SYMPHONY X「TWILIGHT IN OLYMPUS」(1998)

  • 2017/03/18(土) 00:00:00

TWILIGHT IN OLYMPUS
【No.489】
★★★(1998)

3rd「THE DIVINE WINGS OF TRAGEDY」(1996)が過去のアルバムを凌駕する出来だったこともあり、それまでの日本に加えてヨーロッパでも人気に火がつきはじめたSYMPHONY Xが放つ4作目。ギターサウンドがグッとヘヴィになってファンを驚かせた前作よりも初期2作品で濃かったネオクラシカルテイストが前に出ているため、本作が2nd「THE DAMNATION GAME」(1995)の次のアルバムと言われてもシックリくる作風です。これまで不動だった演奏陣にメンバーチェンジがありドラマーのJason Rulloがレコーディング前に脱退、後任にTom Walling(Ds)を迎えていますが次回作「V: THE NEW MYTHOLOGY SUITE」(2000) ではJasonが復帰しています。

毎回思うのですが、このバンドはアルバムの掴みがいつも強力ですね。今回もネオクラシカルなフレーズが乱舞する疾走曲①Smoke And Mirrors、SYMPHONY Xにしては珍しく一緒に歌えそうなサビと「ヘイ!ヘイ!」という掛け声をフィーチュアした②Church Of The Machineから間髪入れずにベートーヴェンのピアノソナタ「悲愴」をモチーフにしたインスト小品③Sonataを挟み、④In The Dragon's Denで再びパワフルに疾走する流れに引き込まれました。今回のアルバムは全8曲と収録曲が少ないのですが後半も「鏡の国のアリス」を題材にした13分の大作⑤Through The Look Glass (PartⅠ,Ⅱ,Ⅲ)に始まり、やや薄味ながらも疾走感が心地よい⑥The Relic、メロディが捻くれているため即効性はないもののMichael Romeo(G)Michael Pinnella(Key)による圧巻のソロバトルが楽しめる⑦Orion - The Hunter、和音階を取り入れた叙情バラード⑧Lady Of The Snowなど魅力的なナンバー並びます。

Candlelight Fantasia、Out Of The Ashesというバンドの「静」と「動」それぞれの魅力を凝縮した名曲を収録した3rdに比べると小粒な感は否めませんが、今回もネオクラシカルのマスターピース①を筆頭になかなかの力作に仕上がっています。また②の「バ〜ゥ ダ〜ゥ♪」という歌い出し(サビから曲がスタートするのはこのバンドで初めてかも)や⑥のサビメロなど一度聴いただけで口ずさんでしまいそうなメロディがあるのも本作の特徴でしょうか。当時のSYMPHONY Xはライヴを行っておらず事実上スタジオバンドだったことを差し引いても1994年にデビューして以降、ほぼ毎年フルアルバムを作り上げる彼等の創作意欲には頭が下がりますね。なおバンドは1998年6月に初来日公演(SYMPHONY Xとして初のライヴだったとか)を行い、その後ワールドツアーを敢行するなどライヴ活動が本格化していくため次作からはアルバム発表の間隔は2年毎、4年毎と長くなっていくこととなります。

【音源紹介】
Smoke And Mirrors

SYMPHONY X「THE DIVINE WINGS OF TRAGEDY」(1996)

  • 2017/03/02(木) 00:00:00

THE DIVINE WINGS OF TRAGEDY
【No.488】
★★★★(1996)

圧倒的な演奏テクニックとアメリカのバンドらしからぬ叙情メロディで、日本のパワーメタルファンの心を掴んだSYMPHONY Xの3作目。このアルバムはバンド初期の代表作であり、2017年現在でもSYMPHONY Xの最高傑作に挙げられることも多い1枚です。過去の作品に比べるとギターが骨太になりヘヴィでモダンなサウンドを導入している点に変化が見られるものの、肝心のメロディは疎かになるどころか更に磨きがかかっていますね。従来のネオクラテイストは減退し、本作以降も程度の差こそあれどその傾向は維持されているため本作でSYMPHONY Xサウンドが確立されたと言えるかもしれません。複雑になりがちな彼等の作品群の中では比較的わかりやすいメロディが多いので僕にとってもお気に入り盤となっています。

本作はなんと言ってもアルバム序盤の流れが圧巻です。過去2作品とは明らかに異なるヘヴィネスに驚かされるものの楽曲の根幹はSYMPHONY X節全開な①Of Sins And Shadows、このバンド特有のミステリアスな雰囲気の中で炸裂するMichael Romeo(G)の滑らかなギターソロとそれに対抗するMichael Pinnella(Key)、そこにThomas Miller(B)のテクニカルプレイも加えた②Sea Of Lies、怒涛の勢いと哀愁のメロディが高次元で融合したSYMPHONY Xの最速チューンにして本作のハイライト③Out Of The Ashesの3曲はどれもがキラーチューンと呼べるほどの素晴らしさ。そんな疾走系3連発の後を受け継ぐ④The Accoladeは10分近くある長尺曲で、ここでは一転してバンドのプログレメタルの側面を強調していて聴き応え満点です。この一連の流れは前作「THE DAMNATION GAME」(1995)のThe Damnation Game、Dressed To KillからThe Edge Of Foreverへ繋がる展開を彷彿とさせますが、更にグレードアップしていてバンドの成長を感じさせてくれます。

また本作はラストを⑨Candlelight Fantasiaという超名曲で締めくくっているのも大きなポイント。この曲で聴ける「悲哀のメロディの極致」と呼ぶべき美旋律が堪りません。個人的には③と⑨の2曲を聴くためだけに本作を買う価値があると思いますね。そして7部構成20分越えの超大作⑧The Divine Wings Of Tragedyも存在感抜群。各パートの繋ぎ方が強引だったり、率直に言って長すぎると感じたりするのも事実ですがSYMPHONY Xの凄みを見せつけてくれています。これらの曲のインパクトが大きいために、ヨーロッパ民謡風フレーズを散りばめたネオクラ疾走曲⑦The Witching Hourなどは単体で聴けば十分魅力的なのですが、本作の中では影が薄くなっていますね。一方で捻くれた歌メロが怪しげな雰囲気を醸し出す⑤Pharaohは聴けば聴くほどクセになるナンバーです。楽曲の充実度が過去最高なのに加えて、バンドのウィークポイントだった音質面も改善されているのも好印象。SYMPHONY Xをこれから聴くという方には、まず本作をオススメしたいですね。

【音源紹介】
Candlelight Fantasia

SYMPHONY X「THE DAMNATION GAME」(1995)

  • 2017/02/22(水) 00:00:00

THE DAMNATION GAME
【No.487】
★★★(1995)

Michael Romeo(G)率いるSYMPHONY Xがバンドの声と呼べる看板シンガーRussell Allenを迎え、デビュー作「SYMPHONY X」(1994)から僅か9ヶ月という短いインターバルで発表した2ndアルバム。僕が初めてこのバンドの音に触れた1枚でもあります。音楽性は前作と同じくネオクラシカル風サウンドを盛り込んだプログレメタルながら、クオリティは大幅にアップしていますね。その功労者はやはりRussellでしょう。今ではマフィアのボスのような風貌でドスの効いた歌声を響かせてリスナーを圧倒するスタイルを持ち味としている彼ですが、本作では比較的クリーンに歌っている場面が多いですね。剛柔どちらでも表現力豊かに歌い上げられるRussellがバンドに加わったことでSYMPHONY Xのラインナップは完成したと言えると思います。バンドは本作以降リズム隊に若干のメンバーチェンジがあったもののMichael Romeo、Russell AllenそしてMichael Pinnella(Key)の3人は不動で2017年現在まで活動しています。

楽曲面でもスケールアップを遂げていて、イントロ数秒で聴き手の心をガッチリ掴む疾走曲①The Damnation Game、怪しげなムードの中で緊迫感溢れるサビメロが冴え渡る②Dressed To Killの畳み掛けが実に強力!そんなオープニング2曲に続く③The Edge Of Foreverはドラマティックな長編曲で、バラード風に始まり終盤へ向かうに連れて盛り上がっていく展開が秀逸です。中でも3分15秒辺りのピアノソロが凄く印象的で、僕としてはテクニカルなギターソロ以上にこういうパートを聴くと「SYMPHONY Xだなぁ」と感じます(少数意見かもしれませんが)。また⑤Whispersは優しくも儚いメロディが至福のひとときを与えてくれる逸品。こういう楽曲はバンド初期ならではの特徴だと思いますね。

YNGWIE MALMSTEENHELLOWEENでHR/HMに目覚めたメタラー1年生(1995年当時)の僕にとって本作の①と②はあまりに衝撃的でした。幸か不幸かこの2曲がこのバンドとの出会いだったため、本作の後半や彼等の他のアルバムを聴く時にハードルが上がってしまい、結果として「SYMPHONY Xは好きな曲とそうでない曲の落差が激しいバンド」というイメージが僕の中で定着してしまった感があります(苦笑)。率直に言うと、もっとわかりやすいメロディが欲しいんですよね…。とはいえデビュー作と比べるとボーカル交代は成功だったと思うし、まだ物足りなさは残るものの音質も向上しているので順当な成長作と言えるでしょう。ちなみに今回ブログ記事を書くために聴き直すまで、本作の後半に収録された曲は印象に残っていなかったのですが最近になってラストを飾る⑧A Winter's Dream - Prelude(Part I)、⑨A Winter's Dream - The Ascension(Part II)の2部作がジワジワと好きになってきました。

【音源紹介】
Dressed To Kill

SYMPHONY X「SYMPHONY X」(1994)

  • 2017/02/14(火) 00:00:00

SYMPHONY X
【No.486】
★★(1996)

今や押しも押されぬネオクラシカル系プログレメタルバンドの重鎮としてその名を馳せるSYMPHONY Xが1994年にリリースした1stアルバム。デビュー当時はグランジ/オルタナティヴ全盛期ということもあって母国アメリカやヨーロッパでは全くと言っていいほど話題にならず、ゼロ・コーポレーションが彼等を発掘して日本でのみリリースされた作品のようです。このアルバムの時点でダークかつミステリアスなSYMPHONY Xサウンドは既に確立されているものの、僕は2nd「THE DAMNATION GAME」(1995)でこのバンドを知り、後追いで本作を聴いたため物足りなさを感じる点も少なくありません。その最たる例が本作でフロントマンを務めていたRod Tyler(Vo)のボーカルで、独特の味があるヘタウマ系と感じる場面もなくはないですが、次作から加入する実力派Russell Allen(Vo)に比べると不安定さが目立ってしまいますね…。

そんな弱点があるのは事実ながら僕の琴線に触れる楽曲も聴くことができます。特に④Masqueradeはゼロ・コーポレーションが所属アーティストの曲をテーマ毎に集めたコンピレーション盤「煌 CRYSTAL」(1996)に収録されているほか、バンド自身も1998年にリメイクしたバージョンをベストアルバムの1曲目、6th「THE ODYSSEY」(2002)のボーナストラックに再録している初期の代表曲です。それ以外にも「トゥナ〜イ♪」のコーラスが耳に残る②The Raging Season、骨太なサウンドに変化した今では聴けそうにないメロウなバラード⑥Shades Of Grey、キャッチーなサビメロを持った⑧Rapture Or Pain辺りは結構好きですね。コーラスワークにQUEENっぽさが感じられるのも本作ならではの特徴でしょうか。

DREAM THEATERに通じるプログレッシブメタルにYNGWIE MALMSTEENを彷彿とさせるネオクラシカルテイストを融合させたものがSYMPHONY Xの根幹部だと思っているのですが、その中でも本作はネオクラ要素が強い作風となっています。リーダーでもあるMichael Romeo(G)の流麗なギタープレイは同時期の本家YNGWIE以上に聴き応えがありますね。SYMPHONY Xは作品を重ねる度に複雑でプログレ色が濃くなっているので、このバンドの中では比較的聴きやすい1枚だと思います。本作はボーカルと音質(特にドラム)に難はあるものの、ダイヤの原石のような輝きも見せてくれる作品なので現メンバーでリメイクすると面白いかもしれませんね。

【音源紹介】
Masquerade

【CD購入録】SONIC STATION「NEXT STOP」(2015)

  • 2017/01/27(金) 00:00:00

【CD購入録】
NEXT STATION
SONIC STATION「NEXT STOP」(2015)

スウェーデン出身のギタリスト/ソングライターAlexander Kronbrink率いるAORプロジェクトSONIC STATIONの2作目を買いました。セルフタイトルのデビュー作では4人のシンガーが歌っていたそうですが、今回は前作に続いての参加となる女性ボーカルMarika Willstedtが3曲、彼女の紹介で初参加となった男性シンガーJohan Bodingが8曲で歌う体制となっています。都会的なAORといった感じのSONIC STATIONサウンドを聴いて最初に連想したのはRobert Sall(G)擁するWORK OF ARTですね。アルバムの幕開けに持ってこいの爽快チューン①Ameliaからして強力で「女性の名前をタイトルにしたAORソングにハズレなし」という法則が見事に当てはまっています。それ以外にも心温まるメロディが秀逸な⑧Broken Man、Marikaの力強い歌声が映えるドラマティックバラード⑪Hide And Seekを筆頭に、HR/HMとして聴くにはソフトすぎるきらいはあるものの、とことんメロディアスな楽曲がズラリと並びます(意外と自己主張の強いギターパートもグッド)。AlexanderにはSONIC STATIONを今後も継続してもらいたいですね。

【CD購入録】SPIRITUAL BEGGARS「SUNRISE TO SUNDOWN」(2016)

  • 2016/10/05(水) 00:00:00

【CD購入録】
SUNRISE TO SUNDOWN
SPIRITUAL BEGGARS「SUNRISE TO SUNDOWN」(2016)

LOUD PARK16に所謂「アモット枠」で出演するのでは、という大方の予想に反して単独来日公演を10月に行うことが発表されたSPIRITUAL BEGGARSの9作目を買いました。3代目シンガーのApollo Papathanasioが加入して3枚目のアルバムとなります。前任のJB(Vo/GRAND MAGUS)が在籍している頃は大好きなバンドだったのですが、現体制になってからは今ひとつのめり込めずにいました。あまり期待せずに本作を聴いたこともあってか第一印象としては好感触。勢いのあるハードロック①What Doesn't Kill You、キャッチーなギターメロディが曲を引っ張る②Sunrise To SundownPer Wiberg(Key)のハモンドサウンドが存在感を発揮している③Diamond Under PressureLudwig Witt(Ds)が作詞作曲した④Hard Roadと続く序盤は特に良い感じですね。後半に進むにつれてトーンダウンしているように思うし、ボーナストラックにカバー2曲とライヴ5曲を収録というのは流石に多すぎて間延びしてしまっているのが残念ですが…。iPodに本編11曲とカバーソングだけを取り込んでリピートしています。

【CD購入録】SUNBURST「FRAGMENTS OF CREATION」(2016)

  • 2016/04/18(月) 00:00:00

【CD購入録】
FRAGMENTS OF CREATION
SUNBURST「FRAGMENTS OF CREATION」(2016)

ギリシャから彗星の如く現れたプログレッシブ・パワーメタルバンドSUNBURSTの1stアルバムを買いました。僕はこのバンドのことを全く知らなかったのですがBURRN!誌上で藤木さんがプッシュされている記事を読み、YouTubeで試聴してすぐさま購入を決めました。中心人物のGus Drax(G)は新世代のギターヒーローとして注目されているようですね。本作はそんなGusが敬愛するDREAM THEATER(初期)、SYMPHONY X、CONCEPTION、NEVERMOREといった先達からの影響の下にあるサウンドで個人的にはビルドアップされたKAMELOTという印象が強いです。実際、シンガーのVasilis GeorgiouRoy Khan(Vo)の後任を探していたKAMELOTのオーディションを受けたこともあるそうで(Gus談)、ウェットかつ表現力に溢れた彼がTommy Karevik(Vo/SEVENTH WONDER)の代わりにKAMELOTに加入していても違和感なかったのではと思うほど。こうしてボーカルとギターに実力者が揃っているバンドはやはり強いですね。ズバ抜けたキラーチューンこそないものの全体的にクオリティは高く、ザクザクと刻まれるリフと哀愁を帯びたサビが印象的な①Out Of The Worldを皮切りにバラード⑤Lullabyやギターインスト⑦Beyond The Darkest Sun、12分に及ぶ長編曲⑩Remedy Of My Heartなど楽曲のバリエーションもあって聴き応えは十分。2016年のブライテストホープ有力候補が登場しましたね。

【CD購入録】SVEN LARSSON「SUNLIGHT AND SHADOW」(2010)

  • 2015/12/25(金) 00:00:00

【CD購入録】
SUNLIGHT AND SHADOW
SVEN LARSSON「SUNLIGHT AND SHADOW」(2010)

北欧メロディックロック界の隠れた名バンドSTREET TALKに2nd「TRANSITION」(2000)から加入してセンス溢れるギターを聴かせてくれているSven Larsson(G)の1stソロアルバムを買いました。音楽性はジャケットから連想できる通りの爽やかなAOR系ですね。楽曲的にはSTREET TALK以上にソフトですが、ソロアルバムということもあってギターのフィーチュア度合いはこちらの方が上だしインストも2曲収録しています。STREET TALKで彼のギターに魅了された身としてはそれだけである程度満足ですね。全体的に爽やか過ぎてHR/HMファンにとっては引っ掛かりに欠ける面は否定できないものの、心地よいサウンドなので何度もリピートしています。お気に入りチューンの⑧It's OverまではAORの王道、それ以降は若干ハードさが増しています。ちなみに本作ではSvenがリードボーカルも担当しているのですが予想以上に上手いですね。

STREET TALK「V」(2006)

  • 2015/12/22(火) 00:00:00

V.jpg
【No.457】
★★★★(2006)
年間ベスト2006年第5位

Mr.北欧ボイスGoran Edman(Vo/ex-YNGWIE MALMSTEEN etc)を擁するスウェーデン産メロディック・ロックバンドSTREET TALKの4thフルレンスアルバム。タイトルが「V(ファイヴ)」となっているのは国内盤未発のベスト盤「DESTINATION」(2003)を含めると5枚目の作品にあたるからだそうです。Steve Perry(Vo/ex-JOURNEY)が1984年に発表したソロ作品のタイトルをバンド名にしていることから予想がつく通り、メロディックロックの王道をゆくサウンドですがハードな面は控えめで柔和なAORに近い印象を受けます。彼等のことはデビュー作「COLLABORATION」(1997)の時から知っていて好きなタイプのバンドだと思いつつも、本作以上にソフトな作風だったのでそれ以降は聴いていませんでした。今回は前評判が高かったので軽い気持ちでチェックしてみると、これが予想以上の名盤でビックリ。

メインソングライターFredrik Bergh(Key)が生み出す楽曲群が実に素晴らしいんですよね。瑞々しくも優しい雰囲気と爽快感を持ちつつ、北欧ならではの強烈な泣きというよりは仄かな哀愁漂う旋律が胸に沁みます。オープニングには持ってこいの軽快なサウンドが気持ちいい①Responsible、飛翔感のある必殺のサビ(イ ファイクゥ〜♪)がインパクト抜群の③If I Could、爽快度満点のメロハー⑤Family Business、本作の中で最もスピーディーな⑨Sniperといったロックチューンを聴いていると胸が躍るし中でも③が大好きですね。それとは対照的なバラード系ではAOR風のお洒落な雰囲気を持った④At The End Of The Day、心温まる珠玉のメロディとアレンジが素晴らしい⑧Groundhog Dayが秀逸。また本作のボーナストラックが前述のベストアルバム「DESTINATION」にのみ収録されていた⑫Astray、⑬Made For Paradiseの2曲だというのも嬉しいですね(勿論これらもSTREET TALKらしい高品質ナンバー)。

そんな優れた楽曲の数々を歌うGoranの歌唱も絶品。TIME REQUIEM「OPTICAL ILLUSION」(2006)でメタルを歌うには線が細いという弱点を露呈していたGoranもSTREET TALKのようなメロディアス路線の楽曲では、その透き通ったハイトーンの魅力を遺憾なく発揮してくれています。高音だけでなく力を抑えて歌うパートも非常に味わい深いです。また見た目はフツーのオジサマながら各曲に華を添えているSven Larsson(G)のギタープレイもSTREET TALKの大きな武器ですね。彼の見せ場となっているのは⑤の終盤と⑥Just A Little Appetizer冒頭のギターソロでしょうか。珠玉のメロディとその魅力を最大限に活かせる歌唱、充実のギタープレイが詰まった本作はこれまでに聴いたメロディック・ロックアルバムの中でも指折りの傑作です。ところが、これだけの名盤を生み出しておきながらFredrikは本作をリリースした2006年に立ち上げた正統派メタルバンドBLOODBOUNDへ活動の軸を移し、そちらでは2014年までに6枚ものアルバムを発表しているのに対してSTREET TALK名義では本作が最後のアルバムとなっています。BLOODBOUNDも悪くないのですが、僕はやはりSTREET TALKの新作が聴きたいですね。本作のライナーノーツによると2つのバンドを並行活動させていくとFredrikは語っていたそうなので何とか実現してほしいものです…。

【音源紹介】
If I Could

SYSTEM OF A DOWN「HYPNOTIZE」(2005)

  • 2015/09/28(月) 00:00:00

SOAD HYPNOTIZE
【No.446】
★★★★★(2005)
年間ベスト2005年第2位

変態ヘヴィロックバンドSYSTEM OF A DOWNの5thアルバムにして2部作「MEZMERIZE/HYPNOTIZE」の後編。本作の楽曲も「MEZMERIZE」と同時期に制作されたということもあって、前作に収録されていたとしても違和感のないナンバーが並んでいます。「MEZMERIZE」との違いを挙げるとすれば一段と劇的でメロディアスになったという点でしょうか。そんな印象を決定付けているのがアルバムラストに収録された⑪Lonely Days、⑫Soldier Sideの2曲。前者はSYSTEM OF A DOWN史上最もソフトなバラード、後者は悲哀を通り越して悲痛とさえ表現できそうなメロディを持った壮大なナンバーです。特に⑫はタイトルにもある通り「MEZMERIZE」の1曲目で今回の2部作のオープニングでもあるSoldier Side‐Introと共通のフレーズも登場し、大きな感動をもたらしてくれます。

メロディアスな側面が強調された作風とはいえ怒涛のアグレッションや強烈な歌詞、予測不能な曲展開など前作で僕を魅了してくれたSYSTEM OF A DOWNらしさは今回も健在です。曲名そのままに剥き出しの攻撃性で襲いかかってくる①Attack、激しいイントロからの落差が激しいメロウなサビへ繋がる②Dreaming、ツインボーカルで掛け合いをしつつこのバンドらしからぬクサメロで疾走する③Kill Rock & Rollの流れは実に強力。続くタイトル曲の④Hypnotizeはアルバムを象徴するかのようなドラマティックチューンでじわじわと胸に迫ってきます。SYSTEM OF A DOWNならではの変態ソングもしっかり存在していて「ビデビデビデビデ…」な⑦U-Fig、「バナナ バナナ バナナ テラコッタ バナナ テラコッタ テラコッタ パイ!」という意味不明なフレーズに思わず笑ってしまう、それでいてクセになる⑨Vicinity Of Obscenityや奇怪なリズムとDaron Malakian(Vo、G)による音を外し気味な歌がラリった感を醸し出している⑩She's Like Heroinなどは狂気を感じ、聴いていて身震いしてしまうほど。

楽曲のハチャメチャ度合いに関しては前作に一歩譲りますが、それはあくまでもSYSTEM OF A DOWNにしてはという話であって本作でも様々な要素が絡み合う何でもありのサウンドが展開されています。それでいてかなりメロディアスなので、このバンドの作品の中でもかなり効きやすい部類に入るのではないでしょうか。曲間を短くすることで、まるでアルバム自体がひとつの曲であるかのようにスムーズに進んでいく本作は単体でも十分楽しめますが、是非とも「MEZMERIZE」と一緒に聴いて独特の世界観に浸りたいですね。「MEZMERIZE/HYPNOTIZE」の2部作はどちらも全米1位に輝き、前作からのシングルカット曲B.Y.O.B.がグラミー賞のベスト・ハードロック・パフォーマンス賞を獲得するなど活動は順調かと思われましたが2006年にバンドは長期活動休止に入ることを発表。Serj Tankian(Vo、Key)はソロ、DaronはSCARS ON BROADWAY名義で音楽活動を続けていくこととなります。2011年からはSYSTEM OF A DOWNとしての活動を再開してライブは行っているようなので、本作の先にあるスタジオ盤にも期待したいですね。

【音源紹介】
Soldier Side

SYSTEM OF A DOWN「MEZMERIZE」(2005)

  • 2015/09/25(金) 00:00:00

MEZMERIZE
【No.445】
★★★★★(2005)
年間ベスト2005年第1位

バンド名を冠したデビュー作を1998年にリリースするや100万枚以上のセールスを記録、その後OZZFESTへの出演を果たすなどへヴィロックシーンで注目を集めるロサンゼルス出身の4人組バンドSYSTEM OF A DOWNの4作目。「STEEL THIS ALBUM!」(2002)を3rdアルバムと見なすか、アウトテイク集と見なすか意見が分かれているようですが当ブログでは前者の立場をとっています。メンバー全員がアルメニア系移民ということもあってか社会的、政治的なメッセージが込められた歌詞が多く中心人物のSerj Tankian(Vo、Key)は政治団体を立ち上げるなどしているようです。このバンドに関しては2nd「TOXICITY」(2001)が世間的に評価が高かったので名前だけは知っていましたが、メロディアスなHR/HMを好む僕には合わないというイメージが強く実際に聴くことはありませんでした。旅先(たしかバリ島)でたまたま安く売られているのを見つけ、この金額なら失敗してもいいかなと思ったのが本作を購入したきっかけです。

そんな軽い気持ちで手に取った本作ですが、結果的には2005年に聴いた新譜の中で最も重要なアルバムとなりました。陰鬱なイントロ①Soldier Side‐Introに導かれて始まる②B.Y.O.Bの激しく刻むリフをかき消すような「Why do they always send the poor!(どうして戦場に送られるのはいつも貧しい者たちなんだ!)」の絶叫が炸裂した瞬間からSYSTEM OF A DOWNワールドが全開。ゆったりしたパートから突如爆走するこの曲はアルバム中最もメタリックなナンバーで、一筋縄ではいかない曲構成と先の読めない展開に引き込まれます。それ以降も柔/剛、シリアス/コミカルといった相反する要素が絡み合う唯一無二の楽曲群は中毒性が高く、一度ハマると抜け出せません。中でも「エビバデエビバデ…」と早口でまくしたてる⑦Violent Pornographyが異彩を放っていますね。奇想天外で曲作りのセオリーを無視したかのような独創性を持ちながら、魅力的な楽曲として成立してしまうことができるのがSYSTEM OF A DOWNの凄いところです。大半の曲を手掛けるDaron Malakian(Vo、G)の頭の中がどうなっているんでしょうね…。また曲順についても、これしか考えられないほどハマっていて作品としての完成度も申し分ありません。11曲で35分弱という収録時間の短さもあって気がつけば何度もリピートしています。

ハチャメチャなのに整合性があり、狂気に満ちていていながらもキャッチーな本作を一言で表現するとすれば「常人ではたどり着けない変態ヘヴィロック」という感じでしょうか。情感のこもった声で歌い上げたかと思えば素っ頓狂なシャウトを決めるなど変幻自在のパフォーマンスを見せるSerj、そこにやや調子外れながらも味のあるDaronの歌が絡むボーカルパートもSYSTEM OF A DOWNの大きな特徴ですね。ちなみにこのアルバムは2部作「MEZMERIZE/HYPNOTIZE」の1枚目で、バンドは本作リリースの約半年後に続編の「HYPNOTIZE」を発表しています。本作を聴いてすっかりこのバンドに魅了された僕は次作のみならず、過去作品も購入。「HYPNOTIZE」は本作同様、大のお気に入り盤となった一方1st〜3rdはあまり好きになれませんでしたが…。

【音源紹介】
B.Y.O.B

SPIRITUAL BEGGARS「DEMONS」(2005)

  • 2015/09/19(土) 00:00:00

S BEGGARS DEMONS
【No.444】
★★★★(2005)
年間ベスト2005年第3位

現代HR/HMシーンにおける最重要人物のひとりMichael Amott(G/ARCH ENEMY)ARCH ENEMYで追求しているメロデスとは異なる音楽性でその才能を発揮するSPIRITUAL BEGGARSの6thアルバム。4th「AD ASTRA」(2000)リリース後のフロントマン交代劇には驚きましたが、またもメンバーチェンジがありRoger Nilsson(B/THE QUILL)が脱退、後任にARCH ENEMYファミリーでもあるSharlee D'Angelo(B)を迎えています。前作「ON FIRE」(2002)で確立したオールドスタイルのロックサウンドにMichael Amottの泣きのギターが乗るというスタイルはそのままに、ややマイルドな印象もあった5thに比べるとメタリックな質感が強調されているように感じますね。

序曲の①Inner Strength(Intro)に続いて②Throwing Your Life Away、③Salt In Your Woundsとノリのいい曲が並ぶため前作よりも即効性は高いし、キャッチーかつグルーヴィなリフが絶大なインパクトを誇る④One Man Armyへと至るアルバム序盤の流れは流石です。印象的なリフワークという点でいえば⑪Elusiveも素晴らしいし、このバンドのレパートリーで最も聴きやすい部類に入りそうなドライヴィングチューン⑥Treading Waterも秀逸。そんな楽曲群の充実振りもさることながら前作から加入したJB(Vo)のボーカルパフォーマンスは目を見張るものがありますね。⑤Through The Halls、⑬No One HeardではDavid Coverdale(Vo/WHITESNAKE)を彷彿とさせるディープな歌声を披露、そうかと思えば曲によってはブルータルなボーカルで攻めてくる幅広いスタイルを持つ彼は紛れもなく逸材でしょう。

バンドの中心人物がMichaelであることは間違いないのですが前述のJBは勿論、今やSPIRITUAL BEGGARSに欠かせないオルガンサウンドで楽曲を彩るPer Wiberg(Key)そしてLudwig Witt(Dr)とSharleeのリズム隊など各パートにタレントが揃っているのもこのバンドの強みですね。Michaelは2005年にARCH ENEMY名義でも「DOOMSDAY MACHINE」というアルバムを発表していますが、当時はSPIRITUAL BEGGARSの方が好きでした。また本作の初回限定盤には渋谷AXでのライブ音源8曲が収録されたボーナスCDが付属しています。8曲中2曲がカバーソング、1曲はギターソロであること、そもそも収録時間が30分弱と短いことから食い足りなさを感じますがJBがライブでも優れたシンガーであることが確認できます(MCで話す時の声も渋い!)。残念ながらJBは自身のバンドGRAND MAGUSの活動に専念するため、本作を最後にSPIRITUAL BEGGARSを離れてしまうこととなります…。

【音源紹介】
・One Man Army

【CD購入録】SOILWORK「THE RIDE MAJESTIC」(2015)

  • 2015/09/16(水) 00:00:00

【CD購入録】
THE RIDE MAJESTIC
SOILWORK「THE RIDE MAJESTIC」(2015)

メンバーチェンジを繰り返しながらもバンドとして成長を続けるメロデス/エクストリームメタル界の重鎮SOILWORKの10作目を買いました。現代ヘヴィメタルのひとつの型となった感すらあるグロウルとクリーンボイスを駆使したSOILWORKサウンドはそのままに、今回はクリーンパートの歌メロが更に強調されています。この辺りはBjorn“Speed”Strid(Vo)David Andersson(G)が在籍し、Bjornがノーマルボイスで歌うTHE NIGHT FLIGHT ORCHESTRAでの活動が活かされているのかもしれませんね。先行で公開されていた①The Ride Majesticが好感触だったので購入したのですが、アルバムのハイライトはその①と⑦The Ride Majestic(Aspire Angelic)でしょうか。バンドの最高傑作かどうかはさておき十分楽しめる作品だと思います。

SPIRITUAL BEGGARS「ON FIRE」(2002)

  • 2015/09/13(日) 00:00:00

ON FIRE
【No.443】
★★★★(2002)

メンバー間の不和からSpice(Vo、B)が脱退、後任にJBことJanne Christoffersson(Vo/GRAND MAGUS)Roger Nilsson(B/THE QUILL)を迎えて5人編成となったSPIRITUAL BEGGARSの5thアルバム。Spiceは抜群に上手いというわけではなかったものの、適度にラフな荒くれ歌唱がアンダーグラウンド臭と妖気漂うSPIRITUAL BEGGARSにマッチしていたのでシンガー交代がどんな影響をもたらすのか不安もありました。いざ聴いてみると、このJBという歌い手が予想以上の実力者でビックリ。前任者に負けず劣らずの力強さに加えてソウルフルな低音が胸に響くJBの歌声にすっかり魅了され、彼のメインバンドGRAND MAGUSの作品をチェックするようになったほどです。中でも4th「IRON WILL」(2008)はお気に入り盤となっています。

本作に話を戻すと4th「AD ASTRA」(2000)が感性に直接訴えかけてくる理屈抜きでカッコいいサウンドだったのに対して、今回は整合感が増して小奇麗にまとまっているように感じられます。バンドとしての成長が窺える一方、前作にあった魅力が削がれているようにも思えて最初のうちはあまり好きになれませんでした。本作の魅力がわかるようになってきたのはアルバムを買って1〜2年が経過した後でしょうか。アップテンポの曲が少なく、前作収録のSedatedや3rd「MANTRA Ⅲ」(1998)のEuphoria級のキラーチューンがないため、即効性には欠けますが本作が醸し出す渋さとカッコよさを併せ持ったサウンドは正に大人のハードロック。聴き始めの頃は各曲が小粒だと感じていましたが飛び抜けたナンバーがないのではなく、ハイライトになり得る楽曲が並んだ1枚だと今では思っています。

「ドンテイキ フォ グラァンテェ〜♪」と歌うキャッチーなサビを持った①Street Fighting Savioursからして過去作品になかったメジャー感が備わっているし、JBのディープボイスに惚れ惚れしてしまう④Fools Goldなどもこれまでにない魅力ですね。また本作はアルバム構成もよく練られていて圧倒的な重量感で迫ってくる⑤Black Feathers、それとは対照的に小気味よく刻まれるギターリフに自然と身体が揺れてくる⑥Beneath The Skin、静かなインスト小品⑦Fejee Mermaidから⑧Dance Of The Dragon Kingに至る一連の流れは秀逸。そして終盤の見せ場となっている⑨Tall Tales、⑩The Lunatic Fringe、⑪Look Backの畳み掛けも実に強力です。特に泣きメロ職人Michael Amott(G/ARCH ENEMY)らしいエモーショナルなギターソロが楽しめる⑪は素晴らしいの一言。本来苦手なヘヴィでスローな曲でも、このバンドだと不思議と楽しめるんですよね。70年代のロックバンドに造詣がある人にとってはアルバムに散りばめられたオマージュを楽しむこともできる作品のようですが、それらのバンドをよく知らない僕にとってはかえって新鮮でした。「IRON WILL」同様、聴き込むほどに味わいが増す「これぞスルメ盤」と言うべきアルバムですね。

【音源紹介】
Look Back

【CD購入録】STRATOVARIUS「ETERNAL」(2015)

  • 2015/09/10(木) 00:00:00


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STRATOVARIUS「ETERNAL」(2015)

僕の中でHELLOWEENと並ぶメロディックパワーメタル界の重鎮となっているSTRATOVARIUSの15作目を買いました。HELLOWEENよりも遅い1989年にデビュー、2004年〜2006年にかけては解散騒動があったりした彼等ですがアルバム枚数では既に追いついていて順調な活動振りが窺えます。オープニングの①My Eternal Dreamがそうだからかもしれませんが、今回はネオクラ系パワーメタル色が戻ってきているように感じますね。この点についてはソングライティングにJani Liimatainen(G/CAIN'S OFFERING、ex-SONATA ARCTICA)が参加していることも関係しているのかもしれません。第一印象としては前作「NEMESIS」(2013)収録のHalcyon Days級のキラーチューンこそないものの、STRATOVARIUSらしいサウンドが堪能できる1枚だと思います。ちなみに本作は10曲入りの通常盤に加えて⑥Endless Forest、⑦Giantsのボーナストラック2曲を追加したSHM-CDとLOUD PARK13の模様を収録したDVD2枚組限定盤があり、僕は迷った末に限定盤を買いました。家でライブDVDを見ることはほとんどないのですが、今のSTRATOVARIUSの曲はひとつでも多く聴きたいというのが限定盤を選んだ理由です。ボートラに関しては静かでメルヘンチックなインスト⑥、キャッチーな歌メロが耳を捕らえる⑦という感じで特に後者が気に入っています。ライブDVDは家族が寝静まった後にでも見ようかな。

SPIRITUAL BEGGARS「MANTRA Ⅲ」(1998)

  • 2015/08/29(土) 00:00:00

MANTRA Ⅲ
【No.442】
★★★(2001)

Michael Amott(G/ARCH ENEMY、ex-CARCASS)がリーダーを務めるトリオ編成のハードロックバンドSPIRITUAL BEGGARSの3作目。僕は次作4th「AD ASTRA」(2000)を聴いてバンドのファンになり後追いでこのアルバムを聴きましたが、こちらも毒々しくサイケデリックな荒くれハードロックというSPIRITUAL BEGGARSならではの魅力に溢れた良作でBLACK SABBATH、DEEP PURPLEといった70年代の有名バンドからの影響を感じられると評されることの多いアルバムでもあります。正直なところ、僕はその時代のロックバンドを聴いてもあまりピンと来ないのですが、本作はレトロなサウンドでありながら古臭さを感じさせないし、当時のバンドを改めて聴きたいと思わせるだけの魅力を備えていますね。再トライの結果、70年代のバンドにのめり込むことはありませんでしたが…(苦笑)。

「AD ASTRA」以上にドゥーミーな空気に満ちているものの、重たいだけで終っていない辺りは流石。それを象徴するのがヘヴィなイントロから幻想的なオルガンサウンドに導かれて極上のサビへと繋がる③Euphoriaで、この曲は間違いなく本作のハイライトですね。そこから一転してファンキーな④Broken Morningもカッコいいし、タイトル通りのボッサな曲調に驚かされるインスト⑥Superbossanovaまでこなしてしまうバンドの懐の深さと、アルバム中盤にこの曲を配するセンスに脱帽です(2000年に再発されたリマスター盤では1曲目になっているようですが)。それ以降も終盤にスローダウンする展開にグッとくる⑦Bad Karma、Michaelらしい泣きのギターが炸裂する⑧Send Me A Smile、前曲から間髪入れずに始まり勢いで押し切るロックチューン⑨Cosmic Romanceの3連発は強力だし、⑪Sad Queen Boogieも好きな楽曲ですね。

このバンドに関してはドゥーム/ストーナーロックに分類されることが多かったため「音楽はまずメロディありき」と考える僕とは相性が良くないかと思っていました。本作に関しても全曲がストライクというわけではないものの、退廃的なムードと聴き手をねじ伏せる凄みに溢れたSPIRITUAL BEGGARSサウンドはクセになりますね。その中心となっているのがMichael Amottのギターとソングライティングであることは間違いないのですがゲストプレイヤーとして参加しているPer Wiberg(Key/DEATH OTGAN etc)のオルガンサウンドも本作で重要な役割を担っています。どの曲でも大きな存在感を放っているので、次の作品からPerが正式メンバーとして迎えられたのも納得。次作以降SPIRITUAL BEGGARSはアンダーグラウンド臭を薄め、アルバムを重ねる度に洗練性を増していくこととなります。

【音源紹介】
Euphoria

RICHARD ANDERSSON'S SPACE ODYSSEY「TEARS OF THE SUN」(2006)

  • 2015/08/23(日) 00:00:00

TEARS OF THE SUN
【No.441】
★(2007)

ワーカホリックな鍵盤魔人Richard Andersson(Key)が2003年にMagnus Nilsson(G)と立ち上げたSPACE ODYSSEYの3作目。Richardの別バンドTIME REQUIEMの3rd「OPTICAL ILLUSION」(2006)から約9ヶ月という短い間隔でリリースされたということもさることながら、SPACE ODYSSEYとして新作を発表したこと自体が僕にとっては予想外でした。というのも「OPTICAL ILLUSION」にはMagnusが参加していたしTIME REQUIEMの従来サウンドとは一線を画していたので、SPACE ODYSSEYはTIME REQUIEMに吸収される形で自然消滅したと思っていたからです。それに加えてSPACE ODYSSEYの重要なファクターであるNils Patrik Johansson(Vo/ASTRAL DOORS、WUTHERING HEIGHTS)もスケジュールが合わないため不参加、後任にDavid Fremberg(Vo/ANDROMEDA)を迎えたとリリース前から伝わってきていたので期待値は下がっていました。

いざ聴いてみると、本作で展開されているのはRichardがこれまでに追求してきたネオクラシカルメタルの面影が全くないハードロックサウンドでビックリ。Richardによる各曲解説にも「どの曲も楽曲重視のスタイルにして、プログレッシブな要素は排除しようと思った」「今回はボーカルがあまり高い音域で歌わないスローな曲をやってみた」「ギターを前に出してキーボードをちょっと引っ込めている」といった言葉が並び、意図的に今回のような音楽性にシフトしたことが窺えますが肝心のメロディがほとんど印象に残りません…。お気に入りと呼べそうなのは本作では珍しくキーボードソロが聴ける⑤Dark Wings Of Universe、日本盤ボーナスの⑨Jailbareakerといったアップテンポのナンバーくらいでしょうか(これら2曲についても過去の楽曲群と比べると弱いと思いますが)。本作のブックレットでは作詞作曲、プロデュースのクレジットは当然の如くRichard Anderssonとなっているのですが、その下に(In collaboration with Mr. Magnus Nilsson)という表記があります。Magnusが曲作りに関わったことで今回のようなサウンドになってしまったのだとしたら残念ですね。

「OPTICAL ILLUSION」も従来とは異なる路線で驚きましたが、作品単体としてはそれなりに楽しめるアルバムでした。それに対して本作はRichardのアルバムかどうかは別にしても僕の琴線に触れるメロディが極端に少ないのが痛いですね。自身のトレードマークであるネオクラサウンドや速弾きキーボードを封印してまでこの路線でやっていく意味が見えないように思います。SPACE ODYSSEY、TIME REQUIEM共に3枚目のアルバムで路線を転換したため今後の活動に一抹の不安を覚えたのですが案の定、両バンドとも4作目をリリースすることはありませんでした(2015年現在)。それどころか、これまで複数のバンドを掛け持ちして1年に1〜2枚のアルバムを発表していたRichard Andersson自身も本作を最後に表舞台から姿を消してしまいます。以前にインタビューで「短期間に沢山のアルバムを出し過ぎではないか?」と聞かれ「自分はプロのミュージシャンで、音楽で家族を養っているから」と答えていた彼がどのようにして生計を立てているのか気になりますね(スタジオ経営などの裏方に徹することにしたのでしょうか?)。長らく動向が掴めなかったRichardですがDEVIL'S HEAVENというグループに在籍して2014年に「HEAVEN ON EARTH」というアルバムを出しているようです。

【音源紹介】
Dark Wings Of Universe

RICHARD ANDERSSON'S SPACE ODYSSEY「THE ASTRAL EPISODE」(2005)

  • 2015/07/29(水) 00:00:00

THE ASTRAL EPISODE
【No.438】
★★★(2005)

TIME REQUIEMでも精力的に活動しているRichard Andersson(Key)率いるSPACE ODYSSEYの2ndアルバム。デビュー当時はTIME REQUIEMにもRICHARD ANDERSSON'Sとつけられていたのが2作目からシンプルにバンド名だけとなっていたのに対して、こちらはRICHARD ANDERSSON'S SPACE ODYSSEY名義のままなのでTIME REQUIEMはバンド、SPACE ODYSSEYはプロジェクトという位置付けなのかもしれません。前作「EMBRACE THE GALAXY」(2003)はTIME REQUIEMの前身バンドMAJESTICに近いコンパクトなネオクラ路線だったのに対し、本作はテクニカルなフレーズとプログレテイストを増強していてTIME REQUIEMの音楽性に近づいた感がありますね。楽曲面におけるTIME REQUIEMとの差別化要因としてはMagnus Nilsson(G)によるギターパートのフィーチュア度が高いという点くらいでしょうか。

Richard Andersson関連の作品では恒例となっているメンバーチェンジは今回もあって、ドラマーにはRichardも惚れ込んだという17歳の新鋭Andreas Brobjer(PLATITUDE)が加入。オープニングの①Through Dreams And Realityからしてその実力を見せつけてくれています。ベースはギタリストのMagnusがデモ段階で弾いたものが楽曲の求める要素を満たしているという理由からMagnusのプレイを採用したそうです。前作に参加していた北欧メタル界のレジェンドMarcel Jacob(B/TALISMAN)に対して「彼が参加したことでアルバムセールスが伸びたわけではない」と言ってしまうRichardの俺様っぷりがなんとも…(苦笑)。そして前作で衝撃のデビューを飾った超絶シンガーNils Patrik Johansson(Vo/ASTRAL DOORS、WUTHERING HEIGHTS)の豪快な歌いっぷりは更に凄みを増していて漲る感情をぶちまけた暑苦しい歌唱法だけでなく、Nilsがクリーンボイスで全編を歌い上げる日本盤ボートラのピアノバラード⑨The Finest Of A Good Kindなどはこれまでにないアプローチで新鮮。また⑧The Seventh Star FantasyではWUTHERING HEIGHTSでも披露していた「1人デュエット」が聴けるのですが、本作ではそのクオリティがアップしていてシンガーとしての成長が窺えます。

楽曲としては過去に引用実績のあるYNGWIE MALMSTEENRising Force風のパートに始まり秀逸なサビメロへ繋がる④Dazzle The Devilが一番のお気に入りです。それ以外でも最近のRichard作品によく登場するSYMPHONY Xタイプの曲調をベースにしつつサビではクサく盛り上がる②Astral Episode、曲名通りのダークな空気が支配的な⑤Back To The Dark、ネオクラエッセンスを凝縮したインスト⑥Presence Of Mind、前作にもあったジャーマンメタル路線⑦Reversationや前述の⑧、⑨など曲のバリエーションもなかなか豊富。聴き始めの頃はTIME REQUIEMとの違いが分かりにくくなったこと、Richardがこれまでにリリースした作品と比べても突出した要素が感じられなかったことなどから、あまり好きになれなかったのですが、リピートするうちに段々と好きになってきたスルメタイプの1枚ですね。

【音源紹介】
Dazzle The Devil

【CD購入録】SYMPHONY X「UNDERWORLD」(2015)

  • 2015/07/23(木) 00:00:00

【CD購入録】
UNDERWORLD.jpg
SYMPHONY X「UNDERWORLD」(2015)

前作「ICONOCLAST」(2011)から約4年振りとなるSYMPHONY Xの9作目を買いました。濃密で攻撃的なサウンドがぎっしり詰まった前作に比べて今回は若干メロディアスになった印象を受けます。それに伴いMichael Pinella(Key)の存在感がアップしているのも嬉しいポイント。相変わらずテクニカルなプレイを連発するMichael Romeo(G)、暑苦しいほどの熱唱で聴き手を圧倒するRussell Allen(Vo)を軸にダークなプログレメタルが展開されていますね。正直なところ、もう少しキャッチーなメロディが欲しいし、この手のジャンルに現れる若手バンドも良いのですが、やはりSYMPHONY Xは別格だと本作を聴いて感じました。余談ですが「ラストダンスは堕天使に」という帯タタキはバンドがかつて所属していたゼロ・コーポレーションに通じるものがありますね(笑)。

RICHARD ANDERSSON'S SPACE ODYSSEY「EMBRACE THE GALAXY」(2003)

  • 2015/06/22(月) 00:00:00

EMBRACE THE GALAXY
【No.434】
★★★(2003)

MAJESTICからTIME REQUIEMへとバンド名は変われど、圧巻の鍵盤捌きと抜群のパクリセンス(笑)でファンを拡大してきた鍵盤魔人Richard Andersson(Key)が新たに立ち上げたRICHARD ANDERSSON'S SPACE ODYSSEYのデビュー作。プログレ指向が強かったTIME REQUIEMに比べて、本作はよりストレートでシンプルなアプローチのネオクラシカルメタルでMAJESTICの頃に立ち戻ったかのような印象です。今回もRichardが作詞作曲、プロデュースなどを取り仕切っていますがRichard曰く彼の旧友Magnus Nilsson(G)とタッグを組んでいること、TIME REQUIEMよりもソフトなサウンドとなっていることがSPACE ODYSSEYの特徴だそうです。確かにRichardがとにかく弾きまくるTIME REQUIEMに比べるとギターの存在感が大きいように思いますね(それでも依然としてキーボード重視ですが…)。

中身の方はというと、もはや安心印のRichard Anderssonミュージックなのですが本作の目玉は無名のパワフルシンガーPatrik Johansson(Vo/ASTRAL DOORS、WUTHERING HEIGHTS)による圧巻のボーカルパフォーマンスでしょう。古くはRonnie James Dio(Vo)、最近ではJorn Lande(Vo/MASTERPLAN)系の熱唱スタイル基本にDavid Coverdale(Vo/WHITESNAKE)のようなディープボイスも操る彼は本作でその名をHR/HMシーンに轟かせることとなります。オープニングトラック①Despair And Painのサビ前で炸裂する「ニョォォ〜!」のシャウトは思わず笑ってしまうほどの暑苦しさですが、ここまで力強く歌えるPatrikは間違いなく逸材ですね。当初はD.C. Cooper(Vo/SILENT FORCE、ex-ROYAL HUNT)を迎える構想があったらしく、いいところまで話が進んでいたそうですが金額面での折り合いがつかず断念したのだとか。ちなみにD.C.は2006年にイタリアのメロパワバンドSTEEL SEALのデビュー作「BY THE POWER OF THUNDER」にゲストボーカルとして全面参加していますが、その理由のひとつに「メロディもやりたいように書ける自由があった」ことを挙げているのでAndre Andersen(Key/ROYAL HUNT)以上の独裁者(と思われる)Richardと組んだとしても合わなかったかもしれませんね。

話が少し逸れましたが隠れた実力派シンガーPatrikに加えてべーシストには初期YNGWIE MALMSTEENを支えた名手Marcel Jacob(B/TALISMAN)、北欧を代表するプログレバンドTHE FLOWER KINGSのドラマーZoltan Csorsz、そのTHE FLOWER KINGSの中心人物でMIDNIGHT SUNなどでも活動していたJonas Reingold(B)がミックスや共同プロデューサーとして関わるなどシーン屈指のプレイヤーが参加しています。楽曲的にも従来のRichard関連作品にはなかった新技ジャーマンメタルテイストを導入した④Entering The Dome、⑥Grand Openingのような高揚感溢れる曲もあってグッド。相変わらず他のバンドからの引用が散見されるので、その点が容認できない方にとっては駄目なサウンドだとは思いますが僕は曲が自分好みなら問題ありません(パクリに気付かないこともしばしばあるので/苦笑)。本作がリリースされた2003年といえばYNGWIE MALMSTEENやSTRATOVARIUSといった大御所が僕の好みから外れ気味だったので、それに取って代わる存在となってくれるのではという期待もありましたね。

【音源紹介】
Entering The Dome

SHAMAN「RITUAL」(2002)

  • 2015/02/13(金) 00:00:00

RITUAL.jpg
【No.418】
★★★(2002)

人間関係のもつれからANGRAを脱退したAndre Matos(Vo)が新たに結成したバンドSHAMANの1stアルバム。Andreと共にANGRAを離れたリズム隊Luis Mariutti(B)、Ricardo Confessori(Ds)、そしてLuisの実弟Hugo Mariutti(G)が脇を固めDerek Sherinian(Key/ex-DREAM THEATER)Tobias Sammet(Vo/EDGUY、AVANTASIA)がゲストとして参加しています。衝撃的な分裂劇を乗り越えてKiko Loureiro(G)、Rafael Bittencourt(G)率いる新生ANGRAがデビュー作「ANGELS CRY」(1993)を彷彿とさせる「REBIRTH」(2001)で文字通り復活したのに対して、SHAMANは民族音楽色が濃くANGRAの2nd「HOLY LAND」(1996)をシンフォニックメタル寄りにした印象を受けますね。

本作を聴いてまず驚いたのがAndreの歌唱法が別人かと思うほどに変化している点です。ANGRA時代と比べると荒れ気味でアグレッシブな歌い方となっていて透明感は失われているものの妙な裏声ハイトーンも激減しているので、これはこれでアリかもしれません。イントロダクションとしては3分とやや長めで壮大な①Ancient Windsに続くメタリックな攻撃性とAndreらしい優雅さを併せ持った疾走曲②Here I Amはインパクト抜群。その後もダイナミックなサビメロに加えてインストパートも充実した③Distant Thunder、南米フォークロア調のイントロから始まるパワーバラード④For Tomorrow、②に比べると薄味ながら軽快に駆け抜けるサウンドが気持ちいい⑤Time Will Come、ダークな出だしからドラマティックに展開していく⑥Over Your Head(キーボードソロはDerekがプレイ)とアルバム中盤まではかなり良い感じです。後半は失速気味ではありますがAndreとTobiasがデュエットしたストレートなメタルチューン⑩Prideでラストを締めくくっているので全体的には好印象。

民族音楽テイストとシンフォニックメタルサウンドが絡み合う演奏パート、そこに個性的なAndreのボーカルが乗ることで確固たるアイデンティティを築いていますね。アルバムの総合力としてはANGRA「REBIRTH」に軍配が上がりますがSHAMANの第1作目としては上々の滑り出しと言えるのではないでしょうか。今回の分裂劇はひとつのバンドがANGRAとSHAMANに別れ、その両方が聴き応えのある作品をリリースしてくれたので僕としては結果オーライという感じですね。本作を聴いた時点では2nd「REASON」(2005)をリリース後、ドラマーのRicardoを除く全員がバンドを脱退することになるとは夢にも思いませんでした…。バンドは今も存続していてAndreを欠く現体制でも2枚のアルバムを発表しています。

【音源紹介】
・Here I Am

SPIRITUAL BEGGARS「AD ASTRA」(2000)

  • 2014/06/09(月) 00:00:00

S BEGGARS AD ASTRA
【No.398】
★★★★★(2000)
年間ベスト2000年第2位

「リヴァプールの残虐王」の名で一世を風靡したデスメタルバンドにして代表作「HEARTWORK」(1993)がメロデスというジャンルの先駆けとなったとも言われるCARCASSから脱退したMichael Amott(G/ARCH ENEMY)率いるSPIRITUAL BEGGARSの4thアルバム。現在の一般的な知名度はARCH ENEMYの方が上ですがCARCASS脱退後のMichaelは1993年に結成したSPIRITUAL BEGGARSをメイン、1995年に立ち上げたARCH ENEMYをサイドプロジェクトと見なしていたようですね。ところがARCH ENEMYの方が先に人気が出たため両方がメインバンド(事実上ARCH ENEMYがファーストプライオリティ?)となったようです。SPIRITUAL BEGGARSの初期2作品は当初輸入盤でしかリリースされていなかったので、ARCH ENEMY人気を受けて3rd「MANTRA Ⅲ」(1998)から日本盤が出るようになったのではないかと推測しています。僕もARCH ENEMYの3rd「BURNING BRIDGES」(1999)が非常に素晴らしかったので「Michaelが所属しているもうひとつのバンドも聴いてみなくては!」という気持ちで本作を購入した次第です。

怒涛の攻撃性とそこに突如として流れ込んでくる美麗ツインギターとの対比が持ち味のARCH ENEMYとはまた異なるSPIRITUAL BEGGARSのサウンドは独特の妖気を発散するグルーヴィーなハードロックという印象で、直感的にカッコいいと思える楽曲がズラリと並びます。歪んだベースとそこに絡むドラム、その上にギターと重厚なハモンドオルガンが重なってくる①Left Brain Ambassadorsの開始10秒で本作の世界に引き込まれました。中でも徐々に緊張感を高めていくリフと官能的なギターソロに聴き惚れてしまう③Sedatedが僕的にはハイライトですね。それ以外にもアルバム随一のキャッチーなメロディが冴え渡る②Wonderful World④Angel Of Betrayal、グルーヴィーな曲調がサビでは一転してポジティブになりアウトロのギターも非常にメロディアスな⑨Escaping The Fools、耽美的なムードから盛り上がっていく展開がドラマティックな⑫Mantraなどを筆頭に極上のハードロックが満載。また小気味良く刻まれるギターリフで始まる⑥Per Aspera Ad Astra、手拍子に合わせて歌うサビをフィーチュアした⑩On Dark Riversを聴いていると自然と身体が揺れてきます。

バンドの看板であるMichaelのギターはメランコリックなものからキャッチー、ファンキーなものまでソロ/リフの両面で素晴らしいプレイを連発してくれているし、それに絡んでくるPer Wiberg(Key/DEATH OTGAN etc)による鍵盤サウンドがお互いを引き立てあっていますね。これまでのサポートから正式メンバーに昇格したPerのキーボードなくして本作は語れません(ちなみに彼は本作のサイケデリックなジャケットも手掛けているのだとか)。そんな相性抜群の2人に加えて、バンド創設者の1人でもあるLudwig Witt(Dr)のズシリと腹に響いてくるドラミングとそれらをまとめあげた北欧の名プロデューサーFredrik Nordstromによるサウンドプロダクションも秀逸。フロントマンSpice(Vo、B)の荒々しい吐き捨て型ボーカルもこの音楽性にマッチしていますね。残念ながら彼は本作を最後に脱退、バンドは後任に圧倒的な歌唱力を誇るJB(Vo/GRAND MAGUS)を迎えて更に飛躍していくことになるのですが「本作のラインナップの先にあるもの」を聴いてみたかった気もします。SPIRITUAL BEGGARSに対してはドゥーム/ストーナー系バンドというイメージがありましたが、本作を聴いてそれが一変しました。このアルバムにすっかり魅了された僕は過去のアルバムも買い揃え、これ以降の新作も全てチェックしていますが「AD ASTRA」こそがバンドの最高傑作だと思います。それに次ぐのが5th「ON FIRE」(2002)、6th「DEMONS」(2005)というJB時代の2作品ですね。

【音源紹介】
・Sedated

【CD購入録】STEEL PANTHER「ALL YOU CAN EAT」(2014)

  • 2014/04/14(月) 00:00:00

【CD購入録】
ALL YOU CAN EAT
STEEL PANTHER「ALL YOU CAN EAT」(2014)

下ネタ全開の歌詞を高品質なHR/HMサウンドに乗せてリスナーにお届けする(笑)STEEL PANTHERの3作目(邦題「鋼鉄の宴!」)を買いました。過去2作品がどちらも当ブログの年間ベストアルバムにランクインする充実の出来だったので今回も期待していましたが、それを裏切らない仕上がりとなっています。前作「BALLS OUT」(2011)がそうだったようにインパクト面ではデビュー作に一歩譲るものの、ボーナストラックを含めた全13曲いずれも安心して聴けるナンバーが並びます。鋭いギターワークがカッコいいオープニング①Pussywhippedはメタリックな曲調ですが、それ以外はバンドの代名詞でもある「Party」という単語を盛り込んだ②Party Like Tomorrow Is The End Of The Worldに象徴される楽しげなムードを持った曲が多いように思います。ハードチューンあり、バラードありの楽曲群で歌われている内容は今回もキョーレツなものばかりで、中でも④Bukkake Tears(なせかカタカナ表記はブカッケ・ティアーズ)は爽やかな曲調と歌詞のギャップが凄すぎ。僕が買った初回限定盤に付属しているDVDは帯タタキによると下品な字幕つきらしいので、家族がいない時にコッソリ見ようと思います(苦笑)。


【CD購入録】SPIRITUAL BEGGARS「EARTH BLUES」(2013)

  • 2013/11/29(金) 00:00:00

【CD購入録】
EARTH BLUES
SPIRITUAL BEGGARS「EARTH BLUES」(2013)

Michael Amott(G)ARCH ENEMYと並行して活動させているSPIRITUAL BEGGARSの8作目を買いました。シンガーが3代目のApollo Papathanasio(ex-FIREWIND、TIME REQUIEM etc)に交代して初のアルバムでもあった7th「RETURN TO ZERO」(2010)は流石のクオリティではあったものの、今ひとつのめり込めずにいたのですが今回は前作よりも聴きやすい印象ですね。基本線は近作と同じオールドスタイルのハードロックでMichaelのギターが随所で見せ場を作っていて④Hello Sorrow、⑤One Man's Curse などはなかなか魅力的。ただ、やはり名盤「AD ASTRA」(2000)や前任ボーカルJB(GRAND MAGUS)在籍時の作品に比べると物足りないような気もします。ARCH ENEMYの最新作「KHAOS LEGIONS」(2011)も以前の作品ほどハマることがなかったのでMichaelが生み出す楽曲と僕の嗜好がズレてきたのかな…。

SYMFONIA「IN PARADISUM」(2011)

  • 2013/06/21(金) 00:00:00

IN PARADISUM
【No.380】
★★★(2011)

契約や金銭面、人間関係がもつれにもつれた結果STRATOVARIUSを脱退して新バンドREVOLUTION RENAISSANCEを誕生させたもののアルバム3枚をリリースしたのみで解散してしまったTimo Tolkki(G)Andre Matos(Vo/ex-ANGRA、SHAMAN etc)と新たに結成したSYMFONIAの1stアルバム。TolkkiとAndreの脇を固めるのは長きに渡ってSTRATOVARIUSの屋台骨を支えてきた実績を持つJari Kainulainen(B/ex-STRATOVARIUS)SONATA ARCTICAでの活動で注目を集めて以降、複数のバンドを渡り歩いてきたMikko Halkin(Key/ex-SONATA ARCTICA etc)GAMMA RAY、HELLOWEENというメロディック・パワーメタルの大御所2バンドでのプレイ経験もあるUli Kusch(Ds/ex-GAMMA RAY、HELLOWEEN、MASTERPLAN etc)という豪華な顔ぶれです。僕のようなメロパワファンにとっては一種のスーパーバンドと言えますが、かつては第一線で活躍していたものの名前を久し振りに聞いた人もいるので冷静になってみると、その当時Tolkkiが声を掛けやすかったメンバーを揃えた感が無きにしも非ずだったりします。

REVOLUTION RENAISSANCEでは、これまでとは異なる音楽性を模索していた印象がありましたが本作はプレイボタンを押した瞬間にメロパワの王道、というかTimo Tolkkiの音世界へと引き込まれます。正直なところ、まんまTolkki在籍時STRATOVARIUSのサウンド(主に5th「EPISODE」~8th「INFINITE」)なのでMatias Kupiainen(G)加入後、ややプログレッシブに音楽性が変わった今のSTRATOVARIUSよりもメロパワファンの受けは良いかもしれません。ただ、いかにもTimo Tolkkiらしい楽曲のオンパレードといってもその焼き直し度がかなり高いんですよね。オープニングの①Fields Of AvalonからしてSTRATOVARIUSのGlory Of The World(「INFINITE」収録)だし、タイトルトラック⑦In ParadisumはSTRATOVARIUSのSoul Of A Vagabond(9th「ELEMENTS PART1」収録)、REVOLUTION RENAISSANCEのRevolution Renaissance(1st「NEW ERA」収録)など、一聴して具体的な曲名が思い浮かぶものもあるほどです。そしてAndreの歌声もSHAMAN時代からそうだったようにANGRAにいた時のような声の透明感は減退しているので、メンバー各人の力が融合して作品に好影響を与えるといったケミストリーは希薄と言わざるを得ません。

そんな気になる点がありつつも(Tolkki在籍時の)後期STRATOVARIUSやREVOLUTION RENAISSANCEに比べると僕好みのサウンドである本作を愛聴しているのも事実で、①以外にもヘヴィなギターリフから始まる③SantiagoやTolkki節全開で高揚感に溢れた⑤Forevermoreなどこの手のバンドに求められる疾走曲はしっかり聴かせてくれるし、Hunting High And Lowタイプのキャッチーメタル、抒情的なメロディが胸に沁みるバラードに長編ナンバーと楽曲のバリエーションも一通り押さえていますね。メロディック・パワーメタルというジャンルが好きで、過去の焼き直しがあっても気にならないなら聴いて損はしないと思います。個人的にはTolkkiがここまで分かりやすいメロパワの世界に帰って来てくれたことが嬉しいし、本家STRATOVARIUSと分家SYMFONIAという形でシーンを盛り上げてくれることを期待していましたが、残念ながらそれは叶いませんでした。本作リリース後にツアーを敢行したものの、その時点でドラマーのUliは体調不良を理由に不参加、その後にバンドは解散しています。メンバーを見る限り長続きしないかもしれないな…とは思っていましたが予想以上に早い幕切れでしたね。

【音源紹介】
・Forevermore

STEEL PANTHER「BALLS OUT」(2011)

  • 2013/05/02(木) 00:00:00

BALLS OUT
【No.374】
★★★★(2011)
年間ベスト2011年第7位

実は結構なキャリアを持つアーティスト達がド派手なコスチュームに身を包んだニューバンドとして活動し、ツボを押さえた高品質なメロディックHR/HMを連発するという方向性に「ノルウェーのWIG WAMへのアメリカからの返答」という表現もされたSTEEL PANTHERの2ndアルバム(邦題「鋼鉄の玉!」。BON JOVIを始めとする80年代の人気バンドのオマージュを随所に散りばめたデビューアルバム「FEEL THE STEEL」(2009)の作風は確信犯的なパクリと揶揄されかねないものだったし、意味が自然と理解できていたら音楽に集中できないであろうほどに下品極まりない歌詞(初めて自分の英語力のなさに感謝しました/苦笑)が話題になっていたこともあり、単発のイロモノバンドかと思っていましたがそんなことはありませんでした。本作では放送禁止用語が飛び交う歌詞はそのままに前作ほど露骨なパクリやDeath To All But Metalのような骨太メタルチューンは影を潜め、爽快感や親しみやすさが強調されていますね。

おバカな語り①In The Futureに続いて勢いに溢れた②Supersonic Sex Machineを叩きつけておいて、爽やかな曲調にタイガー・ウッズの「あの騒動」に纏わる歌詞が乗る③Just Like Tiger Woodsの時点で音楽的にも話題面でも掴みは十分。ただし本作の真価はChad Kroeger(Vo/NICKELBACK)が作曲のみならずボーカルでもゲスト参加してオットコマエな歌声を響かせ、Nuno Bettencourt(G/EXTREME)も客演しているアップテンポ⑥It Won't Suck Itself以降のアルバム中盤~後半ですね。一度聴いたら耳から離れないキャッチーなメロディを持ったポップメタル⑦Tomorrow Night、静かな歌い出しからサビまでの盛り上げ方が秀逸な大陸系バラード⑧Why Can't You Trust Me、「ジー!オー!エル!ディー!ディアイジィジ、アイエヌジ!ダブリュゥ、エイチォ、アー!イィ♪」と曲名のスペルを熱く歌い上げるパートがカッコいい⑩Gold Digging Whore、楽しげなコーラスで「I Like Drugs!」と叫んでしまう辺りがこのバンドらしい⑪I Like Drugs、仄かに漂う哀愁がアクセントとなっているハードロック⑫Critter、早口で歌うサビのリズムが気持ちよくて自然と体が揺れてくるタテノリチューン⑬Let Me Cum In、ピアノ主体のバラードでエンディングの「ウィニウィニウィニウィニ ウィニウィニウィ~ニ ラ~イ♪」というコーラスがCULTURE CLUBKarma Chameleon(邦題「カーマ は気まぐれ」)を思い出させる⑭Weenie Rideなど好きな楽曲を挙げ出すとキリがありません。そんなアルバム本編は勿論、2曲のボーナストラックも含めてフックのあるメロディが目白押しです。

前作発表後も精力的にライブをやりながら質、量ともにこれだけの楽曲を揃えることができたのはベテランの域にあるメンバー揃いだからこそでしょうね。各曲のインパクトでいえばデビュー作に軍配が上がるかもしれませんが、アルバムを聴き終えた時点での満足度では本作も負けていません。STEEL PANTHERのメロディやアレンジは決して目新しいものではないもののHR/HMを聴くようになって20年近くになる僕のツボを的確に突き、「こう展開してくれたら嬉しいな」という期待にきっちり応えるものばかりなので何度も聴きたくなるんですよね。そんな痒いところに手の届く楽曲を生み出してくれるSTEEL PANTHERはすっかり僕のお気に入りバンドとなりました。WIG WAMは4th「WALL STREET」(2012)でやや失速してしまった感がありますが、このSTEEL PANTHERにはこのまま突っ走ってもらいたいですね。ちなみに彼等はももいろクローバーZの参戦が発表され物議を醸しているOZZFEST 2013 JAPANのために来日、その後5月22日に3rdアルバムを発表予定です。

【音源紹介】
・It Won't Suck Itself

【CD購入録】SOILWORK「THE LIVING INFINITE」(2013)

  • 2013/02/28(木) 00:00:00

【CD購入録】
THE LIVING INFINITE
SOILWORK「THE LIVING INFINITE」(2013)

バンド創設メンバーにして創作面の中心人物でもあるPeter Wichers(G)不在のラインナップでリリースした6th「SWORN TO A GREAT DEVIDE」(2007)が個人的に好きになれなかったものの、Peterが復帰した前作「THE PANIC BROADCAST」(2010)が傑作だったSOILWORKの9作目を買いました。今回のアルバムはリリース前からPeterが再脱退したこと、バンド初のコンセプトアルバム(しかも2枚組)となることがアナウンスされていたため期待よりも不安の方が大きかったのですが、先行発表された音源を聴いて不安が薄れてきたので購入を決めた次第です。バンドの集大成的なアルバムだと思えた前作同様、今回もSOILWORKの持ち味が存分に詰まっているし、デス/ノーマル声を巧みに操るBjorn“Speed”Strid(Vo)のボーカルパフォーマンスもあって、エクストリームメタルバンドの中では楽曲の幅は広い方だと思いますが、現時点では全20曲(うち2曲はインスト)約85分という長丁場に聴き疲れを感じてしまうことは否定できません。今後、聴き込むにつれて2枚組コンセプトアルバムという冒険心に溢れた本作がどんな表情を見せてくれるのか楽しみ半分、不安半分というところですね。

【CD購入録】STRATOVARIUS「NEMESIS」(2013)

  • 2013/02/21(木) 00:00:00

【CD購入録】
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STRATOVARIUS「NEMESIS」(2013)

Matias Kupiainen(G)の加入後、順調な活動を展開しているSTRATOVARIUSの14作目(14曲収録の初回限定盤)を買いました。2011年に脱退を表明したJorg Michael(Ds)の後任にRolf Pilve(Ds/STATUS MINOR etc)を迎えた新体制としては初のアルバムとなります。前作「ELYSIUM」(2011)がプログレテイストの強い作風だったのに対して本作はよりパワーメタル的なアプローチを取っていて、過去2作品に収録されていた長編曲はなく比較的コンパクトな楽曲が並んでいます。2013年は新年早々にHELLOWEENが「STRAIGHT OUT OF HELL」という傑作アルバムを発表してくれましたがSTRATOVARIUSも今年を代表するメロディックメタル作品を届けてくれたな、というのが率直な感想です。70分超の長丁場である、キラーチューンだけが飛び抜けているのではなく作品全体に優れた楽曲が並んでいる、ドラマーを除く全メンバーが作曲を手掛けている点など「STRAIGHT OUT OF HELL」との共通点が見受けられるのも興味深いですね。アグレッシブなメタルチューン、へヴィかつダークなものからポップな曲調、叙情バラードまで多彩な表情を見せる本作でのお気に入りはキャッチーかつスピーディな④Halcyon Daysでしょうか。当分ヘヴィロテ確定です。

【CD購入録】SAPPHIRE EYES「SAPPHIRE EYES」(2013)

  • 2013/02/16(土) 00:00:00

【CD購入録】
SAPPHIRE EYES
SAPPHIRE EYES「SAPPHIRE EYES」(2013)

スウェーデン出身のメロディックロックバンドALYSON AVENUEのブレインNiclas Olsson(Key)Thomas Bursellなるシンガーが結成したニューアクトSAPPHIRE EYESの1stアルバムを買いました。この2人は以前にSECOND HEATというバンド(プロジェクト?)でも活動していたようですが、そちらは未聴です。本作は今年の1月頃に発見したサンプル音源を聴いてハズレはないと思っていた僕の期待通りではあるものの、それを上回るほどの衝撃はないかなというのが現時点での感想です。勿論、心地よく聴けるメロハー作品であることには間違いないので、これからリピートしていきたいと思います。なお本作にはALYSON AVENUEの元メンバーで昨年までNIGHTWISHに在籍していたAnette Olzon(Vo)、ミスター哀愁ボイスMikael Erlandsson(Vo/LAST AUTUMN'S DREAM)Sven Larsson(G/STREET TALK)など多数のゲストが参加していて、それぞれの持ち味を発揮してくれています。ただゲストであるMikaelがオープニングの①You're My Wingsを全編歌っていることもあってバンドというよりはプロジェクトという印象が強いですね。あとジャケットはもう少し何とかならなかったのでしょうか…(苦笑)

STRATOVARIUS「ELYSIUM」(2011)

  • 2013/02/02(土) 00:00:00

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【No.362】
★★★(2011)

バンドのリーダー/メインソングライターだったTimo Tolkki(G)が脱退し、解散の危機に直面していたもののTolkkiの後任に無名の新人ギタリストMatias Kupiainenを迎えた12th「POLARIS」(2009)で復活を遂げたSTRATOVARIUSの新体制となってからは2作目、通算13枚目のアルバム。前作リリース時にはアルバムの出来もさることながら「Tolkki抜きでバンドが成り立つのか?」「迷走していたSTRATOVARIUSがメロパワの世界に戻ってきてくれるのか?」といった点に注目が集まっていたことをバンド側も感じたのか、安心感はありつつも無難な作風と言えなくもなかったのでバンドの勝負作となるのは「その次の1枚」だと思っていました。いざ蓋を開けてみるとMatiasがアルバム本編の半数以上の楽曲を手がけ、プロデュースも担当するなどバンドの中心的存在へと成長した本作は、往年のSTRATOVARIUSとは異なるが同系統のバンドもパッと頭に浮かばないという独特のオーラと気品に溢れたパワーメタルに仕上がっていて、前作以上の出来映えだと思います。

まずは前作のオープニングトラックDeep Unknown同様、疾走曲と呼べるほどのスピード感はないものの適度にテクニカルな展開を盛り込んだアップテンポ①Darkest Hourとそれを引き継ぐ②Under Flaming Skiesの流れは実にスムーズでアルバムの幕開けとしては上々の滑り出しとなっていますね。僕にとってのハイライトは、バラード調で始まりドラマティックな展開から疾走パートへと繋がっていく構成が秀逸な③Infernal Maze、ボーカルを軸としたミドルテンポから徐々に加速していき白熱のソロバトル(キーボードVSギター)を経た後にペースダウンして感動的なメロディで大団円を迎える3部作で18分の大作⑨Elysiumでしょうか。上記2曲の両方がMatias作で③が元々は⑨の一部だったというのも興味深いですね。Matias以外のメンバーが書いた曲では、いかにもJens Johansson(Key)らしいメロディ/ソロワークと共に駆け抜けるパワーメタル⑤The Game Never Endsや北欧的なムードの濃いヘヴィチューン⑥Lifetime In A Moment、独特な美しさを放つバラード⑦Move The Mountain(Jens作)のようにメロウなナンバーも楽しめます。前作で最もTolkki時代を彷彿とさせたスピード曲Forever Is Todayを手がけたLauri Porra(B)による⑥はバンド初期に通じる雰囲気が感じられるので今のメンバーでTolkkiらしい曲が書けるのは彼なのかもしれません(1997年に発表された6th「VISIONS」収録の名曲Black Diamondのライトバージョンと呼べそうな日本盤ボーナス⑩CastawayもLauriが作曲)。

全盛期のTolkkiがバンドに残した名曲群のような一撃必殺のキラーメロディはここにはない反面、聴くほどに味わいを増すスルメ盤の要素は本作の方が感じられるので、これをどう捉えるかによって本作に対する評価も変わってくるのではないかと思います。個人的には9th「ELEMENTS PART1」(2003)辺りから陰りが見え始めたとはいえTolkkiが生み出すメロディには特別な力が宿っていたんだと改めて感じさせられたのも事実だったりします(今のスタイルも好きですが…)。ボーナストラックに収録されたTolkki時代の名曲⑫Against The Wind(Live)、⑬Black Diamond(Live)とアルバム本編を聴き比べると余計にそう思いますね。かといってAndre Matos(Vo/ex-ANGRA etc)らと結成したスーパーバンドSYMFONIAはあっさり崩壊、果てには音楽業界からの引退にまで言及するなど相変わらずのお騒がせ振りを発揮しているTolkkiと再合流しても上手く行かないと思うし、現ラインナップになってからTimo Kotipelto(Vo)が苦しそうなハイトーンで歌う場面も激減したので復活作「POLARIS」で掴んだ今のスタイルを突き詰めて行ってTolkki時代を凌駕するアルバムを生み出してもらいたいですね。

【音源紹介】
・Elysium