RICHARD ANDERSSON'S SPACE ODYSSEY「TEARS OF THE SUN」(2006)

  • 2015/08/23(日) 00:00:00

TEARS OF THE SUN
【No.441】
★(2007)

ワーカホリックな鍵盤魔人Richard Andersson(Key)が2003年にMagnus Nilsson(G)と立ち上げたSPACE ODYSSEYの3作目。Richardの別バンドTIME REQUIEMの3rd「OPTICAL ILLUSION」(2006)から約9ヶ月という短い間隔でリリースされたということもさることながら、SPACE ODYSSEYとして新作を発表したこと自体が僕にとっては予想外でした。というのも「OPTICAL ILLUSION」にはMagnusが参加していたしTIME REQUIEMの従来サウンドとは一線を画していたので、SPACE ODYSSEYはTIME REQUIEMに吸収される形で自然消滅したと思っていたからです。それに加えてSPACE ODYSSEYの重要なファクターであるNils Patrik Johansson(Vo/ASTRAL DOORS、WUTHERING HEIGHTS)もスケジュールが合わないため不参加、後任にDavid Fremberg(Vo/ANDROMEDA)を迎えたとリリース前から伝わってきていたので期待値は下がっていました。

いざ聴いてみると、本作で展開されているのはRichardがこれまでに追求してきたネオクラシカルメタルの面影が全くないハードロックサウンドでビックリ。Richardによる各曲解説にも「どの曲も楽曲重視のスタイルにして、プログレッシブな要素は排除しようと思った」「今回はボーカルがあまり高い音域で歌わないスローな曲をやってみた」「ギターを前に出してキーボードをちょっと引っ込めている」といった言葉が並び、意図的に今回のような音楽性にシフトしたことが窺えますが肝心のメロディがほとんど印象に残りません…。お気に入りと呼べそうなのは本作では珍しくキーボードソロが聴ける⑤Dark Wings Of Universe、日本盤ボーナスの⑨Jailbareakerといったアップテンポのナンバーくらいでしょうか(これら2曲についても過去の楽曲群と比べると弱いと思いますが)。本作のブックレットでは作詞作曲、プロデュースのクレジットは当然の如くRichard Anderssonとなっているのですが、その下に(In collaboration with Mr. Magnus Nilsson)という表記があります。Magnusが曲作りに関わったことで今回のようなサウンドになってしまったのだとしたら残念ですね。

「OPTICAL ILLUSION」も従来とは異なる路線で驚きましたが、作品単体としてはそれなりに楽しめるアルバムでした。それに対して本作はRichardのアルバムかどうかは別にしても僕の琴線に触れるメロディが極端に少ないのが痛いですね。自身のトレードマークであるネオクラサウンドや速弾きキーボードを封印してまでこの路線でやっていく意味が見えないように思います。SPACE ODYSSEY、TIME REQUIEM共に3枚目のアルバムで路線を転換したため今後の活動に一抹の不安を覚えたのですが案の定、両バンドとも4作目をリリースすることはありませんでした(2015年現在)。それどころか、これまで複数のバンドを掛け持ちして1年に1〜2枚のアルバムを発表していたRichard Andersson自身も本作を最後に表舞台から姿を消してしまいます。以前にインタビューで「短期間に沢山のアルバムを出し過ぎではないか?」と聞かれ「自分はプロのミュージシャンで、音楽で家族を養っているから」と答えていた彼がどのようにして生計を立てているのか気になりますね(スタジオ経営などの裏方に徹することにしたのでしょうか?)。長らく動向が掴めなかったRichardですがDEVIL'S HEAVENというグループに在籍して2014年に「HEAVEN ON EARTH」というアルバムを出しているようです。

【音源紹介】
Dark Wings Of Universe

RICHARD ANDERSSON'S SPACE ODYSSEY「THE ASTRAL EPISODE」(2005)

  • 2015/07/29(水) 00:00:00

THE ASTRAL EPISODE
【No.438】
★★★(2005)

TIME REQUIEMでも精力的に活動しているRichard Andersson(Key)率いるSPACE ODYSSEYの2ndアルバム。デビュー当時はTIME REQUIEMにもRICHARD ANDERSSON'Sとつけられていたのが2作目からシンプルにバンド名だけとなっていたのに対して、こちらはRICHARD ANDERSSON'S SPACE ODYSSEY名義のままなのでTIME REQUIEMはバンド、SPACE ODYSSEYはプロジェクトという位置付けなのかもしれません。前作「EMBRACE THE GALAXY」(2003)はTIME REQUIEMの前身バンドMAJESTICに近いコンパクトなネオクラ路線だったのに対し、本作はテクニカルなフレーズとプログレテイストを増強していてTIME REQUIEMの音楽性に近づいた感がありますね。楽曲面におけるTIME REQUIEMとの差別化要因としてはMagnus Nilsson(G)によるギターパートのフィーチュア度が高いという点くらいでしょうか。

Richard Andersson関連の作品では恒例となっているメンバーチェンジは今回もあって、ドラマーにはRichardも惚れ込んだという17歳の新鋭Andreas Brobjer(PLATITUDE)が加入。オープニングの①Through Dreams And Realityからしてその実力を見せつけてくれています。ベースはギタリストのMagnusがデモ段階で弾いたものが楽曲の求める要素を満たしているという理由からMagnusのプレイを採用したそうです。前作に参加していた北欧メタル界のレジェンドMarcel Jacob(B/TALISMAN)に対して「彼が参加したことでアルバムセールスが伸びたわけではない」と言ってしまうRichardの俺様っぷりがなんとも…(苦笑)。そして前作で衝撃のデビューを飾った超絶シンガーNils Patrik Johansson(Vo/ASTRAL DOORS、WUTHERING HEIGHTS)の豪快な歌いっぷりは更に凄みを増していて漲る感情をぶちまけた暑苦しい歌唱法だけでなく、Nilsがクリーンボイスで全編を歌い上げる日本盤ボートラのピアノバラード⑨The Finest Of A Good Kindなどはこれまでにないアプローチで新鮮。また⑧The Seventh Star FantasyではWUTHERING HEIGHTSでも披露していた「1人デュエット」が聴けるのですが、本作ではそのクオリティがアップしていてシンガーとしての成長が窺えます。

楽曲としては過去に引用実績のあるYNGWIE MALMSTEENRising Force風のパートに始まり秀逸なサビメロへ繋がる④Dazzle The Devilが一番のお気に入りです。それ以外でも最近のRichard作品によく登場するSYMPHONY Xタイプの曲調をベースにしつつサビではクサく盛り上がる②Astral Episode、曲名通りのダークな空気が支配的な⑤Back To The Dark、ネオクラエッセンスを凝縮したインスト⑥Presence Of Mind、前作にもあったジャーマンメタル路線⑦Reversationや前述の⑧、⑨など曲のバリエーションもなかなか豊富。聴き始めの頃はTIME REQUIEMとの違いが分かりにくくなったこと、Richardがこれまでにリリースした作品と比べても突出した要素が感じられなかったことなどから、あまり好きになれなかったのですが、リピートするうちに段々と好きになってきたスルメタイプの1枚ですね。

【音源紹介】
Dazzle The Devil

RICHARD ANDERSSON'S SPACE ODYSSEY「EMBRACE THE GALAXY」(2003)

  • 2015/06/22(月) 00:00:00

EMBRACE THE GALAXY
【No.434】
★★★(2003)

MAJESTICからTIME REQUIEMへとバンド名は変われど、圧巻の鍵盤捌きと抜群のパクリセンス(笑)でファンを拡大してきた鍵盤魔人Richard Andersson(Key)が新たに立ち上げたRICHARD ANDERSSON'S SPACE ODYSSEYのデビュー作。プログレ指向が強かったTIME REQUIEMに比べて、本作はよりストレートでシンプルなアプローチのネオクラシカルメタルでMAJESTICの頃に立ち戻ったかのような印象です。今回もRichardが作詞作曲、プロデュースなどを取り仕切っていますがRichard曰く彼の旧友Magnus Nilsson(G)とタッグを組んでいること、TIME REQUIEMよりもソフトなサウンドとなっていることがSPACE ODYSSEYの特徴だそうです。確かにRichardがとにかく弾きまくるTIME REQUIEMに比べるとギターの存在感が大きいように思いますね(それでも依然としてキーボード重視ですが…)。

中身の方はというと、もはや安心印のRichard Anderssonミュージックなのですが本作の目玉は無名のパワフルシンガーPatrik Johansson(Vo/ASTRAL DOORS、WUTHERING HEIGHTS)による圧巻のボーカルパフォーマンスでしょう。古くはRonnie James Dio(Vo)、最近ではJorn Lande(Vo/MASTERPLAN)系の熱唱スタイル基本にDavid Coverdale(Vo/WHITESNAKE)のようなディープボイスも操る彼は本作でその名をHR/HMシーンに轟かせることとなります。オープニングトラック①Despair And Painのサビ前で炸裂する「ニョォォ〜!」のシャウトは思わず笑ってしまうほどの暑苦しさですが、ここまで力強く歌えるPatrikは間違いなく逸材ですね。当初はD.C. Cooper(Vo/SILENT FORCE、ex-ROYAL HUNT)を迎える構想があったらしく、いいところまで話が進んでいたそうですが金額面での折り合いがつかず断念したのだとか。ちなみにD.C.は2006年にイタリアのメロパワバンドSTEEL SEALのデビュー作「BY THE POWER OF THUNDER」にゲストボーカルとして全面参加していますが、その理由のひとつに「メロディもやりたいように書ける自由があった」ことを挙げているのでAndre Andersen(Key/ROYAL HUNT)以上の独裁者(と思われる)Richardと組んだとしても合わなかったかもしれませんね。

話が少し逸れましたが隠れた実力派シンガーPatrikに加えてべーシストには初期YNGWIE MALMSTEENを支えた名手Marcel Jacob(B/TALISMAN)、北欧を代表するプログレバンドTHE FLOWER KINGSのドラマーZoltan Csorsz、そのTHE FLOWER KINGSの中心人物でMIDNIGHT SUNなどでも活動していたJonas Reingold(B)がミックスや共同プロデューサーとして関わるなどシーン屈指のプレイヤーが参加しています。楽曲的にも従来のRichard関連作品にはなかった新技ジャーマンメタルテイストを導入した④Entering The Dome、⑥Grand Openingのような高揚感溢れる曲もあってグッド。相変わらず他のバンドからの引用が散見されるので、その点が容認できない方にとっては駄目なサウンドだとは思いますが僕は曲が自分好みなら問題ありません(パクリに気付かないこともしばしばあるので/苦笑)。本作がリリースされた2003年といえばYNGWIE MALMSTEENやSTRATOVARIUSといった大御所が僕の好みから外れ気味だったので、それに取って代わる存在となってくれるのではという期待もありましたね。

【音源紹介】
Entering The Dome