押し引きをわきまえたプレイになっていますね。それと比例するようにギターパートも増量されているので客観的に見ればバランスが良くなったようにも感じますが、限界以上に弾きまくるのがRichardのスタイルだったことを思うと物足りなかったりもします。というわけでTIME REQUIEMがこれまでに築き上げてきた個性が希薄になっているので戸惑ってしまう部分が多いのが気になりますね。TIME REQUIEMの作品であるかどうかを別にして繰り返し聴くうちにジワジワと好きになっていった1枚なので、別バンドとしてリリースしてくれた方がすんなり受け入れることができたように思います。

【音源紹介】
The Talisman

TIME REQUIEM「THE INNER CIRCLE OF REALITY」(2004)

  • 2015/07/19(日) 00:00:00

THE INNER CIRCLE OF REALITY
【No.437】
★★★★(2004)
年間ベスト2004年第10位

メンバーの5人中4人は前身のMAJESTICと同じながらバンド名を冠した1stアルバムで一段と濃密、そしてテクニカルなサウンドへと変化したTIME REQUIEMの2作目。前作リリース後には初来日、その模様を収めたライブ盤「UNLEASHED IN JAPAN」(2003)を発売したり、新たにSPACE ODYSSEYを立ち上げたりと活動を更に加速させているRichard Andersson(Key)の創作意欲は留まるところを知らないようで、SPACE ODYSSEYのデビュー作「EMBRACE THE GALAXY」(2003)から僅か半年ほどで届けられたTIME REQUIEMの新作となります。リズム隊がメロデス畑の人選からJonas Reingold(B/ex-MIDNIGHT SUN etc)、Zoltan Csorsz(Ds)というTHE FLOWER KINGS組に替わったことが影響してか、前作ほどガッチガチにタイトな演奏ではなく音の隙間が感じられるサウンドになった印象がありますね。

そんな変化が如実に表れているのが、これまでにないプログレッシブ・ロックのような空気を放ちつつテクニカルに進行していく11分超のタイトル曲②The Inner Circle Of Realityです。3分近くに及ぶソロパートではRichardのキーボードは言うまでもありませんが、Zoltanのドラムも凄いことになっていますね。MAJESTICの2nd「TRINITY OVERTURE」(2000)辺りから顕著になってきたSYNPHONY Xテイストが色濃く出たダークなプログレメタル①Reflections、ネオクラシカルメタルの王道をひた走る④Attar Of Rosesやクラシカルなメロディが乱舞する⑧Hidden Memoriesといった従来路線の楽曲も出色の出来。作品のインパクトとしてはデビュー作に及びませんが今回もネオクラファンにとっては十分楽しめる内容となっています。Richard Anderssonの関連作品を語る上で避けられない他のバンドからのパクリに関しては確かにSYMPHONY XやYNGWIE MALMSTEEN、DREAM TEHATERを連想させる場面はあるものの前作ほど露骨ではないように思います(今回は前作やMAJESTICの曲と似ているパートがチラホラあったりしますが…)。

ただRichardが曲調とは関係なく弾きまくるキーボードの音色はバリエーションに乏しく大半が「ピロピロピロピロ…」という電子系の音なので、どうにも単調なムードになってしまうのはマイナス。泣きの叙情バラード⑥Quest Of A Million Soulsはピアノサウンドなどを使っていれば、更に感動を増幅できたと思うのですが…。SPACE ODYSSEYは幼馴染みでもあるMagnus Nilsson(G)と組んだバンドということもあってギターもそれなりに目立っていましたがRichardの独裁体制下で制作されるTIME REQUIEMではギターをかき消さんばかりにキーボードが楽曲を覆い支配しています。全体的なバランスとしてはどうかと思いますが、ここまで来ると強烈な個性として受け入れるしかありませんね(笑)。いくつかの不満点があるとはいえRichardの生み出す楽曲はやはり僕の琴線に触れまくりなので、かなりリピートしていた作品です。

【音源紹介】
The Inner Circle Of Reality

RICHARD ANDERSSON'S TIME REQUIEM「TIME REQUIEM」(2002)

  • 2015/06/13(土) 00:00:00

TIME REQUIEM
【No.433】
★★★★(2002)
年間ベスト2002年第10位

Richard Anderson(Key)による圧倒的に速いキーボードテクニックとYNGWIE MALMSTEEN、SYMPHONY Xといったバンドからの絶妙な引用フレーズが僕のツボだったスウェーデン産ネオクラシカル・メタルバンドMAJESTICが、契約上の問題からバンド名をTIME REQUIEMへと変更して放つ第1弾アルバム。メンバーはべーシストに若きテクニシャンDick Lovgren(B/LAST TRIBE、ex-ARMAGEDDON etc)が加入していることを除けばMAJESTICの2nd「TRINITY OVERTURE」(2000)と同じです。本作最大の特徴はこれまでのネオクラシカル路線にプログレメタルの要素を加味し、タイトかつテクニカルに生まれ変わっている点でしょう。各メンバーの演奏力にこれまでよりもスポットが当たる作風となっていて、プログレメタルからエクストリーム系まで幅広いバンドに在籍経験のあるPeter Wildoer(Ds/DARKANE、ex-ARCH ENEMY etc)のドラミングがMAJESTIC以上に活かされていますね。

バンド名を冠した9分の長編①Time Requiemでの並外れた緊張感はMAJESTICにはなかったもので、冒頭からTIME REQUIEMというバンドが目指すヴィジョンを明確に示しています。またMAJESTICの作品でも散見された借用フレーズも健在であるばかりか一層大胆になっていますね。いくつか挙げるとすれば歌いまわしがSYMPHONY Xを連想させる②Watching The Tower Of The Skies、YNGWIEのLiar(「TRILOGY」収録)な歌メロが登場する③Milagros CharmDREAM THEATER風のイントロからネオクラ疾走曲へと展開する⑥Visions Of New Dawnなど、といったところでしょうか。それにもかかわらず各曲が今まで以上にカッコいい仕上がりとなっているので、もうこれはRichardの才能だと認めるしかないですね(苦笑)。そんなRichard流コラージュメタル(?)の極致ともいうべき楽曲が⑦Grand Opus。YNGWIEがライブでFar Beyond The Sunのイントロとして演奏することでも有名な「パガニーニのヴァイオリン協奏曲第4番二短調」にボーカルメロディを乗せた歌い出しに始まり、サビメロはYNGWIEのWield My Sword(「ALCHEMY」収録)、そしてキーボードソロでは超有名クラシック曲「モーツァルトの交響曲40番の第4楽章」を挟むというやりたい放題なこの曲は、その継ぎはぎっぷりが奇跡の相乗効果を生み出している名曲です。

そんなパクリッシュサウンドと双璧をなすRichardの個性である鍵盤捌きについても、聴いているこちらの腕がつってしまいそうなほどの速弾きが炸裂する超絶インスト⑤Brutal Mentorを筆頭にもう笑うしかないほどの凄まじさ。Richardが書く難解なパートをきっちりこなす力量を持ちつつもエゴはないApollo Papathanasio(Vo)、Magnus Nordh(G)の両名と屈強のリズム隊も良い仕事をしています。アルバム2枚で消滅したMAJESTIC、Richardが2003年に立ち上げた別バンドSPACE ODYSSEY、そしてこのTIME REQUIEMの3バンドいずれにおいても同じラインナップでアルバムが制作されたことは一度もありませんでしたが、本作のメンバーでもう一度活動してもらいたいですね。借用フレーズの絶妙なセンス、各メンバーの力量など様々な面でRichardの関連アルバムにおいては本作が一番のお気に入りとなっています。

【音源紹介】
Grand Opus