ERIC CARMEN「WINTER DREAMS」(1998)

  • 2014/04/30(水) 00:00:09

WINTER DREAMS
【No.396】
★★★★(1998)
年間ベスト1998年第5位

オハイオ州クリーブランド出身のシンガーソングライターEric Carmenによる前作から13年振りとなる6thアルバム。僕はBURRN!誌上の今月のおすすめコーナーで藤木さんが本作を取り上げていたのがきっかけでEricのことを知ったのですが、彼は70年代のポップミュージックシーンで一世を風靡したバンドRASPBERRIESの中心人物でバンド解散後はソロに転向してヒットを飛ばしていたようです。中でもラフマニノフの「ピアノ協奏曲」を取り入れた名曲All By Myselfは世界の歌姫Celine Dionを始めとする多くアーティストにカバーされたり、日本ではCMソングに起用されるなどしていてEricのことを知らなかった僕もこの曲は聞き覚えがありました。

本作で聴くことができるのは「夢の面影」という邦題、幻想的なモノクロジャケットから連想される通り、どこまでも甘くセンチメンタルなメロディの数々。アルバムからのファーストシングルとなった①I Was Born To Love Youは作品を象徴するかのような優しさに溢れたラブバラード、それに続くセカンドシングル曲②Someone That You Loved Before(過ぎゆく恋)もバラードなのですがDiane Warrenとの共作でもあるこちらはメロディがより重厚で歌詞も失恋をテーマとするなど前曲とは対照的です。③Every Time I Make Love to You(愛を奏でよう)もまたまたバラードでヒットソングのお手本的なこの曲までを聴いて「個々の曲は魅力的だけれど同系統が続くのはちょっと…」と思っていたら④Cartoon Worldは楽しげな手拍子を伴ったポップチューンでいいアクセントになっています(というかこの曲は単体としてもかなりのお気に入り)。そして本作のハイライトとなっているのが⑤Almost Paradise(パラダイス~愛のテーマ)。この男女デュエットによるバラードは映画「フットルース」のためにEricが手掛けたもので、オリジナルではMike Reno(Vo/LOVERBOY)Ann Wilson(Vo/HEART)が歌っていました。今回のセルフカバーではEricがJaney Clewerなる女性シンガーとデュエットしていて個人的には本作のバージョンの方が好きですね。それ以降も楽しげな曲調の⑥Top Down Summer、タイトル通りのロマンチックなムードに包まれる⑦Isn't It Romantic、④と並んで本作のポップサイドを担う⑧I Could Really Love You、EricがかつてPeter Cetera(Vo/ex-CHICAGO)に提供した好バラードのリメイク⑩I Wanna Take Forever Tonightなど彼の優れたメロディセンスが遺憾なく発揮されたアルバムとなっています。

そんな楽曲群を歌い上げるEricの歌声は温かくて繊細、それでいて曲によっては力強く響いていて各曲をより一層魅力的なものとしてくれています。普段HR/HMを中心に聴いている僕にとってはサウンドがソフト過ぎる感はあるものの、作品全体が醸し出す穏やかな空気が実に心地いいんですよね。ただ13年振りの作品でありながら前述の⑤と⑩はセルフリメイク、⑨Caroline, NoTHE BEACH BOYS⑪Walk Away Renee(いとしのルネ)THE LEFT BANKEのカバーなのでEricの新作を長年待ちわびていた人にとっては腑に落ちないかもしれませんね(ちなみに⑪はオーストラリアのシンガーソングライターRick Priceもカバーしていて個人的にはあちらの方が好きです)。このアルバムでEricと出会った僕は書き下ろし曲が少ないことは気になりませんでしたが、本作発表から15年以上が経過した2014年になってもニューアルバムの情報が入ってこず待ちくたびれた状態なので、もし次回作の3分の1がリメイクやカバーだったらガッカリするかも…。いつかEricの新曲が聴ける日が来ると信じて気長に待ちたいと思いますが、彼の寡作っぷりはギター仙人Uli Jon Roth以上ですね(苦笑)。なお本作は母国アメリカでは2000年になって「I WAS BORN TO LOVE YOU」というタイトルで発売されています。

【音源紹介】
・I Was Born To Love You