AT VANCE「ONLY HUMAN」(2002)

  • 2014/11/24(月) 00:00:00

ONLU HUMAN
【No.413】
★★★★(2003)

1999年にデビューして以降、新鮮味には欠けるものの高品質なネオクラシカルアルバムを毎年リリースし続けるAT VANCEの4作目。2nd「HEART OF STEEL」(2000)が素晴らしかったため期待に胸を膨らませて聴いた前作「DRAGONCHASER」(2001)は曲単体としては光るものがあるけれど、1枚のアルバムとしては物足りなさが残る内容でした。そんな3rdの印象が尾を引き、本作を聴いたのはリリースから1年以上経ってからだったのですが今回は最高傑作との呼び声が高いのも頷ける起死回生の作品となっていますね。何と言っても楽曲の充実度が過去最高クラスで疾走曲からミドル、バラード、インストなどバラエティに富んでいるだけでなくバンドの代表曲と呼べそうなナンバーも収録されています。

ダークな雰囲気を纏いながら疾走するAT VANCEの王道①The Time Has Come、バンド屈指の名曲として語り継がれるであろう②Only Human、歌メロが耳に残るミッドテンポ③Take My Pain、渋い低音で歌っていたサビを終盤では伸びやかなハイトーンで歌い上げるOliver Hartmann(Vo)の歌唱力に魅了される④Fly To The Rainbowと続く流れがまず素晴らしい。アルバム中盤は曲数をもう少し絞っても良かったかなという気はするものの、アンセミックなコーラスをフィーチュアした⑩Sing This Song、妖しい笑い声が不気味さを醸し出す一方でメロディ自体は明るい⑪Witches Dance、物悲しく重厚なバラード⑫Wings To Fly、原曲を忠実に再現しつつオリジナルにないエンディング部分ではOlaf Lenk(G)が独自色を出して弾きまくるRAINBOWのカバー⑬I Surrenderなど後半にも強力なナンバーが並んでいるので聴き終えた時の満足感は高いですね。日本盤ボーナス⑭Heroes Of Honorも前作収録のAges Of Gloryに通じるハイテンションなジャーマンメタルで本編に入らなかったのが不思議なほどです。前作では8分に及ぶクラシックカバーBeethoven, 5th Symphonyを4曲目に配したことがアルバムの勢いを削いでいたのに対して、今回は⑥Four Seasons/Spring、⑨Solfeggietto共に3分以内とコンパクトにまとめられているため良いアクセントとなっているのも好印象。

そんな楽曲面のみならずB級臭さを発散していた音質、ジャケット(特に前作は酷かった/苦笑)についてもミキシングをSascha Paethが担当、アルバムカバーにはLuis Royoのイラストを用いるなどしてグレードアップしています。バンドとしての成長を見せつけてくれた本作を聴いて、AT VANCEが中堅ポジションから飛躍することを期待していたのですがバンドの顔でもあるOliverが本作を最後に脱退。2nd以降は不動だった演奏陣も離脱が相次ぎAT VANCEはOlafのソロプロジェクト色を強めていくことになります。一方Oliverは自身のバンドHARTMANNを立ち上げメロハー寄りの作品(特に1st「OUT IN THE COLD」がお気に入りです)をリリースしたり、AVANTASIAを始めとするプロジェクトにゲスト参加したりしていますがメタルから距離を置くようになってしまったのが残念。彼をシンガーに迎えたいと考えるバンドは少なくないと思うんですけどね(Oliverがその手のサウンドに興味を持たなくなったのかもしれませんが)。

【音源紹介】
・Only Human

AT VANCE「DRAGONCHASER」(2001)

  • 2014/11/12(水) 00:00:00

DRAGONCGASER_20140908213432d60.png
【No.412】
★★(2001)

1999年に「NO ESCAPE」で彗星の如くデビュー、僅か5ヶ月後に2nd「HEART OF STEEL」(2000)をリリースしたドイツ産ネオクラシカルメタルバンドAT VANCEによる3rdアルバム。前作から1年も経たずに発表された本作はドイツの国民的英雄叙事詩「ニーベルンゲンの歌」を題材としたコンセプトアルバムとなっています。前作と同じラインナップで制作された今回のアルバムではOlaf Lenk(G)、Oliver Hartmann(Vo)だけでなくUli Muller(Key)も存在感を発揮しており、バンドらしさが強まってきていますね。

「HEART OF STEEL」が近年稀に見るネオクラメタルの名盤だったので今回も期待していたのですが、鐘の音と轟く雷鳴のSEを切り裂くように流れ込んでくるギターで幕を開けるネオクラチューン①Dragonchaser、AT VANCE史上最速を誇るクサメロ疾走曲②Ages Of Glory、いかにもこのバンドらしい佳曲③Crucifiedと続く冒頭3曲は「2ndをも上回るのではないか」と思わせるだけの勢いがありますね。ところがアルバム中盤でその勢いは失速してしまいます。その大きな要因となっているのがベートーベンの超有名曲「運命」をカバーした④Beethoven, 5th Symphony。これまでにもクラシック曲をカバーしてきたAT VANCEなので流石の出来ではあるのですが、この位置に8分に及ぶクラシックカバーを配したことで中弛みしてしまっているんですよね。しかもそれに続く⑤Heaven Can Waitもダークな曲調なのでアルバム序盤のいい流れが寸断されているように思います。その後は3作連続となるABBAのカバーの中でも最高の仕上がりとなった⑥The Winner Takes It All(オリジナル以上に好きです)、ストーリーの関係もあってか暗く悲しい雰囲気が支配的なバラード⑦My Bleeding Heart、②に匹敵するほどの高揚感をもたらしてくれるスピードチューン⑨Too Lateもあって結構楽しめるのですがアルバム全体の印象としてはもどかしさが残ります。

リアルタイムで本作を聴いていた時は中盤にダレるというイメージが強くて好きになれず、次回作「ONLY HUMAN」(2002)の購入をためらってしまうほどでした。ところがこのブログ記事を書くために本作をリピートしていると、そんなマイナス面だけでなく①、②、⑨といったキラーチューン候補やAT VANCEによるカバー曲の最高峰⑥の素晴らしさを再発見できたと思います。こうして考えてみると「本作のキーはやはり④」というところに戻ってしまうんですよね。この曲が2~3分の長さだったり、もう少し緩急をつけたアレンジとなっていればアルバムの印象もグッと良くなったと思うのですが…。というわけで個々の楽曲を取り出して聴くとAT VANCEでも屈指の名曲があるものの、アルバムの流れが良くないため損をしている1枚と言えそうですね。

【音源紹介】
・Ages Of Glory

AT VANCE「HEART OF STEEL」(2000)

  • 2014/10/19(日) 00:00:00

HEART OF STEEL
【No.410】
★★★★(2000)
年間ベスト2000年第5位

Olaf Lenk(G)、Oliver Hartmann(Vo)という2枚看板を擁するネオクラメタル界の新星AT VANCEがデビュー作「NO ESCAPE」(1999)から僅か5ヶ月という短いインターバルで発表した2作目。ベーシストがリズムギターに転向、ドラマーは実力不足を理由に解雇されたためリズム隊が一新された6人編成となっています。今回のアルバムはそんなメンバーチェンジの影響を微塵も感じさせないばかりか、前作から成長した姿をまざまざと見せつけてくれる名盤に仕上がっています。

物悲しいアコギによるイントロ①Preludeから、その旋律を引き継ぐクサメロ疾走曲②Soldier Of Timeへ至る流れは「メタルアルバムの幕開けはかくあるべし!」と言わんばかりのオープニングで胸が熱くなりますね。それ以降もメジャーキーを使ったアップテンポ③The Brave And The Strong、曲名が示す通り鋼鉄魂を鼓舞してくれるミドル④Heart Of Steel、理屈抜きでカッコいいと思える疾走チューンズ⑥King Of Your Dreams⑩Don't You Believe A Stranger(特に前者はグイグイ引っ張っていくOlafのギターリフが気持ちいい)、Oliverの渋い声質が素晴らしい泣きのバラード⑦Princess Of The Night、クラシカルな美旋律が舞う⑧Goodbyeなど前作以上に充実したナンバーが目白押しです。また曲としては地味ながら⑨Why Do You Cry?でフィーチュアされている「ボン♪」という男声コーラスはAT VANCEの隠れた代名詞だと思うのは僕だけでしょうか。そしてこのバンドに欠かせないカバー曲はABBAシリーズ第2弾の⑤S.O.S.、ショパンの曲をOlafが弾きまくる⑪Chopin/Etude No. 4SUPERTRAMP⑫Logical Songを収録。どれもなかなかの出来映えでアレンジ力の高さが窺えますね。

デビューアルバムの時点で既に高かった楽曲のクオリティは更に向上しているしギタリスト、シンガーというバンドのセンターラインに実力者が揃っているため安心して聴くことができます。特にOliverは声質が太いこともあってハイトーンで歌っていても常に余裕を感じさせるボーカルパフォーマンスで作品をワンランク上に押し上げていますね。前作より音は良くなっているもののパタパタ感が残るドラムサウンドが残念ではありますが、それ以外の要素がそんな弱点を見事に補っています。一般的にAT VANCEの最高傑作と言えば4作目にしてOliver在籍時のラストアルバムとなった「ONLY HUMAN」(2002)が挙げられることが多いようですが僕は本作の方が好きですね。

【音源紹介】
・Goodbye

AT VANCE「NO ESCAPE」(1999)

  • 2014/10/03(金) 00:00:00

NO ESCAPE
【No.409】
★★★(1999)

CENTERSというバンドで活動を共にしていたOlaf Lenk(G)Oliver Hartmann(Vo)が新たに結成したネオクラシカル・パワーメタルバンドAT VANCEの1stアルバム。YNGWIE MALMSTEENからHR/HMに入門した僕にとってネオクラ系メタルは最重要ジャンルのひとつなのですが、90年代末期はこの手のサウンドに食傷気味でもありました。その当時にデビューしたバンドの中でよく聴いていたのが以前にブログで紹介したMAJESTICとこのAT VANCEですね。やり過ぎなほどに弾きまくるキーボードと大胆な借用フレーズが話題となったMAJESTICに対してAT VANCEはこれがデビュー作とは思えないほど質の高いサウンドで僕を魅了してくれました。

本作を語る上で外せないのがフロントマンOliver(本作ではHardmannと表記)による抜群の歌唱力。Jeff Scott Soto(Vo/TALISMAN)にも似たハスキーな声質と高音域も難なく歌いこなすレンジの広さを併せ持つ彼は本作以降、Tobias Sammet(Vo/EDGUY)主宰のプロジェクトAVANTASIAやソロ活動でその名を広めていくこととなります。その相棒でメインソングライターのOlafも丁寧に組み立てられたソロパートで流麗なプレイをビシバシ決めています。楽曲についてもネオクラシカルなムード漂う疾走曲①Flying High、②No Escape、スピーディーなインスト小曲③No Speakと続く冒頭の流れは文句なしのカッコよさ。フックに満ちたサビメロが冴えるミドル④Die In Your Arms、荘厳なオルガンサウンドで幕を開けシンガロングを誘うコーラスへと繋がるキャッチーソング⑤All For One, One For Allといった速さに頼らないナンバー、哀愁のバラード⑧Lost In Your LoveからGAMMA RAY直系の爽快ジャーマンメタル⑨Power & Gloryなどバリエーションも豊富です。

ボーカルとギター、そして楽曲というバンドの根幹部分がしっかりしているため新人離れした安定感がありますね(OlafもOliverもCENTERSでのキャリアがあるので当然かもしれませんが)。また巧みな選曲とアレンジを用いてカバー曲でも楽しませてくれるのがAT VANCEの特徴で、本作ではABBA⑥Money, Money, Money、ヴィヴァルディの「四季」をギターインストに仕上げた⑦The Four Seasons - SummerSURVIVORの大ヒット曲⑪Eye Of The TigerTEARS FOR FEARS⑫Shoutと4曲も収録していながらどれも上々の出来となっています。惜しむらくは迫力に欠ける音質と本編ラストを凡庸なミディアムチューン⑩Seven Seasで締めくくっている点でしょうか。とはいえデビュー作としては十分なクオリティを誇っているし、楽曲の充実度は後の作品群と比べても遜色ないと思います。

【音源紹介】
・Power & Glory