FIORE「ALL I FEEL」(1998)

  • 2012/10/20(土) 00:00:00

ALL I FEEL
【No.348】
★★(1998)

Harry Hess(Vo)、Pete Lesperance(G)、Darren Smith(Ds)というHAREM SCAREM3メンバーのバックアップを受けてデビューしたニューヨーク出身のメロディックロックバンドFIOREの2ndアルバム。まず驚かされるのは前作から僅か9ヶ月というリリース間隔の短さです。今回も曲作りにHarryが深く関与しているとはいえ、短期間でこれだけの楽曲を揃えられたのは、80年代頃に在籍していたバンドPREVIEWはレコード会社の事情により地元アメリカでは発表されなかったり、ソロ名義でリリースされるはずだった作品は日の目を見ずに終わってしまったりと、なかなか表舞台で活躍できなかった苦労人Jon Fiore(Vo)の「このチャンスを絶対モノにする!」という強い気持ちがあったからこそ成し得た業なのかもしれませんね。こうして自身のバンドで活動できるようになったのはJonの長きに渡る努力が実を結んだような気がして嬉しくなります。

アルバムの中身はというと、前作「TODAY TILL TOMORROW」(1998)や初期HAREM SCAREMが好きなら一定以上の満足感が得られるであろう上質のメロディアスハード作品に仕上がっています。HAREM SCAREMのお蔵入り音源もいくつか使っていた1stアルバムに対して、今回は前作リリース後に書かれた全11曲を収録していて8曲がJonとHarryの共作、3曲がHarryによるものとなっていてJonのインプットは増えているものの、プロデュースにもHarryが関わっていることもあってソングライティング面でJonの個性は感じられません。また躍動感あるロックチューンからスローバラードまでバラエティがあって、アルバムの「決め」となるナンバーが複数存在していたデビュー作に比べると今回はメロディアスではあるものの若干薄味な印象を受けますね。今回の新味としては歌詞のテーマである憎しみの感情を曲に反映させたヘヴィチューン⑥Good For Nothingでしょうか。

他の同系統アルバムと比べても劣らないどころか安心して聴いていられるし、Jonの掠れ気味のボーカルは今回も胸に響いてくるのですがメロディの充実度には前作との開きが感じられますね。①Fool Yourself、⑤The Only Way We'll Know、⑦Keep Me Satisfied、⑨Come And Gone、⑩All I Feelなど半数近くがHAREM SCAREMの曲としても通用しそうなほどHarryらしさに満ちた作風ということもあって、FIOREがシンガー違いのHAREM SCAREMに思えてきてしまうのも否定できません。そういう意味でFIOREはバンドというよりもHarryが書いた曲をJonが歌うプロジェクトと見なした方がいいような気もします。結局FIOREは本作の後にベスト盤をリリースしたのを最後に音沙汰がなくなってしまいましたがJonはなかなか魅力的な声の持ち主なので、また何らかの形でカムバックを果たしてもらいたいですね。

【音源紹介】
ごめんなさい。本作の音源を見つけられませんでした。

FIORE「TODAY TILL TOMORROW」(1998)

  • 2012/10/14(日) 00:00:00

FIORE.jpg
【No.347】
★★★★(1998)
年間ベスト1998年第7位

1980年代にはPREVIEWというバンドでメロディックロック界における幻の名盤と称されるセルフタイトル作のフロントマンを務め、それ以降も多くのバンド/プロジェクトにバックボーカルで参加するなどキャリア豊富なニューヨーク出身のシンガーJon Fioreを中心とするバンドFIOREのデビューアルバム。僕はこのアルバムを聴くまでJonもPREVIEWも知らなかったので本作を買ったきっかけはHAREM SCAREMの中心人物Harry Hess(Vo)Pete Lesperance(G)が楽曲を手がけ、プロデュースもしていることが理由だったのですが、これが1998年当時の本家以上に僕好みのメロディックロック作品で驚きました。HAREM SCAREMの作品で例えるならデビュー作で聴けるハードポップを軸に、時折4th「BELIEVE」(1997)の雰囲気も感じるといったところでしょうか。

まずはアルバムの掴みがなかなか強力。快活でエネルギッシュなアップテンポ①Whatever I Want、HAREM SCAREMの哀愁路線そのままの②Out Of Love、爽快感に満ちた③All Alongという冒頭3曲にやられました。その後も明るい系から仄かな泣きを発散するものまで良質のメロディックロックが堪能できます。アルバム前半にロックソング、後半にミディアムテンポを集中させた作品構成やスローバラードの⑦Strong Enough、⑧Someday Soonが続く曲順はもう少し考えて欲しかった気もしますが個々の楽曲のクオリティは高いと思います。楽曲面で特筆すべきは、本作の中で唯一Harryが作曲に関わっておらずJonがもうひとりのソングライターと共作したボーナストラック⑫Did You Ever Walk Awayですね。素晴らしいメロディを持ったバラードであることに加えて、曲の後半で聴けるアコースティックギターやピアノによる美旋律で締めくくるエンディングなど聴き手の涙を誘うアレンジが秀逸。本作のベストチューンを選ぶとすればこの曲で決まりですね。

HAREM SCAREMのブレイン2人に加えて、バンドの持ち味のひとつであるバックコーラスで存在感を発揮するDarren Smith(Ds/HAREM SCAREM)までもが本作をバックアップしており⑥Don't Take It Too Fastなどではハーレム節とも言えるハーモニーを聴かせてくれるので、予備知識なしで聴くとHAREM SCAREMのニューアルバムと思ってしまいそうな1枚です。そんな本作においてFIOREならではの魅力となっているのが、ややハスキーで何とも言えない哀感を備えたJonのエモーショナルボイス。どことなくHarryに似た声質で、彼ほど力強さはないものの独特の色気を放つJonの歌声は楽曲の良さと並ぶ本作の聴きどころです。裏を返せば、それ以外にFIOREの独自性が感じられないほどHAREM SCAREM色の濃い作品ということになるのですが…。ちなみに①と②はHAREM SCAREMがバンド初期に録音していながらお蔵入りになっていた曲で、2003年にリリースされるバンドの初期音源集「THE EARLY YEARS」に収録されています。

【音源紹介】
・Did You Ever Walk Away