W.A.S.P「THE CRIMSON IDOL」(1992)

  • 2014/07/15(火) 00:00:00

THE CRIMSON IDOL
【No.401】
★★★★(1998)

1984年にシングル「ANIMAL(F**K LIKE A BEAST)」でデビューするや怪しすぎるメンバーのプロフィール、股間にノコギリを装着した奇抜なルックス、過激な歌詞とそれを表現するために血糊や生肉を用いたライブパフォーマンスなど音楽以外の部分に話題が集まっていたため僕の中でも「キワモノバンド」というイメージが強かったアメリカのヘヴィメタルバンドW.A.S.P.の5thアルバム。僕はこの「THE CRIMSON IDOL」で初めてこのバンドを聴いたので、漠然と抱いていた「下品で邪悪」なバンドイメージと本作で繰り広げられているシリアスな音楽性とのギャップに驚きました。今回のアルバムは前作「THE HEADLESS CHILDREN」(1989)リリース後にメンバー離脱が相次ぎラインナップが崩壊したため当初はW.A.S.P.名義ではなくバンドの中心人物Blackie Lawless(Vo)のソロとして制作が進められていたものの、レコード会社の意向によりW.A.S.P.の5作目として発表されることになったコンセプトアルバムです。ストーリーを要約すると、望まれない子供として生まれ両親から愛情を注がれずに育った主人公ジョナサンは家を飛び出し、誰からも慕い愛されるロックスターとなることを決意する。後に彼はその夢を叶えながらも心の空虚感を満たすことができず、苦悩の末に悲劇的な結末を迎える…というものでBlackie自身の体験も部分的に盛り込んでいるようです。

アルバムは哀愁を帯びたアコースティックギターの旋律で静かに始まり徐々に盛り上がっていく物語の導入部①Titanic Overtureで幕を明け、短いアコースティックパートやSEを曲間に挟みながらストーリーを進行させていき、作中に登場するメロディを巧みに再構築するというコンセプトアルバムの常套手段を用いて劇的なエンディングを描き出す本編ラスト⑩Great Misconceptions Of Meまで一気に聴かせてくれます。各曲で展開されるダークでありながらも適度にキャッチーかつドラマティックなメタルサウンドは素晴らしいの一言。曲単位で見ても甲乙付けがたいものが並びますが正統派メタルの名曲④Chainsaw Charlie(Murders In The New Morgue)、アコースティック風の曲調に乗るBlackieのしゃがれた熱唱が大きな感動を呼ぶバラード⑨Hold On To My Heartの2曲が大好きです。そんな⑨に象徴される通りBlackieの情感に溢れたボーカルパフォーマンスは上手い下手を超越して聴く者を惹きつける魅力がありますね。演奏面ではBlackieがギター、ベース、キーボードまでも兼任しドラマーは2名体制という変則的なラインナップながらBruce Kulick(G/ex-KISS)の実兄でもあるギタリストBob Kulickによるソロパートは素晴らしい(特に⑧The Idolは泣ける)し、やたらと手数の多いドラムもアルバムの個性となっていると思います。

というわけで、このアルバムは僕にとっての2大神盤DREAM THEATER「METROPOLIS PT.2 : SCENES FROM A MEMORY」(1999)ROYAL HUNT「PARADOX」(1997)に次ぐコンセプトアルバムの名盤であり、聴く時には歌詞カードを読みながら集中して向き合いたい1枚ですね。こうして本作を聴いているとデビュー当初からの過激でおバカなパフォーマンスはバンドを売り込むために計算し尽くされたイメージ戦略で、Blackieも本当は頭のいいアーティストなのではないかと思えてきます。なお僕が持っているのは1998年に発売された2枚組バージョンでDisc-2にはシングルカップリング曲、本作の収録曲やバンド代表曲のライブ音源などが計12曲も収録されています。中でも元々「THE CRIMSON IDOL」本編に収録予定だったというDisc-2①Phantoms In The Mirror、アルバム本編と共通のメロディが登場するDisc-2②The Eulogyが聴けるというのは嬉しいポイント。英語による語りだけで17分近くもあるDisc-1⑪The Story Of Jonathan(Prologue To The Crimson Idol)は僕の英語力では無用の長物なのでこれら2曲を上手くDisc-1に盛り込んで欲しかったという気もしますね(コンセプトアルバムとしての流れが壊れてしまうから避けたのかもしれませんが…)。

【音源紹介】
・Chainsaw Charlie (Murders In The New Morgue)