MAJESTIC「TRINITY OVERTURE」(2000)

  • 2015/05/31(日) 00:00:00

MAJESTIC T OVERTURE
【No.432】
★★★(2000)

1999年に「ABSTRACT SYMPHONY」でデビュー、中心人物Richard Andersson(Key)が弾いて弾いて弾き倒すキーボードとYNGWIE MALMSTEENからの影響をダイレクトに反映させた音楽性が話題となったMAJESTICの2ndアルバム。前作リリース後にメンバー間(というかRichard VS 他のメンバー)で一悶着あったようで、今回はMartin Wezovski(B)以外のメンツを一新して制作されています。インタビュー等で元メンバーを公然と批判するRichardのビッグマウスっぷりに「プレイスタイルだけでなく言動もキーボード版YNGWIEだなぁ」と思った記憶がありますね(苦笑)。ちなみにMAJESTICを脱退したJonas Blum(Vo)らはREPTILIANを結成して2枚のアルバムを発表しています。MAJESTICは新メンバーにギリシャ人シンガーApollo Papathanasio、ギタリストにはMagnus Nordh(G)という無名の人材を起用、ドラマーに実力は折り紙つきながら複数のバンドを転々とするイメージが強いPeter Wildoer(Ds/DARKANE、ex-ARCH ENEMY)を迎えていて、益々Richardのワンマン化が進行した印象がありますね。Richardに「俺が唯一知るエゴのない素晴らしいリードシンガー」と評されたApolloはその控えめな性格を活かして(?)EVIL MASQUERADE、FIREMIND、SPIRITUAL BEGGARSなど様々なバンドのシンガーとして活躍していくこととなります。

中身の方は前作の路線をそのまま継承したネオクラシカル道まっしぐらな作品で、YNGWIEの代表曲Rising Force(「ODYSSEY」収録)そのまんまなフレーズで始まるインスト①Entering The Arenaからしてデビュー作で話題になった大胆なパクリセンスが炸裂。ただ今回気になったのは、一連の借用以前に前作のGolden SeaBlack Moon Risingに匹敵するキラーチューンがないことでしょうか。それに加えてキーボードにギターが真っ向勝負を挑む場面も減少していて、バンドが放つスリリングさを担うのがRichardのみとなっているのも寂しいですね。Richard曰く、新ギタリストのMagnusは「自分が書いた難しいパートを文句を言わず忠実に弾いてくれるプレイヤー」だそうなので、今の環境がRichardにとっては理想的なのだとは思いますが、デビューアルバムで漲っていた「聴き手を圧倒するほどのエネルギー」が希薄になっているのは残念。

そんな物足りなさを感じつつも本作、というかMAJESTICというバンドを代表する疾走曲②Voodoo Treasure(ソロパートが凄い)、ミステリアスな曲調の中でクサいメロディが乱舞する④I’ll Shoot The MoonといったYNGWIEに加えてSYMPHONY Xテイストも顔を覗かせる楽曲群は流石の出来だし、ネオクラフレイヴァー満載のスピードチューン⑥Curtain Of Fire、⑧Approaching The Stormなどは、この手のサウンドが好きな身としては堪りません。また本編ラストに配されたタイトル曲⑩Trinity Overtureのメロディも魅力的。こうして見ると偶数曲にお気に入りが集中していますね…。デビューから2作品続けてネオクラシカル道を邁進するアルバムを発表したMAJESTICでしたがレーベル、マネジメントとの関係が悪化したため本作を最後にバンドは活動を停止。Richardはほぼ同じメンバーで2002年にTIME REQUIEMを立ち上げ、新たなスタートを切ることとなります。

【音源紹介】
Voodoo Treasure

MAJESTIC「ABSTRACT SYMPHONY」(1999)

  • 2014/07/29(火) 00:00:00

MAJESTIC A SYMPHONY
【No.402】
★★★(1999)
年間ベスト1999年第10位

Jens Johansson(STRATOVARIUS)Vitalij Kuprij(ARTENSION)がメロディックメタル界屈指のキーボードプレイヤーとして注目されていた1999年、その2大巨頭に割って入ったのが本作でデビューを果たすMAJESTICを率いるRichard Andersson(Key)です。Vitalijもデビュー時にはキーボード版YNGWIE MALMSTEENといわれていましたが、MAJESTICはARTENSION以上に音楽性とプレイスタイルの両方でよりYNGWIE度が高いため、本作はネオクラシカルメタルというジャンルに興味のある人ならば聴いて損のない1枚となっています。実際、YngwieがRichardの腕を見込んで自身のバンドへの加入を要請したが「MAJESTICに専念したい」という理由で固辞したというエピソードもあるようですね。

いかにもネオクラなインスト①Medieval Nightsに続き、哀愁に満ちたメロディを撒き散らしながら疾走する②Golden Sea、一度聴いたら忘れられないキャッチーソング⑦Black Moon Risingという飛び抜けた名曲を筆頭にネオクラの王道をいく⑤Crimson Sun、笑ってしまうほどのハイスピードで爆走する⑩Nitro Pitbullなどの疾走曲やリリカルなバラード③Standing Aloneなど強力なナンバーが並びます(個人的にツボにはまった曲とそうでない曲の差は結構ありますが)。そしてバンド最大の特徴となっているのがスピードチューンかバラードか、バッキングだろうがソロパートだろうが、お構いなしに弾いて弾いて弾き倒すRichardの激速キーボードです。またARTENSIONと比較してみるとRoger Staffelbach(G/ARTENSION)が存在感でVitalijに完敗していたのに対し、このバンドのギタリストPeter Espinoza(ex-ESPINOZA etc)は強烈な個性を持つRichardを相手に真っ向勝負を挑み、手に汗握るバトルを繰り広げる場面もしばしば。そしてシンガーのJonas Blum(ex-POLE POSITION)も⑤など一部の曲のキーについていけず苦しそうではあるものの、持ち前の甘いハスキーボイスで魅力的な歌を聴かせてくれるし、リズム隊もなかなかの手練揃いなのでRichardの弾きまくりキーボードに頼りっきりになっていないのもポイントです。とはいってもバンドのアイデンティティの大部分をキーボードが担っているのは間違いないんですけどね…。

Richard Andersson関連の作品に必ずと言っていいほど登場する過去の楽曲からの借用フレーズ(メタルバンド、クラシック作曲家問わず)は本作で既に散見されていて⑦の出だしはYNGWIEのDeja Vu(「ODYSSEY」収録)だし、④Abstract Symphonyはモーツァルトのフレーズをそのまま引用しています。個人的にはメロディさえ良ければ借用はさほど気になりませんが、上記以外にもどこかで耳にしたフレーズが散見されるので、それが嫌だという人にとって本作は聴くに絶えない作品かもしれません。ただし、そんなパクリフレーズがあることを差し引いても⑦はインパクト絶大だし、②はネオクラメタル史に燦然と輝く名曲なので「パクリ」の一言で片付けるには勿体ない存在ですね。

【音源紹介】
・Golden Sea

冒頭の20秒弱はMedieval Nightsの音源です