【CD購入録】陰陽座「迦陵頻伽」(2016)

  • 2016/12/01(木) 00:00:00

【CD購入録】
迦陵頻伽
陰陽座「迦陵頻伽」(2016)

有望株が続々とデビューしている国産バンド勢の中でも僕が大きな信頼をよせている陰陽座の13作目を買いました。バンドを代表する楽曲にしてアニメ「バジリスク〜甲賀忍法帖〜」の主題歌でもある甲賀忍法帖(6th「臥龍點睛」収録)の続編にあたる⑫「愛する者よ、死に候え」の先行MVを聴いて期待が高まったので、以前から興味のあった「バジリスク」の漫画版を読んでみました。物語の内容を知った上でMVを視聴すると更に味わいが増しますね。楽曲単体としても陰陽座の新たな代表曲と呼べる逸品だと思います。美しい声を持つ空想上の生物「迦陵頻伽(かりょうびんが)」を冠した作品ということもあってかアルバム全体としては瞬火(B、Vo)とのツインボーカルは健在ながら、これまで以上に黒猫(Vo)が歌うパートが多く彼女にスポットを当てた作風のように感じました。オープニング曲①「迦陵頻伽」のディープな歌い出しから⑫の高音パートまで、表情豊かな黒猫の歌唱が冴え渡っていますね。物々しい曲名とは対照的にアルバム随一のキャッチーな歌メロを持った④「刃」、これぞ忍法帖シリーズ!といった曲調の⑧「氷牙忍法帖」辺りもお気に入りです。

【CD購入録】陰陽座「雷神創世」(2014)

  • 2014/09/30(火) 00:00:00

【CD購入録】
雷神創世
陰陽座「雷神創世」(2014)

11th「風神界逅」と同時に発売された陰陽座の12作目を買いました。独特の雰囲気を持ったオープニング①「雷神」に続いて炸裂する陰陽座らしいドラマティックなメタル②「天獄の厳霊」もさることながらボーカルはグロウルのみというハードチューン④「人首丸」黒猫(Vo)によるコブシを効かせた歌い回しと和音階がフックになっている⑤「夜歩き骨牡丹」、跳ねるリズムとコミカルな歌詞が楽しい⑦「天狗笑い」といった楽曲群が陰陽座の独自性を物語っているように思います。また13分近くある大作⑨「累」も聴き応えがありますね。「風神界逅」と合わせると全24曲というボリュームになるため、現時点で両作品の全容を掴めたとは言えない状況ですが今回も愛聴盤となりそうです。10th「鬼子母神」(2011)がそうだったように聴き込むことで、どんどんハマっていく可能性もあるので「風神界逅」→「雷神創世」の順でループしながら当面ヘビロテするつもりです。

【CD購入録】陰陽座「風神界逅」(2014)

  • 2014/09/28(日) 00:00:00

【CD購入録】
風神界逅
陰陽座「風神界逅」(2014)

初のコンセプトアルバムであり、自らの集大成とバンドも自負する「鬼子母神」(2012)を発表して、その活動にひとつの区切りをつけた陰陽座の11作目を買いました。本作は12th「雷神創世」と2枚同時リリースという意欲作で僕は当然両方とも買いましたが、それぞれの作品を1回ずつ聴いた後はこの「風神界逅」をリピートしています。序曲①「風神」がRPGか映画音楽かと思うような曲調であること、先行で公開されていた⑩「雲は龍に舞い、風は鳳に歌う」がスケールの大きな楽曲ということもあって「風神界逅」が「爽」、「雷神創世」は「重」というイメージがありますね。とはいえ本作にもメタリックチューンは収録されているので、陰陽座の持ち味はしっかりとキープされています。陰陽座としては珍しく本作にはリーダー瞬火(B、Vo)によるライナーノーツがついていて、その中で今回の2枚同時リリースは9th「金剛九尾」(2009)制作時に「鬼子母神」の構想と並行して固まっていたことが明かされています。陰陽座(というか瞬火)の創作意欲にはつくづく驚かされますね。さて、これから「雷神創世」をリピートしようと思います。

陰陽座「鬼子母神」(2011)

  • 2012/12/24(月) 00:00:00

鬼子母神
【No.358】
★★★★★(2011)
年間ベスト2011年第1位

リーダー瞬火(B、Vo)が描く明確なヴィジョンのもと1999年のデビュー以来、安定した活動を続ける陰陽座の記念すべき10枚目の作品にしてバンド初のコンセプトアルバム。これまでにも「黒塚の鬼婆伝説」(3rd「煌神羅刹」収録)、「源 義経」(6th「臥龍點睛」収録)、「最強の妖怪 九尾の狐」(9th「金剛九尾」収録)などアルバム内に個別のテーマを持つ2~3部構成の組曲を発表してきたバンドが初めてとなるトータルコンセプト作の題材に選んだのは「鬼子母神伝説」です。ここで「鬼子母神伝説」について簡単に触れておくと「1,000人の我が子のために人間の子供をさらってきては喰わせていた女神『鬼子母神』を見るに見かねたお釈迦様に末の子を隠され、泣いて『返してくれ』と頼む鬼子母神に対して『1,000人のうちのひとりでも盗られたらこんなに悲しいのだから、お前が盗ってきた子供の親がどういう気持ちなのか分かりなさい』とお釈迦様が諭す」という内容だそうです。本作は「純粋な音楽作品として楽しめて、かつ脚本と絡めて聴けば味わいが更に増すものにしたい」という瞬火の意図からCDとは別に彼が「鬼子母神伝説」に着想を得て書き下ろしたオリジナル脚本「絶界の鬼子母神」が発売されていて、僕はCDと脚本の両方を購入しました。本作で描かれる物語の全体像はバンド結成当初から瞬火の頭の中にあったようで、構想12年のストーリーが瞬火曰く「思った通りのものが思った以上のクオリティで仕上がった」のが本作です。

まず脚本を読まずに音楽作品「鬼子母神」を聴いた時の印象としては、序曲に続く事実上のオープニングトラック②「徨(さまよい)」や陰陽座流シンフォニック・メタル⑧「鬼子母人(きしぼじん)」からエンディングまでの展開など流石のクオリティを備えている一方でコンセプト作品という性質上、キャッチーなメロディや即効性は低いように感じました。ところが脚本を読み、瞬火が作り手としての拘りや思い入れを熱く語ったこちらのインタビューを踏まえてアルバムを聴くとガラリと印象が変わりましたね。何とも言えない狂気を孕んだ③「産衣(うぶぎ)」、演歌と民謡をミックスした陰陽座お得意のお祭りソングでありつつ、その裏に潜む恐ろしさも感じさせる⑤「鬼拵ノ唄(おにこさえのうた)」、曲名にある恨みだけでなく怒りや悲しみといった感情が入り乱れる⑨「怨讐の果て(うらみのはて)」などで顕著な登場人物の心情を楽曲に反映させる表現力は、これまで9枚のアルバムを作り上げてきた現在の陰陽座だからこそ為せる業だと思います。また今回は物語の性質がシリアスで悲しみや怒りを含んだものであるということからバンド初の試みとなるダウンチューニングを採用しているのですが、これが実に効果的で作品全体に今まで以上の重厚感が溢れているのも見逃せません。

ストーリーの描写については、過去の組曲でそうだったようにセリフを交えながら展開させていくのかと思いきや、セリフと呼べそうなのはイントロ①「啾啾(しゅうしゅう)」の「はな」とラストチューン⑫「鬼哭(きこく)」の「はな、行こう」という2つのみです。しかしセリフを最小限に抑えたからこそ逆に活かされているし、このセリフの主である登場人物「静(しず)」が抱く様々な感情をここに凝縮した黒猫(Vo)の熱演にただただ脱帽です。彼女は歌唱力だけでなく登場人物の心の機微を描写するという面でも過去最高のボーカルパフォーマンスを披露してくれているし、「鵺(ぬえ)」(4th「鳳翼麟瞳」収録)でボーカリストとして開眼した瞬火も本作随一のドラマティックチューン⑩「径(みち)」で更なる成長振りを見せつけてくれています。これまで陰陽座が生み出してきた作品群の中には名盤もあったし、近作も十分に楽しめる内容ではありましたが「まだ余力を残しているのでは?」と感じることもありました。それに対して本作は聴き始めのインパクトでは一歩譲るものの、繰り返し聴く度にどんどん味わいが増してきて今ではすっかり魅了された僕がいます。それにしてもバンド結成当初から今回のようなコンセプトアルバムを作ることを思い描き、12年後にそれを実現させてしまう瞬火という人の才能は凄まじいですね。音楽に対するその真摯な姿勢が本当にカッコいいです。「このアルバムを生み出すために陰陽座は結成された」という瞬火の言葉にも十分な説得力が感じられるバンドの集大成的な1枚だと思います。

【音源紹介】
・「径(みち)」

【CD購入録】陰陽座「鬼子母神」(2011)+戯曲「絶界の鬼子母神」

  • 2011/12/22(木) 00:00:00

【CD購入録】
鬼子母神
陰陽座「鬼子母神」(2011)

絶界の鬼子母神
絶界の鬼子母神

陰陽座の記念すべき10作目にしてバンド初のコンセプトアルバムを買いました。これまでにも「黒塚の鬼婆伝説」(3rd「煌神羅刹」収録)、「源 義経」(6th「臥龍點睛」収録)、「最強の妖怪 九尾の狐」(9th「金剛九尾」収録)などアルバム内に個別のテーマを持つ2~3部構成の組曲を発表してきたバンドが満を持して制作したトータルコンセプト作ということで大きな期待を胸に聴きました。数回聴いた印象としては、これまでの組曲ナンバーが曲毎に異なる表情を見せていたのに対して本作はアルバム1枚でひとつの物語を描いているため楽曲に統一感がありますね(裏返せば過去作品の方がバラエティに富んでいると言えるかもしれません)。現時点では即効性はそれほど高くなく、聴き込みが必要なアルバムという印象です。今では僕の中で神盤となっているROYAL HUNT「PARADOX」(1997)DREAM THEATER「METROPOLIS PT.2」(1999)の2大コンセプトアルバムも聴き始めはそれほど好印象ではなかったので、僕のお気に入りバンド陰陽座初のコンセプトアルバムを聴き込むにつれて、どんな味が出てくるのか楽しみ半分、不安半分という感じですね。またバンドはCDだけでなはくリーダー瞬火(B、Vo)が手掛けたオリジナル戯曲で本作の脚本でもある書籍「絶界の鬼子母神」を同時発売しているので、そちらの戯曲と歌詞を読みながら本作の世界観どっぷり浸りたいと思います。

陰陽座「金剛九尾」(2009)

  • 2010/01/25(月) 00:00:00

金剛九尾
【N0.215】
★★★★(2009)
年間ベスト2009年第9位

現在の日本メタルシーンの中で僕が最も好きなバンド陰陽座が2009年9月9日にリリースした9作目。「ドラ息子」の愛称で親しまれてきた斗羅(Ds)が正式メンバーではなくサポートメンバー「河塚 篤史」としてバンドに関わっていくことになった新体制(本作のドラムパートは全て河塚によるもの)として初めての作品ですが、そんなバンド内の変化をものともしないアルバムとなっていますね。作品全体の印象としては歌ものハードロック路線だった6th「臥龍點睛」に近く、歌謡テイストが強い作風なのでコアなファンには軟弱になったと言われそうですがクセがなく聴きやすいアルバムだと思います。

前作の「酒呑童子」に続き2作品連続で壮大な幕開けとなる本作はミディアムテンポ①「貘」でスタートします。黒猫(Vo)の透明感ある歌声によるサビを持つこの曲はガツンと来るインパクトに欠けるものの、「金剛九尾」の世界への扉をゆっくりと開いてくれる1曲ですね。メタルバンド陰陽座としての魅力を発散する2つのシングル曲②「蒼き独眼」⑦「相剋」、それらに勝るとも劣らないパワフルな哀愁メタル③「十六夜の雨」島 紀史(G/CONCERTO MOON、ex-DOUBLE DEALER)が好きそうなメタリックリフ(元ネタはRIOT?)と黒猫の力強いボーカルが映える忍法帖シリーズの原点回帰曲⑤「孔雀忍法帖」などの疾走系から黒猫の独壇場となる美麗バラード⑧「慟哭」といったこのバンドらしさに加えて、今回は「ボーカリスト瞬火」の魅力が際立つ陰陽座流ブルーズ⑥「挽歌」のような新機軸もあり楽しめます。そして本作を語る上で欠かせないのが最強の妖怪「九尾の狐」を題材とした3部作の「組曲『九尾』」です。僕の好きな歌謡曲風メロディをサビに据えた⑨「組曲『九尾』~玉藻前」、後半の畳み掛けが素晴らしい9分に及ぶ組曲の中核⑩「組曲『九尾』~照魔鏡」、人間と「九尾の狐」との激しい戦いを象徴するかのようなスラッシーでアグレッシブな⑪「組曲『九尾』~殺生石」と続くこの組曲は聴き応え十分です。ラストに配された恒例のお祭りチューン⑫「喰らいあう」は「Cry Out!(叫べ!)」と聴こえるサビや掛け合いパートなど、バンドとファンがCry Outしながら魂を喰らいあう陰陽座のライブで盛り上がりそうな工夫が仕掛けられた楽しい1曲。エンディングのドラムソロは「陰陽座のドラ息子はこいつだ!」という瞬火(B、Vo)の気持ちの表れなのかな。

デビューしてから10年の間で9枚ものオリジナルアルバムをリリースしていながら、そのどれもが高品質な作品となっている陰陽座は日本が世界に誇れるバンドのひとつだと思うし、本作も安定感抜群の1枚です。もはやベテランバンドらしい風格と余裕すら感じられるほどなのですが、その安定感の一方で「まだ余力を残しているのは?」と思ってしまうのも事実。本作も素晴らしい作品だと思いながらも、前作「魑魅魍魎」を聴き終えた時と同じように次のアルバムではもっと凄いものを聴きたいと思ってしまうんですよね。次のアルバムはいよいよ10枚目となるので、どんな作風になるのか今から楽しみです。コンセプトアルバム?2枚組?瞬火だけでなく各メンバーが積極的に曲を書く?など色々と想像してしまいます。本作に話を戻すと、「和」の要素や妖怪らしさといったバンド初期の個性は確実に薄まってきていますが、瞬火が生み出す珠玉のメロディを極上のボーカルで聴かせる今のスタイルも好きな僕にとっては満足度の高い作品ですね。

【音源紹介】
・「組曲『九尾』~玉藻前」

【CD購入録】陰陽座「金剛九尾」(2009)

  • 2009/09/10(木) 00:00:00

【CD購入録】
金剛九尾
陰陽座「金剛九尾」(こんごうきゅうび)(2009)

2009年9月9日にリリースされた陰陽座の9th「金剛九尾」を買いました。常々、2~3作先までのヴィジョンがあると公言している瞬火(B、Vo)の周到な計画性には感心してしまいますね。3月には斗羅(Ds)が今後は正式メンバーとしてではなく、本名の河塚 篤史名義に戻ってサポートミュージシャンとして陰陽座に関わっていくことが発表され、バンド初のメンバー脱退を経験した陰陽座ですが、その勢いは止まることを知らないようです(ちなみに本作のドラムパートは全て河塚によるもの)。前作「魑魅魍魎」と同じく壮大なミディアムテンポの①「貘(ばく)」で幕を開ける本作は先行シングル②「蒼き独眼(あおきどくがん)」、⑤「孔雀忍法帖(くざくにんぽうちょう)」、1月にシングル「相剋/慟哭」として発表された⑦「相剋(そうこく)」といったメタリックチューンを軸にヴィジュアル系っぽい④「小袖の手(こそでのて)」、陰陽座流ブルーズ⑥「挽歌(ばんか)」、美しいバラード⑧「慟哭」(どうこく)など表情豊かな楽曲が並びます。ハイライトは「黒塚」(3rd「煌神羅刹」収録)、「義経」(6th「臥龍點睛」収録)に続く組曲の第3弾にあたる「組曲『九尾』」ですね。ディスコ調にも思える導入部から歌謡曲風の絶品サビメロへ至る⑨「組曲『九尾』」~玉藻前(くみきょく「きゅうび」~たまものまえ)、めまぐるしい展開で組曲の中核を成す⑩「組曲『九尾』」~照魔鏡(しょうまきょう)、組曲ラストはバラードという予想を見事に裏切る高速メタリックチューン⑪「組曲『九尾』」~殺生石(せっしょうせき)の3部作からなる濃密な音世界は聴き応え抜群です。 これから本格的に聴き込んでいきますが、2009年の新譜の中でもお気に入り度上位に入ることはほぼ確実な1枚。前作からちょうど1年というハイペースで、ここまでの作品を生み出すバンドのブレイン瞬火の創作意欲は底なしですね。10作目となる次のアルバムは2010年10月10日発売かな?なんて思ってしまいますが、まずは「金剛九尾」をじっくり味わいたいと思います。

【CD購入録】陰陽座「相剋/慟哭」(2009)

  • 2009/01/22(木) 08:11:07

【CD購入録】
相剋慟哭
陰陽座「相剋/慟哭」(2009)

スウェーデン産メロディック・ロック界期待のホープH.E.A.Tのデビュー作を買いにCDショップに行ったところ、偶然発見した陰陽座の4曲入り(うちに2曲はカラオケバージョン)のニューシングル。ニンテンドーDS用ソフト「犬神家の一族」とのタイアップシングルだそうで、そういえば昨年の秋頃に本作の情報を耳にしてたのに忘れてしまってました…。①「相剋」はいかにも陰陽座のシングル曲らしいアップテンポのツインボーカル曲。黒衣の天女紅葉といった楽曲と同じ路線で、歌詞には「斧(よき)・琴(こと)・菊(きく)」という物語の鍵となる言葉が織り込まれています。そして②「慟哭」黒猫(Vo)独唱による「組曲『義経』~来世邂逅」にも通じる歌謡曲風バラードで、しっとり聴かせてくれます。ゲームのオープニング曲が①、エンディング曲が②ということで、それぞれアップテンポ、バラードとなったんでしょうね。2曲とも鈴(または鐘)のようなサウンドを用いたミステリアスなイントロで始まるというのも、金田一 耕助が活躍する推理小説「犬神家の一族」の世界観にぴったり。楽曲的には2曲とも陰陽座としては平均レベルかな。食い足りなさが残るというのが正直なところで、もっと陰陽座の新曲が聴きたくなりますね。

リーダー瞬火(B、Vo)による本作についてのコメントはこちら。

陰陽座「魑魅魍魎」(2008)

  • 2008/11/30(日) 20:24:48

魑魅魍魎
【No.076】
★★★★(2008)
年間ベスト2008年第5位

リーダー瞬火(B、Vo)の明確なヴィジョンのもと、安定した活動を続ける妖怪ヘヴィメタルバンド陰陽座の8枚目のアルバム。全体的なイメージとしては、前作「魔王戴天」でのストイックなまでのメタル色は減退しています。楽曲もメタル、ハードロック、バラード、どっしりとしたスローナンバー、爽やかポップと多岐に渡っていて、前作で感じた単調さを解消してくれてるのが嬉しいですね。アルバムタイトルからして「妖怪ヘヴィメタル」ですが、初期のおどろおどろしさを前面に出したというよりは妖怪をテーマにした楽曲が大半という作品となっています。

このアルバムを聴いてまず思ったのは、これまで以上に余裕と風格が感じられるということ。以前は「薄っぺらさ」が指摘されることもあったギターサウンドが図太くなっていて、ドラムも抜けが良いのが好印象。メタルバンドの1曲目としては掴みが弱いと思えてしまう①「酒呑童子(しゅてんどうじ)」のような曲も、どっしりとした重厚感があって、じわじわとテンポを上げていきギターソロで曲が締めくくられる頃にはすっかり陰陽座の魑魅魍魎な世界へと引き込まれている自分に気付きます。その後に連続する②「蘭(あららぎ)」~⑤「紅葉(くれは)」までの聴きやすいアップテンポナンバーも好きだけど本作の聴きどころは、ヘヴィなグルーヴを生み出しつつサビのコーラスはキャッチーな⑥「青坊主(あおぼうず)」以降のアルバム後半ですね。なんといってもメタリックなギターリフと、歌謡曲にも通じるサビが頭から離れない⑦「魃(ひでりがみ)」が本作随一のキラーチューンで素晴らしい。⑧「しょうけら」は前作の「ひょうすべ」を思い起こさせる楽しいお祭り系ロックソングナンバーで、ライブでの大合唱の様子が目に浮かびます。そんな楽しげな空気を断ち切り、メタルバンド陰陽座の技量の高さを改めて感じさせてくれる攻撃的な⑨「鬼一口(おにひとくち)」から怒涛の終盤へ。11分の大作⑩「道成寺蛇ノ獄(どうじょうじくちなわのごく)」は、黒猫(Vo)と瞬火による歌の表現力が見事な1曲。歌また歌という2人のやりとりの妙と、その間でしっかり見せ場を作るギターパートに聴き惚れてしまうし、本作で唯一黒猫が作詞作曲を手がけたバラード⑪「鎮魂の歌(たましずめのうた)」では「星の宿り」「夢虫」のような儚さに加え、希望の光をも感じさせてくれます。そんな⑪で締めくくっても良かったと思うんですが、次に登場する⑫「にょろにょろ」も爽やかさと切なさが同居した佳曲で、このラストもありかなと思えてきます。

陰陽座の作品はホントに安定感があって、聴いてガッカリすることはないんだけど、「組曲『黒塚』」にあった身震いするような感覚や、「煙々羅」を聴いた時の斬新さが本作にもあるかというと、そうでもないんですよね。勿論、1枚のメタルアルバムとしてみれば名盤と呼んで差し支えないレベルであるのは確かながら、陰陽座の作品に存在する「決め事」が予定調和を生み出しているような気も。ここ最近の安定感をぶち壊して良い意味で聴き手を裏切り、驚かせるような作品を聴いてみたいと思ってしまいます。今の陰陽座なら凄いものを作ってくれそう。ヘヴィメタルバンドであることに拘り、力強さと攻撃性を強調した「魔王戴天」、バンドのコンセプト「妖怪」をとことん追求した「魑魅魍魎」ときたので、「2枚先のアルバムタイトルまで決まっている」と語る瞬火が描く次回作のテーマが「陰陽座の作品にある決め事を取っ払って、自由奔放に音楽を作る」だったら嬉しいなぁ。

【音源紹介】
・「魃(ひでりがみ)」

【CD購入録】陰陽座「魑魅魍魎」(2008)

  • 2008/09/11(木) 08:20:27

【CD購入録】
魑魅魍魎
陰陽座「魑魅魍魎」(2008)

発売日にCDを買ったのはいつ以来かな。とりあえず今年に入ってからは初めてだと思います。全体的なイメージとしては、前作でのストイックなまでのメタル色は減退したかな。アルバムタイトルからして「妖怪ヘヴィメタル」ですが、初期のおどろおどろしさを前面に出したというよりは妖怪をテーマにした楽曲が大半という感じです。楽曲はメタル、ハードロック、バラード、どっしりとしたスローナンバー、爽やかポップと多岐に渡っていてバラエティ豊か。数回リピートした中で印象に残ったのは、メタリックな⑦魃(ひでりがみ)、ライブで盛り上がる光景が目に浮かぶ⑧しょうけら、アルバムを爽やかに締めくくる⑫にょろにょろあたりですね。今も⑦の「燃えて燃えて悶える程~♪」というサビメロが頭の中でグルグルまわってます。あと、⑪鎮魂の歌(たましずめのうた)はどこか「風の谷のナウシカ」や「天空の城ラピュタ」といった宮崎アニメを連想させる雰囲気があるような…。

陰陽座「魔王戴天」(2007)

  • 2008/09/04(木) 07:38:15

魔王戴天
【No.035】
★★★(2007)

2枚組にして初のベストアルバム「陰陽珠玉」をリリースし、47都道府県ツアーを終え、バンドとして一区切りをつけた感のある陰陽座が放つ通算7枚目のアルバム。前作は軽めの音でメタルというよりはハードロックアルバムだったのに対し、今回はこれまで以上にヘヴィで攻撃的なメタルアルバムとなっています。

陰陽座の第2章への期待を徐々に高める①「序曲」に続く②「魔王」からして王道メタリックチューンです。この②は陰陽座らしいメロディアスな楽曲をベースに、このバンドならではの和音階、雅楽風コーラスにデスヴォイスなど陰陽座の得意技を詰め込んだ1曲で、アルバムの幕開けには持って来いですね。陰陽座のアルバムでは欠かせない忍法帖シリーズの⑤「覇道忍法帖」では瞬火(B、Vo)自身がこのシリーズに設けた「ボーカルは黒猫のみ」という制約が緩和され、瞬火がサビを歌っているのが特徴。しかも、このサビメロの素晴らしいこと。爽やかに疾走し、終盤で黒猫(Vo)の美しいコーラスと絡み合うパートは鳥肌ものです。続く⑥「ひょうすべ」はファンキーなメロディと演歌っぽい黒猫の声で歌われる韻を踏んだ歌詞が耳に残る1曲で、このアルバムで一番気に入ってます。アルバム後半でガツンと来る⑧「骸」はスラッシーな「悪路王」タイプの曲で、死をテーマにしたストレートなメッセージがグサリと胸に突き刺さります。聴き始めの頃は上記の曲以外は弱いかなぁとも感じたんですが、リピートするうちに他の曲もジワジワ味わいが出てきました。陰陽座流パンクな⑩「生きることとみつけたり」も斬新だしメタルバンドでありながら、こんな曲ができるのも陰陽座の強みだと思ってます。

今回は全曲が瞬火の作詞作曲なのでバンドのメタリックな側面にスポットが当たってる反面、他のメンバーが曲作りに関わることで生まれていた多様性が少ないのが寂しい感じもしますね。とはいえ瞬火一人でも十分バラエティに富んでるので、あくまで陰陽座としては、という話ですが。「最高傑作という言葉すら生ぬるい」というキャッチコピーで語られる本作だけど、僕の中の最高傑作「鳳翼麟瞳」を上回るトコまでは行かなかったですね。

【音源紹介】
・ひょうすべ(Live)

陰陽座「陰陽雷舞」(2006)

  • 2008/09/03(水) 08:19:31

陰陽雷舞
【No.034】
★★★(2006)

4th「鳳翼麟瞳」以降、オリジナルアルバム発表の度にライブ音源をリリースしている陰陽座の6th「臥龍點睛」に伴うツアー「龍頭徹尾」のベストテイクをまとめた2枚組ライブ盤。1つのコンサートを途中で切ったような2枚組ライブ作品にしたくないという瞬火(B、Vo)のこだわりから、Disc-1、2共に収録曲は10曲で1曲目は序曲で始まり、オリジナル作品同様にお祭り系ソングで締めるという2つのミニライブが楽しめる構成になっています。

全20曲中、当時の最新作6thから7曲も選ばれているのが嬉しいですね。メロディは良いのに音が軽いため、楽曲の魅力が削がれているように思えたDisc-1③「甲賀忍法帖」、⑥「龍の雲を得る如し」、⑦「蛟龍の巫女」といった6thアルバムの収録曲は、躍動感とエナジー溢れるこのライブバージョンこそが本来の姿だと思えてきます。珍しいところではシングル「妖花忍法帖」のカップリング曲Disc-1⑤「わいら」も収録されていて、これがまたカッコいい仕上がりなんです。また以前のライブ盤「赤熱演舞」と重複する楽曲を聴いていると、バンドが更に成長しているのが伝わってきます。音は本作の方が断然ソリッドで良いし、Disc-2⑧「陰陽師」での招鬼(G)のボーカルパートも「頑張ってギタリストが歌ってます」的ではあるものの確実にパワーアップしてます。

選曲については、5th「夢幻泡影」から1曲も選ばれてなかったり、個人的に「この曲入れるなら、あの曲を聴きたかった」と思ったりする節もありますが、陰陽座というバンドのメロディックメタル的側面、スラッシーな攻撃性、ヘヴィネス、ポップセンス、泥臭さといった多面的な要素がひと通り網羅されている作品といえそう。ただDisc-1②「鳳翼天翔」演奏後の瞬火による挨拶MCが「本日は我々陰陽座の…」というところで乱暴に切られていたり、黒猫(Vo)の歌のおねえさん風の掛け合いがちょっと気恥ずかしいのが気になるかな。特にDisc-2⑩「亥の子唄」の掛け合い「ほんほんえ~い」では黒猫が「凄い凄い」と煽っている割に観衆の声の音量が小さく、イタイものになっているような気がします(実際のライブでは大合唱だったと思うんですが)。そんな個性的な掛け合いも映像を伴うと違和感も大きくないので、やはり陰陽座のライブ盤を楽しむならDVDの方がいいですね。中でも2005年発表の「我屍越行」がお気に入りです。

【音源紹介】
・甲賀忍法帖(Live)

陰陽座「臥龍點睛」(2005)

  • 2008/09/01(月) 07:37:17

臥龍點睛
【No.033】
★★★★(2005)
年間ベスト2005年第7位

アニメ「バジリスク」(見たことはありませんが)の主題歌にシングル「甲賀忍法帖」が抜擢されるなど、一般的な知名度もアップしつつある陰陽座の6thアルバムはこれまでで最もメタル的要素の少ない作品といえそう。ただ、メロディの魅力がなくなったというわけではもちろんなく、曲単位で見ればメロディの質は非常に高く②「龍の雲を得る如し」、④「甲賀忍法帖」、⑧「蛟龍の巫女」といったメタル寄りの曲、歌謡曲風でメロディアスな⑦「月花」が素晴らしい。特に黒猫(Vo)作の⑧は陰陽座としては珍しいほどのパワーメタル作で、勇壮なメロディとドラマティックなギターソロが秀逸で個人的には陰陽座随一の名曲だと思ってます。

またシングルとして3ヶ月連続リリースされた3部作の「組曲『義経』」を完全版として収録。王道ハードロック路線⑨「組曲『義経』~悪忌判官」~シアトリカルな雰囲気で15分近くに渡る大作⑩「組曲『義経』~夢魔炎上」~清廉なバラード⑪「組曲『義経』~来世邂逅」と流れるこの組曲はやはり連続して聴いた方が感動的ですね。この「組曲『義経』」を聴いていると、陰陽座によるフルコンセプト・アルバムを期待せずにはいられません。特定の妖怪や歴史上の人物を題材にいつか作ってくれないかな。

その一方で新機軸ともいえるアメリカンロックタイプの曲やヴィジュアル系っぽい曲も収録されていて、より広いファン層を取り込もうという意欲も見えてきますね。それは音作りにも顕著に表れていて、メタル耳としてはドラムをはじめとして音が妙に軽くてメタリックな印象の曲もなんだか線が細くなっているように感じるのが残念なところ。メタル初心者にも聴きやすい曲から初めて陰陽座に触れるにはハード過ぎと思える曲もあり、やや焦点がぼけてしまっているように感じるものの、曲単体の魅力は過去最高レベルという1枚です。

【音源紹介】
・蛟龍の巫女(Live)

陰陽座「夢幻泡影」(2004)

  • 2008/08/31(日) 07:36:29

夢幻泡影
【No.032】
★★★(2004)

作品を発表する度に着実にメジャーバンドへの階段を上り続ける陰陽座のインディーズ時代から数えて通算5作目に当たるこのアルバムは、普遍的なヘヴィメタルへ更に一歩近づいた作風です。「和」のテイストとして雅楽風コーラスや演歌を思わせるパートもある黒猫(Vo)の歌唱といった要素が挙げられますが、このアルバムの曲が英語で歌われていたら、優れたメタルバンドとしてすんなり受け入れることができそうなほどです。

これまでとは一風異なった雰囲気を持つ序曲①「夢幻」に続く②「邪魅の抱擁」は典型的なメロディックパワーメタルで純粋にカッコいい!この曲のサビでの黒猫と瞬火(B、Vo)が異なるメロディで異なる歌詞を歌い上げながら、それが一体となり迫ってくる様は圧巻で身震いを覚えるほど。ツインボーカルを本当に効果的に聴かせるなと感心しました。そして陰陽座の王道チューンともいえる③「睡」狩姦(G)作の爽やかな空気を伴ったメロディアスハードの④「鼓動」と序盤の畳み掛けはお見事です。ただ、決して悪いわけじゃないんだけど後半が少し弱いかなぁと思うのも事実。前作はそれぞれの曲のインパクトが強かったのですが、今回はその域にまで達していないというか…。

そんな中、僕の心をググッと捉えてくれたのが⑦「煙々羅」です。これまでの陰陽座のレパートリーとは明らかに違う都会的な空気を持つこの曲をメインで歌っているのは瞬火です。前作で歌唱力のアップを見せつけてくれていたけど、この曲での彼の歌声も実に魅力的に響いてきて、フワフワとした浮遊感のあるメロディを実に心地よく響かせるこの曲は黒猫じゃなくて瞬火が歌うべきだとさえ思えてきます。後半に⑦の他にもう一つ山場があればという贅沢な気持ちもありますが、年一作のペースを守りながら、これだけの充実作をリリースし続ける陰陽座の懐の深さを見せつけてくれる良質アルバムですね。

【音源紹介】
・煙々羅

陰陽座「赤熱演舞」(2003)

  • 2008/08/29(金) 07:18:33

赤熱演舞
【No.031】
★★★(2003)

DVD「白光乱舞」(僕は未聴)と同時にリリースされたメジャーデビュー後初のライブ音源。インディーズ時代のライブビデオ「百鬼降臨伝」も良かったですが、本作でも陰陽座らしい熱いパフォーマンスを披露してくれてますね。

セットリストは当時の最新作である4th「鳳翼麟瞳」に偏ることなく他の3枚のフルアルバムや、企画盤からの楽曲も万遍なく収録された14曲で、バランスのいいライブ盤となっています。特徴としては陰陽座流ドゥームの傑作⑤「鵺」、ライブ映えするお祭りソング⑫「舞いあがる」、⑭「おらびなはい」以外は勢いのあるメタリックチューンがズラリと並んでいること。本作で目立つのは、どの曲もスタジオ盤よりも若干速めでアグレッシブになっている点で、中でも⑧「鬼斬忍法帖」は1stアルバムの頃とは比べものにならない程にカッコよく生まれ変わっています。その変貌振りは、これを聴いたらスタジオ盤が聴けなくなるほど。ギターソロ前の「いったれぇ、狩姦~」という黒猫(Vo)の煽りも好きです。

ただライブアルバムとして見ると、演奏が荒めで音も良くない(特にドラムが軽い)、オーディエンスの歓声があまり聞こえないなど気になる点もあるのも事実ですが、そんなマイナス面をカバーする楽曲の良さは流石です。アルバムの大半を占めるメタリックな曲でのストイックでシリアスな空気が⑫と⑭の掛け合いでは一転して、ほのぼのムードになるのはちょっと違和感があるけど、これも陰陽座の持ち味かな。

【音源紹介】
・鵺(Live)

陰陽座「鳳翼麟瞳」(2003)

  • 2008/08/26(火) 07:35:25

鳳翼麟瞳
【No.030】
★★★★(2003)
年間ベスト2003年第3位

個人的に最もお気に入りの日本産ヘヴィメタルバンド陰陽座の4thアルバムにしてメジャーデビュー2作目。これまでも印象的なメロディを持った曲を多く生み出してきた陰陽座ですが、このアルバムは過去の作品以上に曲が粒揃いの印象。これまでは妖怪へヴィメタルを自称するだけあって、おどろおどろしい空気がアルバムに充満していたけど、今回はその妖怪度を抑え垢抜けた作品を作り上げてます。

メタルの王道をゆくイントロ①「焔の鳥」から気持ちよく疾走する②「鳳翼天翔」へと至る流れを聴いてガッツポーズが出ました。シングルにもなった④「妖花忍法帖」は今回の垢抜け具合を象徴するような出来栄えだし、招鬼(G)作の⑧「面影」が醸し出すメロハー風味もこれまでになかった味ですね。④、⑧のように新鮮な曲もありますが、いかにも「陰陽座らしい」ツインボーカル曲⑥「叢原火」や10分に渡るヘヴィな陰陽座流ドゥームの極致⑤「鵺」も収録されていて、従来の魅力もしっかりキープしています。中でも⑤の完成度は、これまでの陰陽座のへヴィチューンの中でも最高クラスで、この曲での瞬火(B、Vo)による従来のクセのある歌い方から脱却した優しい歌唱は嬉しい驚きでした。メインボーカルの黒猫もこれまで同様、素晴らしいですが、彼もほんとに歌唱力がアップしてますね。

賛否両論分かれているアニソン風の⑩「舞い上がる」もメロディが良いので十分楽しめました。こんな曲を発表できるのも陰陽座ならではの魅力だと思ってます。このアルバム以降、陰陽座は益々活躍していくわけですが、現在のところ最も好きな陰陽座のアルバムはズバリ本作です。

【音源紹介】
・妖花忍法帖

陰陽座「封印廻濫」(2002)

  • 2008/08/24(日) 09:44:29

封印廻濫
【No.029】
★★(2002)

メジャーデビュー作「煌神羅刹」から僅か半年のスパンでリリースされたミニアルバムで、インディーズ時代のマテリアル6曲に新曲2曲を加えた全8曲という構成です。随所で陰陽座らしさを感じさせてはくれるものの、オリジナルアルバム群の完成度には及ばず、熱心なファン向けの1枚という印象。

インディーズ時代のライブビデオ「百鬼降臨伝」で披露されていた、粘りあるベースラインが印象的な②「百々目鬼」とスラッシーに突進する③「窮奇」という2つの疾走曲が聴きたくて本作を買ったんですが、それ以外にもゴリ押しメタリックチューン①「火車の轍」、本作で最もキャッチーな④「空蝉忍法帖」など、メロディックメタル要素の濃いアルバム前半は聴き応え十分。それに対して土臭いドゥーム路線やノリノリのロックナンバー、バラードなどで構成される後半はやや弱いように思えます。そんな中で僕を魅了してくれたのが瞬火(B、Vo)がメインでアグレッシブに歌い、黒猫(Vo)がアクセントを加える陰陽座流メロデスの⑦「侵食輪廻」です。

インディーズ時代から陰陽座の楽曲は質が高かったんだと再確認できる作品である反面、メジャーデビューのタイミングに合わせて立て続けにリリースするというスケジュール的な締め切りがあったせいか全体的に音が荒く、急いで作りました感が漂っているのが残念。上記のようなお気に入り曲もありますが、作品としては中途半端な印象が拭えないため全アルバムを揃えた上で、もっと陰陽座の曲を聴きたいという人にお薦めという文字通りの企画盤です。とはいえ、陰陽座はこういった企画盤やカップリングの楽曲をライブでよく演奏するし、中にはフルアルバムの曲と同じくらい好きなものもあるところが魅力的なんですよね。

【音源紹介】
・侵食輪廻(Live)

陰陽座「煌神羅刹」(2002)

  • 2008/08/21(木) 07:28:05

煌神羅刹
【No.028】
★★★★(2002)
年間ベスト2002年第9位

インディーズ盤で2枚のアルバムをリリースし、話題になった妖怪ヘヴィメタルバンド陰陽座の記念すべきメジャーデビュー作。インディーズ時代よりもわかりやすい作風を目指したためか、疾走曲の割合がこれまで以上に多く過去2作に比べるとクセがなく、すんなりと耳に馴染んでくる1枚です。

とにかくアルバム冒頭の3曲が実に強力。エキゾチックな和音階をメタルに融合させた①「羅刹」、伸びやかで飛翔感あるサビメロを黒猫(Vo)が力強く歌い上げる②「朧車」、タイトル通り煌めくほどのメロディの良さがギラリと光る③「煌」と、それぞれタイプの異なる曲での畳み掛けが凄いですね。特に③はつい繰り返して聴いてしまう名曲です。オープニングからの7曲中6曲が疾走系のため中盤やや単調な印象もありますが、陰陽座の全てを凝縮したといえるメジャーデビューシングル⑦「月に叢雲花に風」のメロディは耳に残ります。そして「鬼婆伝説」を題材としたアルバム後半のハイライト⑧「組曲『黒塚』~安達ヶ原」、⑨「組曲『黒塚』~鬼哭啾々」が本当に素晴らしい。鬼婆と化した老婆の悲しみを黒猫が切々と歌うバラードから背筋も凍る語りパートへ展開する⑧、流麗なツインギターをフィーチュアしながら一気に駆け抜ける物語の後半⑨という構成になっていて、その両方ともがバンドの卓越した表現力を堪能できる名曲です。そんな「組曲黒塚」のシリアスな世界観から、ガラリと雰囲気が変わってラストを締めるハッピーロックチューン⑩「おらびなはい」も秀逸。

過去2作品で見受けられたヘヴィでおどろおどろしい楽曲は④「牛鬼祀り」のみで、黒猫の美声が映えるバラードと陰陽座定番のお祭りソングを盛り込みつつ、大半をスピード曲で固めた本作からは、幅広いファン層を取り込もうとする瞬火(B、Vo)の狙いがうかがえます。各メンバーもそんなリーダーの気合いに引っ張られるかのように、充実のパフォーマンスを披露。その中でもやはり黒猫のボーカルパートを耳で追ってしまいますね。インディーズ時代から大幅なグレードアップを遂げた、メジャーデビュー盤かくあるべしという作品ですね。

【音源紹介】
・「組曲『黒塚』~安達ヶ原」(Live)

陰陽座「鬼哭転生」(1999)

  • 2008/08/18(月) 07:25:37

鬼哭転生
【No.027】
★★★(2002)

妖怪ヘヴィメタルバンド陰陽座のデビューアルバム。2005年発売のライブDVD「我屍越行」風に改めてメンバーを紹介すると、魂有り余るベース兼ボーカルを務めるリーダー瞬火(B、Vo)0、魂を揺さぶるドラム斗羅(Ds)、魂を貫くギター狩姦(G)、魂を震わすギター招鬼(G)、魂を抱きしめるボーカル黒猫(Vo)という5人編成のバンドです。初のフルレンスアルバムということで、メジャーデビュー作「煌神羅刹」は勿論、インディーズ時代のもうひとつの作品である2nd「百鬼繚乱」と比べても荒削りで音質もさほど良くありませんが、男女ツインボーカルで歌うメロディアスなメタルをベースに泥臭さ、プログレ風展開をミックスさせた熱い音楽性と難解な日本語詞で表現される独自の世界観が本作で既に確立されています。

アルバム序盤こそ、泥臭さが強く複雑な曲展開が多いためノリ切れませんが、和歌を詠唱するような黒猫の「抜いた」歌唱が醸し出す「和」の香りとメタルのアグレッションが見事にマッチした⑤「文車に燃ゆ恋文」以降は陰陽座のレパートリーの中でも重要な役割を担うものばかり。雪女をテーマにした美旋律バラード⑥「氷の楔」、ライブでその真価を発揮する忍法帖シリーズ第1弾⑦「鬼斬忍法帖」、メンバーがステージを駆け回るライブパフォーマンスが有名なメロディックチューン⑧「百の鬼が夜を行く」、古来の童歌風メロディと地方民謡歌詞をメタリックに仕上げた⑩「亥の子唄」もさることながら、群を抜いているのが黒猫作詞作曲による⑨「陰陽師」です。瞬火の語りに始まりジャーマンメタル調のクサいメロディが炸裂した後、狩姦のテクニカルプレイ~ピアノソロと黒猫の語り~招鬼のエモーショナルギターを経て再び大疾走するこの曲は、「バンドの表題曲」と瞬火が自信を持って語るのも納得の名曲です。

「妖怪ヘヴィメタル」というバンドコンセプト、メンバー全員が白塗りメイクをして着物を身に纏うという色モノ扱いされかねない要素がありながら、陰陽座が幅広い層に受け入れられているのはやはりメロディ、楽曲の良さに尽きると思います。そして本作は、瞬火の明確なヴィジョンとプロデュース能力の高さで具現化される陰陽座の濃密な世界が味わえる1枚となっています。

【音源紹介】
・陰陽師(Live)

陰陽座「百鬼繚乱」(2000)

  • 2008/07/30(水) 22:27:29

百鬼繚乱
【No.017】
★★★★(2001)

正統派ヘヴィメタルサウンドに男女ツインボーカルと「和」のテイストを巧みに取り入れ、「妖怪ヘヴィメタルバンド」というコンセプトで活動を展開する陰陽座の2ndアルバム(インディーズ盤)にして、僕が彼らの音に初めて触れた作品です。本作でこのバンドに惚れ込み、これ以降のアルバムも欠かさず聴いていますが、本作には次作以降の陰陽座がとっつきやすいメロディックメタルと洗練性を手に入れたかわりに失ってしまった強烈な個性が詰まっているように思えます。

ヘヴィなギターリフと能楽風コーラスを用いた導入部が「和」を感じさせる疾走曲①「式を駆る者」、独特のクセを持った男声ボーカル瞬火(B、Vo)とバンドの顔である女声ボーカル黒猫(Vo)が絡み合いながらキャッチーなメロディを歌い上げる名曲②「桜花ノ理」、プログレ的要素も若干盛り込んだ曲展開の中で招鬼(G)狩姦(G)のツインギターが冴えを見せるメロディックメタル曲④「癲狂院狂人廓」、ストレートなメタルチューン⑧「化外忍法帖」といった即効性の高い楽曲にまず耳が惹きつけられます。そんなメジャーデビュー後の陰陽座に通じる明快な楽曲に加えて、本作ではバンドの持つ禍々しさが渦まくドゥーミーなナンバー③「塗り壁」⑤「八咫烏」も収録されているし、黒猫の独唱による美麗バラード⑥「歪む月」、招鬼のデスヴォイス~黒猫による澄んだ歌声~瞬火が歌う勇壮なクサメロへと展開するミドル⑦「帝図魔魁譚」、9分に渡るダークなプログレ⑨「奇子」、彼らのライブには欠かせないお祭りソング⑩「がいながてや」など、とにかく楽曲の個性が強く濃厚なのが特徴です。

次回作でメジャーデビューを果たして以降、どんどん垢抜けて洗練された陰陽座も好きですが、本作の頃と比べると「あっさりしてる」とも感じます。「妖怪」という言葉から連想するおどろおどろしい空気とメタルサウンドのバランスの良さでは本作が随一だし、リピートする内にどんどんはまっていく中毒性という面でも3rd以降の作品に引けを取らない名盤です。リーダー瞬火が生み出すそんな独特の世界観と作曲能力の高さもさることながら、このバンドの最大の強みは黒猫の歌唱力でしょう。時には力強く、時には清らかに、曲によってはダーティーに、更には演歌調のこぶしの効いた歌い回しから語りまでこなす彼女の器用さと表現力の豊かさには驚きです。メンバーのルックスや、「妖怪ヘヴィメタル」という言葉を聞いて敬遠してしまうにはあまりに勿体ないバンドですね。

【音源紹介】
・桜花ノ理(Live)