SILENT FORCE「WALK THE EARTH」(2007)

  • 2010/06/22(火) 00:00:00

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【No.243】
★★(2007)

「INFATUATOR」(2001)、「WORLDS APART」(2004)という2枚のアルバムで「歌良し、曲良し、サウンド良し」というメロディックメタルの安心ブランドとしての地位を確立し、KAMELOTとのカップリング公演で初来日も果たしたSILENT FORCEの4thアルバム。過去2作品がひたむきなまでに鋼鉄サウンドを追求した熱さ漲る作風だったのに対し、本作では若干クールダウンしていて風格や余裕のようなものが感じられる1枚となっています。

とはいえ、これまでの作品で築き上げてきたSILENT FORCEらしさは健在で③Point Of No Return、⑤The King Of Fools、⑫Picture Of A Shadowといったメロディックメタル佳曲や、物静かなイントロに導かれる緩やかなサビメロとロックンロールテイストも感じられるAlex Beyrodt(G/ex-SINNER)の弾きまくりギターソロの対比がカッコいいタイトルトラック②Walk The Earthなども楽しめます。それだけでなく⑤ではエスニックなフレーズが用いられているほか、これまでのバンドイメージからすると異色曲と言えそうなメランコリック・ゴシック調⑦Goodbye My Ghost、モダンでヘヴィなギターリフから一転して親しみやすいサビメロが登場する⑨My Independence Dayといった新機軸もあってバンドが楽曲の幅を広げようとしていることが窺えます。こうしてメロディック・パワーメタル一直線な音楽性から、より普遍的なHR/HMへシフトしている本作では、これまで以上にTorsten Rohre(Key)の巧みなキーボードワークが良い味を出していますね。またAlexと並ぶバンドの主役であるD.C. Cooper(Vo/ex-ROYAL HUNT)についても、音程をきっちりコントロールして丁寧にメロディをなぞる従来のスタイルだけでなく⑫では良い意味で荒れた歌い方を披露してくれていて新鮮でした。

ただ正直なところ物足りない部分もあります。メロディック・パワーメタルは僕の大好きなジャンルなので本作におけるメロパワ要素の減退ももちろん残念なのですが、今回はそれ以上にキャッチーなメロディがあまり聴けないというのが寂しいですね。前作がバンド史上最もメロディアスな作品だったこともあり、その落差が大きく感じられます。手堅くまとまったアルバムではあるものの、決定打に欠けるという意味ではバンドのデビュー作「THE EMPIRE OF FUTURE」に近いかもしれません。

【音源紹介】
・Walk The Earth

SILENT FORCE「WORLDS APART」(2004)

  • 2010/06/20(日) 00:00:00

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【No.242】
★★★★(2004)
年間ベスト2004年第9位

デビュー作の時点ではやや散漫な印象があったものの、前作「INFATUATOR」(2001)で鋼鉄魂溢れるメロディックメタルというバンドの音楽性が定まってきた感のあるD.C. Cooper(Vo/ex-ROYAL HUNT)Alex Beyrodt(G/ex-SINNER)を中心とするSILENT FORCEの3rdアルバム。今回は剛直なメタルアルバムという風情でメタル道まっしぐらだった前作よりもメロディアスなサウンドへと変化してきていて、一段と僕の好きなタイプのバンドになった印象です。ガチガチのメタリックチューンが詰まっていた前作ではD.C.の天をつんざくようなシャウト/スクリームが多かったのに対し、本作ではハイトーンだけではないD.C.の煌びやかさやマイルドな歌唱を活かせるナンバーが並び、そのそれぞれがフックあるメロディを持っているというのも嬉しいポイントですね。

本作は日本人なら誰もが反応してしまう旋律で幕を開けます。「あかりをつけましょ、ぼんぼりにぃ~♪」のメロディを持ってくるという賛否両論ありそうなこのアイデアはAlexの奥様(日本人)がたまたま口ずさんでいた「たのしいひなまつり」を聞いたのがきっかけだったそうですが、①Ride The Storm自体はオープニングに相応しい疾走曲で掴みはバッチリです。パワフルなメロディックメタルを基盤にしつつ、本作ではポップとさえ呼べそうな②No One Lives Forever、④Once AgainやD.C.の古巣ROYAL HUNTを連想せる哀メロをフィーチュアした⑤Master Of My Destiny、⑥Heroesのような前作になかった要素もあるし、清廉なピアノの調べとともに始まるメロディアスバラード⑨Spread Your Wings、そしてSILENT FORCEの魅力をギュッと凝縮したスピードチューン⑪Heart Attackなど、メロディックメタルの基本レパートリーが一通り楽しめます。

アルバム全編に渡って活躍するAlexのギターは今回も聴き応えがありますが、冒頭の「たのしいひなまつり」に加えて⑦Death Comes In Disguiseではベートーベンの「第九」、⑪ではオッフェンバックの「天国と地獄」という有名なクラシック曲を取り入れている点については楽曲のシリアスなムードをスポイルしている、またはこれも面白いと見るかで本作全体の印象も変わってくるかもしれせんね。僕は基本的に後者ですが1枚のアルバムに3曲は多いかな。 楽曲単位のインパクトでは前作のPromised LandWe Must Use The Powerを越えるものこそありませんが、作品全体の完成度でいえば本作がバンドの最高傑作ですね。

【音源紹介】
・Heart Attack

SILENT FORCE「INFATUATOR」(2001)

  • 2010/06/16(水) 00:00:00

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【No.241】
★★★★(2001)
年間ベスト2001年第9位

それまでは全く無名の存在でありながら1994年にROYAL HUNTに加入以降、1996年と1997年のBURRN!誌の人気投票シンガー部門で2年連続チャンピオンに輝くなど一気にトップシンガーの仲間入りを果たしたD.C. Cooper(Vo/ex-ROYAL HUNT)でしたが、ROYAL HUNT脱退の引き金になったと言われる初のソロアルバムやバンド脱退後にAlex Beyrodt(G/ex-SINNER)と結成したSILENT FORCEなど、彼が作曲に関わった作品では煮え切らない楽曲が多かったので、Andre Andersen(Key/ROYAL HUNT)のようにD.C.の旨みを活かせるソングライターと組んで欲しいと思っていました。SILENT FORCEの2作目に当たる本作がリリースされると聞いた時も、前作「THE EMPIRE OF FUTURE」のイメージからD.C.のソングライティングパートナーとしてのAlexに疑問符が付いていたのですが、「STRATOVARIUSと同行したツアーの中で自らの目指すべきサウンドが見えてきた」とAlexが語っているように、STRATOVARIUSに通じるメロディックパワーメタルサウンドを下敷きとしつつJUDAS PRIEST譲りのタフネスを注入したパワーメタルのお手本ともいえる本作のサウンドは前作のイマイチ感を払拭する出来栄えとなっています。

このアルバムを語る上で欠かせないのが、インパクト絶大のクサメロで疾走する④Promised Landとタイトル通り力強く勇壮なメロディを見事な構築美で聴かせる⑥We Must Use The Powerという2大メタリックチューンの存在でしょう。この2曲を聴けるだけで本作を買う価値があると思えるほどですね。その他にも、本作のストロングスタイルな作風を象徴するかのようなD.C.のシャウトがいきなり炸裂する①Overtureに続く正統派メタルソング②Fall Into Oblivion、ROYAL HUNTでは聴けなかったD.C.のRob Halford(Vo/HALFORD、ex-JUDAS PRIEST)張りのスクリームを軸に、僕がD.C.の声域で一番美味しいと思っているミドルレンジも味わえるアグレッシブな⑤Infatuatorや組曲形式の⑦Cena Libera~⑩Pain(⑩は日本盤ボーナストラック)など聴きどころは多いです。また、ラストをD.C.お得意のバラード⑭In Your Armsから静かなインスト⑮Northern Lightで締める構成もグッド。

Alexのギタープレイはブックレット写真のモロYngwie Malmsteenなルックスから想像するほどネオクラシカルに傾倒し過ぎることなく、楽曲同様に骨太かつメロディアスなサウンドで曲に山場を設けてくれていますね。最初はD.C.をフロントマンに据えているバンドとしてSILENT FORCEに注目していましたが、Alexのメロディセンスとギタープレイも僕好みです。そしてAlexのギターと時には激しく絡み合い、時には楽曲のドラマ性を高めるキーボードプレイヤーTorsten Rohreや楽曲をしっかりと支えるリズム隊も安定感があるので、上手いボーカルと演奏で楽しめるメロディックメタル作品となっていますね。メタルの中でもメロディアスなものを好む僕としては、ラスト2曲を除いて徹頭徹尾メタルな本作においてD.C.の声域が高音に偏っているように感じられるのと、全体を通して聴いた後に少し聴き疲れするのが難といえば難ですが、④と⑥というキラーチューンを軸にトータルで見ても隙の少ない好盤だと思います。


【音源紹介】
・Infatuator

SILENT FORCE「THE EMPIRE OF FUTURE」(2000)

  • 2010/06/12(土) 00:00:00

THE EMPIRE OF FUTURE
【No.240】
★(2000)

ROYAL HUNTを事実上解雇という形で脱退したD.C. Cooper(Vo)が元SINNERのギタリストAlex Beyrodtと結成したSILENT FORCEのデビュー作。バンドの中核を担うのは勿論D.C.とAlexの2人なのですが、演奏陣も後にAXXISRAGEに参加するAndre Hilgers(Ds)を含むドイツ人プレイヤーの実力者がバックを固めていて、堅実な正統派メロディックメタルを聴かせてくれています。D.C.の歌唱はこれまでと同じく魅力的だし、SINNERではスポットの当たることが少なかったように思うAlexもSILENT FORCEでは曲作りにギタープレイにと、これまで以上の存在感を発揮しています。

ただ、本作に収録されている楽曲は間違いなく僕の好きな路線ではあるのですが、アルバム全体を聴き終えた後で耳に残るメロディが少ないんですよね。語りメインのイントロダクション①The Beginningに続く②Live For The Dayでの流麗なボーカルラインとSYMPHONY XOf Sins And Shadows(3rd「DIVINE WINGS OF TRAGEDY」収録)に似たコーラスワークが登場するところで一瞬「オッ」となったり、⑤Tell Me Why、⑦Six Past The Hour辺りは結構好きなナンバーだったりしますが、収録曲の多くは聴いていても気持ちの高ぶりが少なく右から左へと流れていってしまうという感じです。ボーカル、演奏、サウンドプロダクションについては、2000年代前半に続々とデビューしたいわゆるB級メタルバンド群には到達できないであろう高みにあるとは思うのですが、肝心なメロディの印象度に物足りなさが残ります。そんな楽曲群は元々AlexがMichael Borman(Vo/JADED HEART)と組んでいたSYGNETというバンドのセカンドアルバム用に作業を進めていたものの、AlexとMichaelがコンビを解消することになったためにD.C.がそのマテリアルの歌詞とボーカルラインに手を加えて仕上げたということが今回の中途半端な出来に繋がっているのかもしれません。

D.C.は大のお気に入りシンガーの1人なだけに、ROYAL HUNT脱退後ほどなくしてこのバンドでシーンに戻ってきてくれたのは嬉しいのですが、本作を聴いてD.C.の今後の活動が少し心配になってしまったのも事実でした。まぁ、デビュー当時のSILENT FORCEはバンドというよりもプロジェクト的な印象が強かったし、本作で感じた不安感はバンドとしての結束を強めた次作2nd「INFATUATOR」で、ものの見事に吹き飛ばしてくれたんですけどね。

【音源紹介】
・Live For The Day