WITHIN TEMPTATION「THE UNFORGIVING」(2011)

  • 2017/07/23(日) 00:00:00

THE UNFORGIVING
【No.497】
★★★★(2011)
年間ベスト2011年第6位

前作「THE HEART OF EVERYTHING」(2007)で従来のゴシックメタルに大衆的な親しみやすさを加味し、更なる進化を遂げたWITHIN TEMPTATIONの5作目。リーダーのRobert Westerholt(G)によると「THE HEART OF EVERYTHING」の出来にかなり満足しているようで「通常のアルバムを作るという意味ではやりきった」と感じたことから、今回はバンド初のコンセプトアルバムであるだけでなく、そのストーリーと連動したコミックを出版するという意欲作となっています。ジャケットはアメコミ風のイラストで、インタビュー記事のメンバー写真を見ても従来にはなかった軽いノリになっているためバンドイメージに変化が見られるものの最大の武器であるメロディセンスは衰えるどころか更に磨きがかかっていますね。

今や厳かなゴシックメタル的ムードは大きく減退、シンフォニックアレンジの効いたメロディアスHR/HMとなっているため初期からのファンにとっては賛否両論ありそうですが僕は本作を聴いてWITHIN TEMPTATIONのファンになりました。今回はこれまで以上に楽曲の幅が広がっていて、このバンドにしては珍しく疾走感のあるロックチューン③In The Middle Of The Night、曲名通りの武骨さ、勇ましさと共に進行する⑥Iron、ディスコ調のサウンドを取り入れた⑧Sineadなどは、本作の多様性を象徴するナンバーだと思います。WITHIN TEMPTATIONの凄いところは新境地に挑戦しつつ、それを失敗に終わらせず魅力的に聴かせることができる点でしょう。僕にとってのハイライトはダンサブルな⑧とは対照的な熱唱系バラード⑨Lost、即効性は低いもののリピートするうちにジワジワくる⑩Murder、モダンサウンドを纏った哀愁ドライヴィングチューン⑪A Demon's Fateと続く後半の流れですね。

Sharon Den Adel(Vo)のボーカルについては、3rd「THE SILENT FORCE」(2004)辺りまでで披露していたエンジェリックボイスは控えめで、作風の変化に合わせるように力強く低音域で歌う場面が増えていますね。また音楽的にもメンバーのルックス的にも依然としてSharon推し全開ではありますが、短いとはいえギターソロが聴ける曲が増えたのも特徴でしょうか。本作はコンセプトアルバムではあるもののSEは①Why Not Meのみだし、大作も一切なくコンパクトな楽曲が並んでいるため小難しさは皆無。あくまで歌モノ作品として成り立っているのも好印象です。ゴシックメタルからメインストリーム系ロックへの飛躍のきっかけを掴んだ前作の流れを上手く発展させた充実盤だと思います。

【音源紹介】
Sinead

WITHIN TEMPTATION「THE HEART OF EVERYTHING」(2007)

  • 2017/07/11(火) 00:00:00

THE HEART OF EVERYTHING
【No.496】
★★★(2007)

「ナイチンゲールの声」と称される美声で聴く者を魅了する歌姫Sharon Den Adel(Vo)を擁するシンフォニック・ゴシックメタルバンドWITHIN TEMPTATIONの4thアルバム。「ナイチンゲールの声」という彼女の愛称は正直なところ意味がよくわからないのですが「ナイチンゲール=看護師=癒し」、つまりは癒しの歌声ということでしょうか。バンドの母国オランダといえば僕がHR/HMを聴き始めた90年代半ばは貴公子Robby Valentine(Vo、Key)のイメージが強かったものの2000年代に入ってロビー様の勢いが失速するのと入れ替わるようにWITHIN TEMPTATIONがヨーロッパでブレイク、その後もAFTER FOREVER、EPICA、DELAINなどが続々と登場し、今やオランダは僕の中でゴシックメタル大国となっています。そんなバンド勢の代表格でもあるWITHIN TEMPTATIONは僕が初めて聴いたこの手のバンドで、世間でも評価の高い2nd「MOTHER EARTH」(2000)、3rd「THE SILENT FORCE」(2004)もチェックしましたが荘厳な雰囲気を発散している一方で敷居の高さを感じてしまい、美旋律に酔いしれながらもそれほどハマることはありませんでした。

これまではお行儀よく纏まっていた感のある彼等ですが、今回はKeith Caputo(LIFE OF AGONY)なるシンガーがゲスト参加した②What Have You Doneを筆頭にHR/HMらしいダイナミズムが増していて聴きやすくなりましたね。「Sanctus Espiritus〜♪」と歌うラテン語のサビが耳から離れない④Our Solemn Hour、Sharonにしては珍しい低音域の歌唱をフィーチュアしたタイトル曲⑤The Heart Of Everything、アルバムの中でも一際キャッチーなメロディを持つ⑥Hand Of Sorrowと続く中盤も強力。そしてアルバム終盤には⑨All I Need、⑪Forgivenといった美しいバラードに加えて⑩The Truth Beneath The Roseのようにドラマティックかつ勇壮な楽曲もあって、美しさだけでなく力強さも感じられるのがこれまでの作品と異なる点でしょうか。

平たく言えばデビュー作「FALLEN」(2003)が世界的ヒットを記録したEVANESCENCEの要素を従来のゴシックメタルサウンドに加味したような作風ですが、結果的に僕好みの音楽性に変化しているのが嬉しいですね。そしてバンドの顔でもあるSharonのボーカルパフォーマンスは更なる成長を遂げていて、神々しさすら感じさせる高音域で儚げに歌うパートを最大の武器にしつつ今回はより多彩な表情を見せてくれています。そんな彼女が歌うメロディラインは親しみやすく、楽曲を盛り上げるシンフォアレンジもお見事。大衆的な聴きやすさを身につけた今回のアルバムはバンドの分岐点ではないかと思っています。デビュー当初の崇高なゴシックメタルサウンドは希薄になっていますが、僕は本作以降のWITHIN TEMPTATIONが好きですね。

【音源紹介】
What Have You Done

【CD購入録】WITHIN TEMPTATION「HYDRA」(2014)

  • 2014/02/02(日) 00:00:00

【CD購入録】
HYDRA.jpg
WITHIN TEMPTATION「HYDRA」(2014)

1997年に「ENTER」でデビュー、2nd「MOTHER EARTH」(2000)が母国オランダを始めとするヨーロッパ各国で大ヒットして以降、着々と成長し続けて今やゴシックメタルの枠を超えた大物バンドとなった感もあるWITHIN TEMPTATIONの6作目(初回限定盤)を買いました。今回もSharon Den Adel(Vo)の絶品歌唱を軸としたゴシック系歌ものメタル作品に仕上がっていて、近作で顕著な大衆化路線も引き継いでいるのも個人的には嬉しいポイントです。話題となっているゲストシンガー陣については、何と言っても④Paradise(What About Us?)でSharonとTarja Turnen(Vo/ex-NIGHTWISH)というヨーロッパの2大歌姫の共演が実現した点が目を引きます。またバンド史上最速チューンの呼び声高い②DangerousではHoward Jones(Vo/ex-KILLSWITCH ENGAGE)が男前な歌声を響かせてくれているし、③And We Runではなんとアメリカ人ラッパーXzibitによるラップも導入しているのですが、この異色な組み合わせが意外とマッチしているんですよね。あと⑩Whole World Is WatchingにはDave Pirner(Vo/SOUL ASYLUM)が参加しています。前作「THE UNFORGIVING」(2011)はアルバムと同名のコミックを制作し、その物語を表現したコンセプト作品、今回は古代ギリシア神話に登場する不死身の蛇「ハイドラ」をタイトルに持ってくるなど、このバンドは常に異なるテーマに挑んでいる印象がありますね。 それでいてアルバムのクオリティも高水準だというのが素晴らしい。 ちなみに僕が買った初回限定盤は2枚組仕様となっていてDisc-2はカバーが6曲、残りはアルバム本編に収録された曲のEvolution Trackなるバージョンが4曲という内容です。Evolution=「発展」という言葉の通り各曲がどのようにして完成形へ至ったかを記録したもので、1曲全体ではなく切り出された特定パートが発展していく過程を楽しむためのトラックなのでカバーはともかくこれらは熱心なファン向けかなという感じです。

【CD購入録】WITHIN TEMPTATION「THE UNFORGIVING」(2011)

  • 2011/10/16(日) 00:00:00

【CD購入録】
THE UNFORGIVING
WITHIN TEMPTATION「THE UNFORGIVING」(2011)

「HR/HM界の歌姫」と聞いて僕が思い浮かべる歌い手のひとりSharon Den Adel嬢(Vo)擁するオランダのシンフォニック・ゴシックバンドWITHIN TEMPTATIONの5作目を買いました。このバンドに関しては「ENTER」で1997年にデビューして以降、2nd「MOTHER EARTH」(2000)が輸入盤市場やネットで話題となり、3rd「SILENT FORCE」(2004)と4th「THE HEART OF EVERYTHING」(2007)はB!誌でも高く評価されていたので僕も2nd~4thをチェックしましたが、世間の評判ほどの満足感は得られなかったというのが正直なところでした。本作は過去作品ほどシンフォゴシック色が濃くなく、より普遍的な女性ボーカルによるロック作品で聴きやすいと感じました。今回も現時点ではそんなにのめり込んではいないのですが、気持ち良くリピートできる1枚だと思います。
また本作はバンドにとって初めてのコンセプト作品であるだけでなく、そのストーリーと連動したコミック本を出版するのだとか。バンドに勢いがあって波に乗っていることを感じますね。