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ALHAMBRA「THE EARNEST TRILOGY」(2016)

  • 2019/12/10(火) 00:00:00

THE EARNEST TRILOGY
【No.538】
★★★★(2018)

超絶技巧を誇る演奏陣と世良 純子嬢(Vo)による圧巻のボーカルがせめぎ合う国産シンフォニック・プログレHR/HMバンドの最高峰ALHAMBRAの5th。ただし本作を5枚目のフルレンスアルバムと呼べるかと言うと微妙で、その実態は3rd「SOLITUDE」(2010)収録の8曲中6曲をリレコーディングし、新曲としてインストとボーカル曲を2曲ずつ追加した内容となっています。リーダーのYuhki(Key/GALNERYUS)によると当初は本作では5曲目にあたるSolitudeをシングルで発表する予定だったものの、レーベル側の意向でアルバムとしてリリースすることになったため急ピッチで作業を進めなければならなかったそうで、結果的に「SOLITUDE」はバンドが満足できる仕上がりではなかったこともあって発売後しばらくしてから廃盤となっていました。僕は「SOLITUDE」を持っていたので本作を購入するか迷ったのですが、彼等の過去作品を聴くうちに新曲がどうしても聴きたくなって本作も買いました。

アルバムの幕開けからして印象が変わっていて「SOLITUDE」の序曲「東風遥か(Far Away A Spring Wind)」が優雅な雰囲気に溢れていたのに対して、本作の①Appassionataは大仰で緊迫感のある曲調でMVも制作されたリードトラック②Earnestに雪崩れ込んでいきます。元々、ALHAMBRA屈指の疾走曲だった②はさらにビルドアップされていて本作から加入したドラマーHideki(MAHATMA)Hibiki(B/LIGHT BRINGER、MARDELAS)のリズム隊が生み出すエネルギーは凄まじく、それに負けじと世良のボーカルも一段とパワフルかつ表現力が豊かになっていますね。そこからオリジナル盤にはなかった近未来的なSEでシームレスに繋がる重厚なミドル③OO (Double O)には日本屈指のグロウラーDOUGEN(Vo/THOUSAND EYES etc)が参加。原曲以上に迫力のある仕上がりになっていて、冒頭3曲の時点で作品として大きく生まれ変わったことが実感できます。

再録曲がパワーアップしているだけでなく新曲の充実振りも見逃せません。世良と今や準メンバーとなっている佐々井 康雄(Vo/GERARD、ex-ARK STORM)のツインボーカルにDOUGENのデス声を加えた④Warning You!はバンド初の英語詞によるナンバーで、どこかワイルドな印象があって新鮮な空気をもたらしていますね。そして極めつけはDie Walkure(2nd「FADISTA」収録)と組曲Siegfried(4th「SIEGFRIED」収録)と続いてきた「ニーベルングの指環」シリーズのスピンオフ的作品だという⑨「Das Rheingold ~ラインの黄金~」の存在です。荘厳なコーラスとギターソロからなる短いインスト新曲⑧Close Your Eyesに導かれて始まるこの曲は過去の名曲シリーズに含まれるに相応しい新たなマスターピースだと思います。個人的には終盤の「にーじーの かーけーはーしがー かーかーる〜♪」という歌詞が乗るパートのメロディが大好きです。「SOLITUDE」もALHAMBRAにしては珍しくコンパクトな作品で悪くないと思っていましたが、今のバンドでレコーディングした「THE EARNEST TRILOGY」を聴くともうあちらには戻れないですね。

【音源紹介】
Earnest

ALHAMBRA「SOLITUDE」(2010)

  • 2019/11/25(月) 00:00:00

SOLITUDE.jpg
【No.537】
★★★(2013)

Yuhki(Key/GALNERYUS)MARGE LITCH在籍時に活動を共にしていた世良 純子(Vo)らと結成したALHAMBRAの3作目。Yuhkiが作曲し、世良が歌詞を書いて歌うというスタイルは従来と同じですが本作では10分越えの大作は姿を消していることもあって、このバンドにしてはコンパクトな歌モノと呼べそうな作風になっています。ALHAMBRA特有の大仰でファンタジックな世界観は薄れ、ポップな側面にスポットが当てられていることもあって従来のアルバムとはやや印象が異なります。またゲストという形ながらALHAMBRAの作品で重要な役割を担ってきた佐々井 康雄(Vo/ARK STORM)が参加していないというのも違和感のひとつですね。

まるで宮廷音楽のように優雅な序曲① 「東風遥か(Far Away A Spring Wind)」に導かれてスタートする②Earnestがいきなりのキラーチューン!幾重にも重ねられたクサいメロディと練り込まれたインストパートが絡み合いながら疾走するこの曲は1st「明日への約束」(2005)収録のMissing You、Orionに匹敵するバンドの代表曲だと思います。また③OO (Double O)はYuhkiのハモンドがグイグイ曲を引っ張っていくミドルテンポで初めの頃は印象に残りませんでしたが、リピートするうちにジワジワと好きになった1曲です。静かな出だしから徐々に熱を帯びていき劇的なエンディングを迎えるタイトル曲の④Solitude、ALHAMBRAのイメージとは一線を画すアニソン風ナンバーでHibiki(B)がリーダーを務めるLIGHT BRINGERっぽさもある⑤「約束の鍵 (Key To The Wish)」といったソフトな楽曲から、ALHAMBRAらしさ満点でベースソロも聴きどころのプログレメタル⑥The Earth (Die Erde)へと続くアルバム中盤も良いですね。その後はデビュー作収録の名曲にしてバンドを代表するスピードチューンのリメイク⑦Orion 2010(冒頭のサビのコーラスが分厚くなりテンポも少し早くなっているようです)を経て、ピアノとボーカルだけでしっとり聴かせる小品⑧「はるうさぎ(Ha・ru・u・sa・gi)」でアルバムは締めくくられます。

楽曲的には②、⑥や再録の⑦のような典型的なALHAMBRA流メタリックチューンを収録しているのは事実ながらこれまで以上に強調されたポップサイドと時折出てくる健康的で応援歌のような歌詞ををどこまで許容できるかで本作の評価が分かれそうですね。個人的にはメタル度が低くなっても、このバンド(というかYuhki)が生み出すメロディは魅力的だと再確認できました。ただ、序曲のインストや再録曲込みで全8曲、40分弱というボリュームは物足りなさを感じますね。この点についてはYuhkiが後のインタビューで「元々はSolitudeをシングルでリリースするつもりだったもののレーベル側の意向でなんとかアルバムの形にした」と語っていていて、ミニアルバムと呼んでもよさそうな尺の短さ、ドラムサウンドが迫力に欠けるといった点も致し方なかったのかもしれません。ちなみに本作はリリース後しばらくして廃盤となり2016年に収録曲の大半をレコーディング、新曲を追加した「THE EARNEST TRILOGY」として生まれ変わっています。

【音源紹介】
Solitude

ALHAMBRA「SIEGFREID」(2012)

  • 2019/11/10(日) 00:00:00

SIEGFREID.jpg
【No.536】
★★★★(2012)
年間ベスト2012年ノミネート作品

デビュー当初からGALNERYUSの鍵盤奏者として活躍するYuhkiを中心にLIGHT BRINGERのリーダーでもあるHibiki(B)も在籍するテクニカル系シンフォニックメタルバンドALHAMBRAの4thアルバム。前作「SOLITUDE」(2010)ではそれまでのアルバムに収録されていた大作はなく、歌モノ寄りのコンパクトな作風だったのに対して今回は大仰な世界観が戻っているように感じます。それを象徴しているのが2nd 「FADISTA」(2007)収録の名曲Die Walkureの続編で4部構成、22分に及ぶ組曲Siegfriedの存在でしょう。過去作品のほぼ全てにゲストとして参加している佐々井 康雄(Vo/ARK STORM)がこれまで以上の存在感を発揮して、オペラティックに歌う世良 純子(Vo)とミュージカルのような掛け合いを見せるこの組曲は圧巻の一言。特にクライマックスを迎える⑨Siegfried Suite #4-All For The Reason「ただ愛のために」はハイライトの連続で大きな感動をもたらしてくれます。

アルバム後半に鎮座する「組曲ジークフリード」が最大の聴きどころなのは事実ながら、前半に収録された楽曲もハイクオリティなものが揃っています。オープニングを飾る①Maze Of Tragedy-水晶の雨 Part.Ⅱ-は第一印象としては地味に感じたもののTarja Turunen(Vo/ex-NIGHTWISH)ばりのソプラノボイスが響くドラマティックチューンで聴く度に味わいが増す1曲です。クラシカルな雰囲気の中でクサメロとYuhkiのオルガンサウンドが躍動する②Perfect Blue、冒頭の泣きのギターと爽やかでありつつもどこか儚いサビが秀逸な③Foreverという疾走曲2連発は実に強力。またバンド初となる梶原 稔広(G) 作のギター主体のインスト④Fleeting Circusを挟んで登場する⑤Dear Friendはバンドのポップサイドに焦点を当てたナンバーで、応援歌のような歌詞も相まって「SOLITUDE」の延長線上にある曲と言えそうです。

ALHAMBRAの作品の中では「FADISTA」が一番好きでしたが圧巻の組曲と名曲②、③を含む本作はそれ以上に気に入っているアルバムですね。作品を重ねる毎に存在感を増している男性ボーカル佐々井の貢献度は大きく「組曲ジークフリード」は彼なしでは成り立たないし、仰々しいその歌唱スタイルはALHAMBRAとの相性も抜群。濃厚で複雑なインストパートが火花を散らす緻密でドラマティックな曲展開でありつつも、難しくなりすぎないキャッチーなメロディの充実振りは過去最高だし、それが結実したのが「組曲ジークフリード」だと思います。そんなメロディの魅力だけでなくサウンドプロダクションも含めて、バンド全体がレベルアップしたと感じさせてくれる高品質な1枚です。

Siegfried Suite #4-All For The Reason

【CD購入録】GALNERYUS「INTO THE PURGATORY」(2019)

  • 2019/10/26(土) 00:00:00

【CD購入録】
INTO THE PURGATORY
GALNERYUS「INTO THE PURGATORY」(2019)

今年の1月にソロアルバム「VORVADOS」を発表したことも記憶に新しいSyu(G)率いるGALNERYUSが早くも完成させた12作目。当初は前々作「UNDER THE FORCE OF COURAGE」(2015)、前作「ULTIMATE SACRIFICE」(2017)に続くコンセプトアルバム3部作の完結編となる予定だったものの、テーマを決めずに自由度の高いアルバムを作りたいという思いから通常の作品を制作することになったそうです。リリース前に公開された⑥The FollowersがGALNERYUSとしては異色でダークな世界観を持っていたため驚きましたが、アルバムとして聴くことで良さが際立つ1曲だと思います。また、これぞGALNERYUS!なスピードチューン②My Hope Is Gone⑦Come Back To Me Again、メロハーテイストが感じられる⑤Never Again、美麗なバラード⑧Remain Behindなどタイプは異なれど彼等らしさに溢れた楽曲が目白押しです。それでいて⑥で聴くことのできる小野 正利(Vo)のオペラティックな歌唱、これまでになかったYuhki(Key/ALHAMBRA)の音使いなど新しい要素があるのもいいですね。GALNERYUSが国産メタルシーンのトップランナーであることを改めて感じさせてくれる1枚です。

ALHAMBRA「A FAR CRY TO YOU~明日への約束~」(2013)

  • 2019/10/07(月) 00:00:00

A FAR CRY TO YOU 明日への約束
【No.535】
★★★★(2013)

GALNERYUSでもリーダーのSyu(G)に次ぐソングライターとして重要な役割を担っているYuhki(Key)が2003年に立ち上げた自身のメインバンドALHAMBRAの1stアルバム。本作は2005年にリリースされていたものの永らく廃盤状態だったため全曲リ・レコーディング、新曲を2曲追加した仕様で2013年に再発されています。僕は入手困難になっていた本作のオリジナル盤を探し回ってようやく購入したこともあって、その数週間後に再発盤が出ることを知った時はショックでしたね(苦笑)。メンバーはALHAMBRAの声としてこれまでの全作品でリードボーカルを務める世良 純子(Vo)を始めとしてYuhkiが在籍していたMARGE LITCHでも共に活動していたメンバーがほとんどだったオリジナル盤に対して、再録盤は2nd「FADISTA」(2007)から2019年現在まで在籍している梶原 稔広(G)LIGHT BRINGERのリーダーでもあるHibiki(B)も含めたラインナップとなっています。

シンフォニックなプログレハードを基本としつつメロパワの勢いと分かりやすさも取り入れているところがALHAMBRAの強味だと思っているのですが、このデビュー作の時点で既に音楽性は確立されていますね。オリジナル盤の時点から演奏陣はテクニシャン揃いなので濃密なインストパートには圧倒されるし、それに負けない個性的な歌声で奮闘する世良のボーカルパフォーマンスもALHAMBRAの大きな武器となっています。彼女のオペラティックで突き抜けるようなハイトーンは独特の声質なので好みが分かれそうなのは事実ながら、その歌唱力と存在感は一級品です。楽曲的にはプログレッシブでありつつ歌メロは親しみやすくストレートなALHAMBRAらしさが色濃く表れた疾走曲③Missing You、⑤Orionがハイライトになっていますね。その間に挟まれたドラマティックな④Doll's Solitude-人形の家-、世良の清らかなボーカルが映えるバラード⑥Your Favorite Melodies-藍色のエチュード-、演奏陣が火花を散らすインスト曲でありながら終盤は男女ボーカルによるコーラスも登場する⑧God Keeperも気に入っています。

僕は新曲が聴きたくて2005年のオリジナルと2013年のリメイク作の両方を購入したのですがYuhki作の⑩Radiance-星が生まれた日-とHibiki作の⑪Arethaはどちらも強力なナンバーですね。特にGALNERYUSを連想させるヒロイックなメロディがカッコいい⑩はALHAMBRAの全レパートリーの中でも屈指の名曲です。またリメイク盤で感じられた変化は世良の歌声が一段と前にも出ていてハイトーンが耳に突き刺さる、6人目のメンバーと呼んで差し支えないほどALHAMBRAに欠かせない佐々井 康雄(Vo/ARK STORM)によるコーラスの存在感がアップしている、YuhkiがJens Johansson(Key/STRATOVARIUS)っぽい音色を使う場面が増えている、ということでしょうか。再発盤もオリジナルに忠実なアレンジなので作品としては2005年時点で完成の域に達していたのだと思います。これだけの力作が廃盤というのはあまりに勿体ないので、このアルバムが普通に入手できるようになったのは嬉しいですね。

【音源紹介】
Missing You(2005年バージョン)

【CD購入録】DUAL ALTER WORLD「ALTER EGO」(2019)

  • 2019/09/28(土) 00:00:00

【CD購入録】
ALTER EGO
DUAL ALTER WORLD「ALTER EGO」(2019)

テクノ/トランスサウンドとメロデスを融合させたスタイルで注目を集め、今年に約8年振りとなるフルアルバムを発表したBLOOD STAIN CHILDのソングライターRyuとメタル好きの声優、小岩井 ことりが結成したDUAL ALTER WORLDの1stアルバム。声優と仕事をする機会の多かったRyuが小岩井にオファーしたことがきっかけで誕生したそうです。音楽性としては声優にしては珍しいグロウルも取り入れたメロディックメタルでBLOOD STAIN CHILDとは一味違う仕上がりになっています。シンフォアレンジを纏いながら激しく疾走したり、優しいメロディを聴かせたりするサウンドは僕好みだし、小岩井の歌唱についても流石の安定感と表現力を誇っていて異なる声色を駆使した③CONSOLE1などは声優シンガーとしての強みが表れていると思います。また本作は「遠い未来の世界を舞台に暗殺者の少女が壊れたアンドロイドと出会うことで心境が変化していく」というコンセプトアルバムで、シナリオパートがほぼ1曲置きにUAD 01〜08としてトラックを分けて収録してされているため全19曲という曲数の多さが目に付くものの実際の楽曲パートとしては11曲というボリュームです。セリフパートについては「声優、小岩井 ことりの本領発揮」という印象で思わず聞き入ってしまいます。語りでストーリーを説明するという手法はDRAGON GUARDIANを彷彿とさせますが、曲中にセリフが入り場面説明をしていたDRAGON GUARDIANに対してDUAL ALTER WORLDは楽曲とシナリオがトラック毎に分かれているので曲だけをピックアップして聴けるというのもいいですね。声優がリードボーカルのため色眼鏡で見られるかもしれませんが僕はかなり気に入っています。

SCRAMBLED SOUL CIRCUS「SCRAMBLED COLORS」(2015)

  • 2019/09/01(日) 00:00:00

Scrambled Colors
【No.534】
★★★★★(2015)
年間ベスト2015年第1位

LIGHT BRINGER、ART OF GRADATIONで類稀なるメロディセンスを発揮していたKazu(G、Vo)TEARS OF TRAGEDYの女性ボーカルHaruka、元CROSS VEIN〜OCTAVIAGRACEYouske(B)と立ち上げたポップロックバンドSCRAMBLED SOUL CIRCUSの1stにして唯一のアルバム。当初は3人によるユニットとして活動、そこにSeiya(G)、Satoru(Ds)という元LIGHT BRINGER〜ART OF GRADATION組が加わったことでバンドへと発展し、SCRAMBLED SOUL CIRCUSという名前もその頃に決まったそうです。アルバム発表時には残念ながら脱退しているもののReanne(Key/ART OF GRADATION)も在籍していたようなので、アルバム1枚のみで解散してしまったART OF GRADATIONの別形態または発展形と呼んでいいのかもしれません。

サウンド的にはART OF GRADATION以上にHR/HM度は減退していて、より幅広い層にアピールできそうなハードポップとなっていてLIGHT BRINGERとの共通点は少ないですね。⑨「ハミング♪」のメロディに壮大なアレンジを施した序曲①Scrambled Soul Orchestraから勢いのあるギターで幕を開ける②「旅立ちの唄」でアルバムはスタート。爽やかなピアノの音色と共に駆け抜ける③”Shiny、先行でMVも制作された④WIND!!と、ここまではポジティブな雰囲気に溢れた楽曲が続きます。ちなみに④はART OF GRADATION「CONCENTRATION」(2013)収録の名曲SKY!!に通じる世界観がありますね。ここまでの軽やかな曲調から一転して⑤Hide myselfは重厚かつシンフォニックなナンバーで翳りのあるメロディが素晴らしいし幻想的なアコースティックバラード⑥「オリオンの夜」、本作で最もハードな
⑦Re:START
、タイトルからして③と対になっていることを感じさせる哀愁のミドル⑧Shade"と続く流れは強力です。終盤も明るいメロディが弾ける⑨、作品の締めくくりに相応しいスケール感がある⑩「Dream State~親愛なる仲間達へ~」も含めてKazuのメロディが好きな僕の期待にしっかりと応えてくれる1枚となっています。

そんなKazuが生み出す珠玉のメロディを歌うHaruka嬢の存在も大きいですね。Fuki(Vo/LIGHT BRINGER)のような圧倒的なパワーはありませんが声そのものに宿る翳りというか、不思議な魅力があって聴き惚れてしまいます。またTEARS OF TRAGEDYよりもソフトな路線ということもあってか低音域で歌う場面が多く、Harukaの新しい一面を見たような気もしますね。ただ歌詞については⑨で飛び出す「ルンルン ハミング〜♪」を筆頭に歌詞に登場する人物の年齢層が10代〜20代前半のように思えるのでアラフォーの僕としては赤面ものの内容が多くHR/HMリスナーにとっても好みが分かれそうです。CROSS VEIN、LIGHT BRINGER、TEARS OF TRAGEDYといった国内屈指のメタルバンドに在籍していた(している)メンバーによるバンドとは思えないほど軽いサウンドですがハードポップも好んで聴く僕のようなリスナーにとっては間違いなく名盤ですね。KazuはLIGHT BRINGER脱退後にART OF GRADATION、SCRAMBLED SOUL CIRCUSと立て続けにバンドを立ち上げたものの、本作を最後に表舞台から姿を消してしまっているのが残念…。いつか復活してもらいたいですね。

【音源紹介】
WIND!!

【CD購入録】人間椅子「新青年」(2019)

  • 2019/08/13(火) 00:00:00

【CD購入録】
新青年
人間椅子「新青年」(2019)

今年でデビュー30周年を迎える国産ハードロックの大ベテラン人間椅子の21作目。このバンドの名前は以前から知っていたものの「暗くて重たい楽曲が主体のオカルト風のバンド」というイメージが強かったので、これまで聴くことはありませんでした。ところがYouTubeのお勧め動画として出てきた本作のリードトラック⑬「無情のスキャット」を怖いもの見たさ(?)でクリックしてみると、そのドラマティックで悲哀に満ちたサウンドに魅了されアルバムを聴いてみることに。このバンドはドゥーム/ストーナー系に分類されることもあるようで、本作でもおどろおどろしい側面を見せつつもノリの良さやキャッチーなメロディもしっかりと存在していて予想以上に楽しめました。例えば不穏な歌詞とメロディで迫る②「鏡地獄」などは僕が抱いていた人間椅子のイメージそのものですが、「ドッキーン♪」「ズッキーン♪」といった通常では考えられない掛け声が印象的な⑥「いろはにほへと」、「愛し合ってるかい?」なんて歌詞が飛び出す⑦「宇宙のディスクロージャー」も楽しげでコミカルな一面も見せてくれます。終盤では切なく儚い旋律が胸に沁みるバラード⑪「月のアペニン山」もさることながら⑬のインパクトが絶大で、この曲は2019年の年間ベストチューン候補に入ってくると思います。人間椅子は歴史が長く、多作なバンドなので全ての作品をチェックするのは大変そうですが過去のアルバムも少しずつ聴いていきたいですね。

ART OF GRADATION「CONCENTRATION」(2013)

  • 2019/08/08(木) 00:00:00

CONCENTRATION.jpg
【No.533】
★★★★(2013)
年間ベスト2013年第4位

3rd「GENESIS」(2012)制作時までLIGHT BRINGERに在籍しDream!を始めとする名曲を生み出してきたKazu(G、Vo)がラブリー脱退後に立ち上げたART OF GRADATIONの1stアルバム。作曲面では勿論Kazuが中心となりつつ、キーボード奏者Reanne(後にOCTAVIAGRACEに在籍)も3曲を手掛けています。それ以外のメンバーはアニメ声タイプのMichiruと元CROSS VEINという経歴を持つIbukiの女性ツインボーカル、2012年までLIGHT BRINGERでプレイしていたSeiya(G)、Satoru(Ds)というラインナップとなっています。Satoruはアルバム完成後の加入ですがLIGHT BRINGERのソングライターを含む元メンバー3人を擁するART OF GRADATIONがLIGHT BRINGERの4th「SCENES OF INFINITY」(2013)と同日にアルバムをリリースするということで、ラブリーファンとしては発売日をかなり楽しみにしていた記憶がありますね。

本編に登場するメロディをもとにした序曲①Concentration(instrumental)に続いて挨拶代わりに繰り出されるKazu作の②REAL、Reanne作の③determinationがどちらも初めて聴いた時から口ずさめてしまうナンバーで掴みは上々。しかし本作の真価はそれ以降の楽曲にこそあると思います。バッハのフーガの旋律を奏でるパイプオルガンに始まりチェンバロ風のキーボードがネオクラシカルな雰囲気を放つ④「仮面の月」、哀愁のメロディが冴えるミドル⑤Rain Pain Rainから曲名が示す通りの飛翔系メロパワチューンにして本作のハイライトとなっている⑥SKY!!に繋がる流れが素晴らしいですね。⑦「ハジマリの空」ではモダンかつヘヴィな側面も見せてくれるし、和のテイストが漂う哀メロチューン⑧「サクラビト」、キャッチーなサビが耳から離れないアニソンタイプの⑨Zonic Elementsなども大好きな曲です。アルバム終盤もJ-POPのヒットバラードとしてラジオから流れてきそうな⑩daily、それまでの楽曲にはなかったグルーヴ感のある演奏を取り入れつつサビは伸びやかで希望に満ちた⑪Our Songといった佳曲が並びます。ただし初回プレス限定のボーナストラック⑫「奏」は本編に比べると少し物足りないかな。

LIGHT BRINGERのサウンドはメロディックメタル+アニソン+90年代J-POP+超絶技巧インストで構成されていたのに対して、ART OF GRADATIONはメタリックな要素は味付け程度で90年代J-POPに軸足を置きつつアニソンテイストも取り入れている感じですね。プログレメタル系の曲を生み出すHibiki(B/LIGHT BRINGER)、LIGHT BRINGERのポップサイドを担っていたKazuというイメージそのままに本作でも彼のメロディセンスが存分に発揮されています。そのメロディを伝えるシンガーについてはトリプルボーカル体制をとっているものの曲の大半を歌うのはMichiruでIbukiとKazuはサポートに徹している感が強いのでシンガーが3人いることが大きな武器になっているというわけではないのが残念。個々の歌唱力を見てもFuki(Vo/LIGHT BRINGER)と比較するとその差は大きいと言わざるを得ないですね。ただし良くも悪くもクセのないMichiruの歌はメロディの魅力を真っ直ぐに伝えるという意味ではアリだと思います。またKazuの歌は確実に上手くなっていますね。ボーカル面に物足りなさを感じるし、HR/HMを期待して聴くとかなりソフトで拍子抜けするのは事実ながら、それを補って余りある珠玉の旋律が味わえる1枚に仕上がっています。これだけの充実盤を生み出してくれたART OF GRADATIONですが本作のみでバンドは解散…というかSCRAMBLED SOUL CIRCUSに移行したようです。

【音源紹介】
SKY!!

【CD購入録】DEVIL WITHIN「DARK SUPREMACY」(2019)

  • 2019/07/26(金) 00:00:00

【CD購入録】
DARK SUPREMACY
DEVIL WITHIN「DARK SUPREMACY」(2019)

僕は未聴ですが「アンコウ」の愛称で親しまれている国産ラウドロック/メロデス系バンドUNDEAD CORPORATIONのリーダーでもある「社長」ことKENSUKE(B)KOUTA(G/THOUSAND EYES)、女性グロウラーのU(MERGINGMOON)に声をかけたことがきっかけで誕生したDEVIL WITHINのデビューアルバム。本作で聴けるのは怒涛のアグレッションと泣きのギターが交錯するデスラッシュ/メロデスなのでTHOUSAND EYESを彷彿とさせる要素が多いですね。DEVIL WITHINの場合、ピアノによるインスト⑥In the Moonlight以外は全曲が前のめりに疾走するタイプなので潔さを感じる反面、アルバムとしてはもう少し抑揚が欲しかったかなという気もします。とはいえ個々の楽曲はどれも身を乗り出してしまうほどのカッコよさを誇っているので、将来が楽しみな国産メロデスバンドがまたひとつ登場したと言えそうですね。

【CD購入録】BLOOD STAIN CHILD「AMATERAS」(2019)

  • 2019/07/22(月) 00:00:00

【CD購入録】
AMATERAS.jpg
BLOOD STAIN CHILD「AMATERAS」(2019)

ギリシャ人シンガーSophia嬢を迎え、トランスとメロデスの融合としてひとつの完成形を提示してくれた前作「EPSILON」(2011)発表後もシングル「LAST STARDUST」(2014)、「NEXUS」(2016)やEP「TRI ODYSSEY」(2017)をリリースするなどしていたものの、フルレンスアルバムとしては約8年振りとなるBLOOD STAIN CHILDの6作目。今回リードボーカルを担当しているのはSophia脱退後に加入したフィーメルシンガーKikiでも、その後任の男性ボーカルSaikaでもなく4th「MOZAIQ」(2007)で歌っていたSadew(Vo)が復帰を果たしています。過去に在籍したメンバーも迎えて制作した再録ベスト盤「THE LEGEND」(2018)のレコーディングにSadewが参加したことがきっかけで彼の再加入が実現したようですね。和製Anders Friden(Vo/IN FLAMES)と評されることもあるSadewの復帰は嬉しいし、本編ラストの⑪「皇~sumeragi~」などはバンドの新たな代表曲と呼びたくなるほどの出来栄えとなっています。全体的には「MOZAIQ」、「EPSILON」の方が僕好みのメロディが多いように思いますが、本作もBLOOD STAIN CHILDらしいサウンドが楽しめました。次のアルバムはまた8年後と言わず2〜3年のスパンで聴きたいですね、シンガーはもちろんSadewで。

【CD購入録】GYZE「ASIAN CHAOS」(2019)

  • 2019/07/18(木) 00:00:00

CD購入録
ASIAN CHAOS
GYZE「ASIAN CHAOS」(2019)

2018年末に中心人物Ryoji(Vo、G)の実弟でもあるShuji(Ds)が体調不良を理由にバンドから一時離脱することを発表、それに伴い従来のトリオから4人による新体制へと移行したGYZEの4作目。Ryojiがインタビューで「今はバンドメンバーとしてではなく家族としてShujiを見守っている」と語っていたので、新作は少し先になるかと思っていましたが早くもアルバムを届けてくれたバンドに拍手を送りたいですね。また内容の方もこれまで同様、泣きのギターメロディが乱舞しているだけでなく、過去作品では物足りなく感じることもあった歌メロに関しても耳に残るパートが増えていて充実の1枚に仕上がっています。雅楽の演奏者をレコーディングに招いたということもあって和楽器ならではのテイストと劇的なメロディが見事に融合している本作の強みは序曲の①Far Eastern Landから②Asian Chaosに雪崩れ込むアルバム冒頭でいきなり発揮されていますね。シングル「龍吟」(2018)にも収録されていた⑦Japanese ElegyMarc Hudson(Vo/DRAGONFORCE)が客演し日本語ボーカルを披露している⑧The Rising Dragonは試聴した時から強力なナンバーだと思っていましたが、アルバムにはそれ以上の楽曲が並んでいると思います。特に「かぁな しみぃ(哀しみ)、くぅる しみぃ(苦しみ)」と歌うサビが耳から離れない⑨White Territories、重いテーマを扱った⑩1945 Hiroshimaという日本語詞メインの本編ラスト2曲は僕の琴線に触れまくりです。現時点ではGYZEの最高傑作と呼びたいくらいの手応えを感じています。

【CD購入録】MARY'S BLOOD「CONFESSiONS」(2019)

  • 2019/06/21(金) 00:00:00

【CD購入録】
CONFESSiONS.jpg
MARY'S BLOOD「CONFESSiONS」(2019)

デビューアルバム「COUNTDOWN TO EVOLUTION」(2014)から不動のメンバー4人で活動を続けるガールズメタルバンドMARY'S BLOODの5作目。前作「REVENANT」(2018)で曲調の幅を広げた感のあった彼女達ですが、本作でもその拡張路線は継承されています。今回のアルバムは「闇」をテーマにしているということもあってか①Labyrinth of the Abyssからして従来のオープニングチューンとは感触の異なる怪しさを感じさせます。EYE(Vo)が「かもめ かもめ♪」と歌う高揚感あるサビがカッコいい②Karma、ヘヴィメタルの王道をゆく③「アルカディア」などは僕の好きなMARY'S BLOOD像に近い楽曲ですが、それ以降はエスニックな雰囲気漂う④Laylah、軽快で明るめの⑥Hello、パンキッシュに弾ける⑧HIGH-5など、これまでにない曲調も目立ちますね。個人的には③のようなスカッとするパワーメタル曲がもっと聴きたいというのが本音ですが、バンドとしての引き出しを増やすという意味では今回のような音楽性もありかなと思っています。

【CD購入録】FUKI「MILLION SCARLETS」(2019)

  • 2019/06/17(月) 00:00:00

【CD購入録】
MILLION SCARLETS
FUKI「MILLION SCARLETS」(2019)

今年の1月にリリースされたSyu(G/GALNERYUS)のソロ「VORVADOS」にゲスト参加し2曲でリードボーカルを取っていたことも記憶に新しい女性シンガーFuki(FUKI COMMUNE、DOLL$BOXX、UNLUCKY MORPHEUS etc)のソロアルバム。彼女にとって初のソロプロジェクトとなったFUKI COMMUNE同様、LIGHT BRINGER時代の盟友Mao(Key)が全面的にサポートしているものの外部ソングライターによる楽曲の割合が増えていることもあってHR/HM度は減退しています。オープニングを飾る①Bloody Rain、②「君の居ない世界」はパワーメタル系ではあるもののそれ以降は「自分が聞きたいFukiの歌声”をめいっぱい収録した」と自ら語るのも頷けるほど、これまで以上に幅広い曲調と歌い方を披露。Jill(Violin/UNLUCKY MORPHEUS)の客演が光るゴシカルな⑤「絶戒のJuliet」、ピースフルなコーラスが印象的な和やかソング⑧「子供のように」、Fukiのセリフパートもあるアイドルポップ風⑨Zinger♡Ringer♡Gang♡Love辺りがその顕著な例でしょうか。そんな⑨から本作随一のシンフォニックメタル曲⑩Sacred Bones Riotに繋がる落差もインパクト大な本作はこれまでで最も振り幅の大きなアルバムなのでメタルシンガーFukiのソロとして聴くと意表を突かれますが、HR/HMだけでは表現しきれないFukiの歌を楽しむ1枚としてはFUKI COMMUNE以上に最適だと思います。

FUKI COMMUNE「WELCOME!」(2016)

  • 2019/06/13(木) 00:00:00

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【No.532】
★★★★(2016)
年間ベスト2016年第5位

2014年いっぱいでLIGHT BRINGERが活動休止となってからもNozomu Wakai's DESTINIA、SOUND HORIZONへのゲスト参加やUNLUCKY MORPHEUSで活動をしていた稀代の歌姫FukiによるソロプロジェクトFUKI COMMUNEの1stアルバム。本作がリリースされる頃からアニソン系ヘヴィメタルシンガーと呼ばれるようになった気がするFuki嬢ですが、インタビューによるとソロでアニソン歌手を目指したいという本人の想いからFUKI COMMUNEが誕生したらしいので、この呼び名はアーティスト側の意向でもあるようですね。制作面でパートナーを務めるのは現時点でLIGHT BRINGERのラストアルバムとなっている「MONUMENT」(2014)でメインソングライターを務めたMao(Key)で幻想的なバラード⑥「朝な朝な」、尺八の音色とともに疾走する曲調が陰陽座の代表曲でアニメ「バジリスク」の主題歌にもなった「甲賀忍法帖」を連想させる⑦「狂い咲け雪月華」を除く全曲を彼が作曲、Fukiが作詞しています。本作は「MONUMENT」の残り香を感じさせつつアニソン要素が強まっているため、インディーズ時代のLIGHT BRINGERから濃密なインストパートを取り除くとFUKI COMMUNEになると言うこともできそうですね。

デジタリーなイントロダクション①Welcome to my dream - Instrumental -に導かれて登場する②「月が満ちる前に」、③「輝く夜へようこそ!」はどちらもキャッチーなサビメロで幕を開ける楽曲で心を掴まれました。この2曲はアニソンっぽさを強く感じさせつつも、編曲にMaoと若井 望(G/Nozomu Wakai's DESTINIA)が関わっていることもあってかメタリックな魅力も兼ね備えていて、本作のみならずFUKI COMMUNEを象徴するナンバーと言えそうですね。続く④I'll never let you down!はMaoのオルガンプレイが耳に残るハードロックでFukiもこれまで披露してこなかった乱暴な歌い方や低い唸り声を取り入れています。その一方で外部ライターによる⑥では囁くように歌うFukiが新鮮です。個人的にはヒロイックなメロデイが駆け抜ける⑨Liberator、序盤はバラード調ながら後半は一転して激しくドラマティックな展開が聴き手を飲み込んでいく⑩「未来」、LIGHT BRINGERの3rd「GENESIS」(2012)収録のLove you♡と同系統の爽快系スピードチューン⑪Sail on my loveのラスト3曲がハイライトとなっていますね。

LIGHT BRINGERやDOLL$BOXXに比べると聴き込むほどに好きになる要素は少ないですが、やり過ぎ感かなくとっつきやすい作風なので普段ヘヴィな音楽を聴かないリスナーにとってのHR/HM入門盤には最適な1枚だと思います。またソロプロジェクトというだけあってFukiのボーカルに焦点が当てられているし演奏陣もそれほど前に出てこない音作りのため、彼女の歌を存分に味わえるのもいいですね。異なる声色を駆使しながら楽曲のコンセプトにあわせて多彩な表情を見せつつも「Fukiの声」という太い芯が通っているため彼女の世界観にグッと引き込まれます。HR/HMシンガーとしてのFukiを期待すると肩透かしをくらう要素もあるのは事実ながら、アニソン要素も多分に含んでいたLIGHT BRINGERでシーンに登場したFuki初のソロプロジェクトとしては申し分ない仕上がりとなっていると思います。

【音源紹介】
「輝く夜へようこそ!」(Music Video Short ver.)

DOLL$BOXX「DOLLS APARTMENT」(2012)

  • 2019/05/30(木) 00:00:00

DOLLS APARTMENT
【No.531】
★★★★★(2013)

リードシンガーのArmmyが体調不良のため脱退してしまうという危機に直面したガチャピンことGACHARIC SPINのツアーにFuki(Vo/LIGHT BRINGER)がサポートボーカルとして参加したことがきっかけで誕生したDOLL$BOXXの1stアルバム。「ガチャガチャな4人が作り出す高速スピンサウンド」を掲げるGACHARIC SPINとアニソンテイストもあるメロディックメタルを聴かせるLIGHT BRINGERが合体することでどんなケミストリーが起きるのか興味津々でしたが、期待を裏切らない仕上がりとなっています。基本的にはガチャピン寄りの音楽性でありつつ、両バンドに共通する「音を詰め込んだ濃密なサウンドスタイル」はしっかり継承(というか更に強化)されているし、それに負けじとFuki嬢のボーカルも声を張り上げて歌う場面が多くて圧倒されます。

そんなパワー漲るアルバムを象徴するかのようにグロウルも交えながら畳み掛けてくる①Loud Twin Stars、キャッチーな掛け声パートで一緒に歌いたくなる②Merrily High Go Roundで掴みはバッチリ。Fukiの凄まじい声量に改めて感心させられる③Take My Chanceもインパクトがあるし、FチョッパーKOGA(B)のベースラインが気持ちいい④monopolyも好きですがそれ以降は更に強力です。曲名通りの勇ましさを感じさせる⑤「ロールプレイング・ライフ」、Fukiの絶品歌唱が堪能できるモダンバラード⑥fragrance、本作では最もメタリックな疾走ナンバー⑦KARAKURI TOWNを経て、外部ライターによる曲ながらサビメロが絶品なキラーチューン⑧「おもちゃの兵隊」に至る流れが素晴らしいですね。それまでの濃厚な楽曲とは対照的にシンプルな曲調が光る⑨Doll’sBoxも締めくくりに相応しいと思います。GACHARIC SPINのリメイク⑩「ヌーディリズム($ヴァージョン)」はボーナストラックのような位置付けでしょうか。

正直なところ聴き始めの頃は無機質なサウンドプロダクションに違和感があったし、押しまくるスタイルに聴き疲れやFukiの低音域にぎこちなさを感じたりしていたものの、それ以上に魅力的な楽曲群にねじ伏せられてしまいました。ただ⑩の歌に関してはFukiだと余裕がありすぎて、オリジナルでオレオレオナ(Key、Vo)はな(Ds、Vo)のツインボーカルが醸し出す独特の緊迫感が肝だと思っていた僕としては原曲の方が好きですね。といいつつもGACHARIC SPINのどの作品よりも好きだし、LIGHT BRINGERのアルバムと比較しても名盤「SCENES OF INFINITY」(2013)に次ぐお気に入り盤となっています。個性的な5人のメンバーが一体となって迫ってくるDOLL$BOXXサウンドは数あるガールズバンドの中でも一際輝いていますね。また本作の全10曲うち⑩を除く9曲のMVが制作されている辺りにレーベル側も力が入っていることが窺えます。

【音源紹介】
「おもちゃの兵隊」

【CD購入録】JUPITER「ZEUS~LEGENDS NEVER DIE~」(2019)

  • 2019/05/20(月) 00:00:00

【CD購入録】
ZEUS~LEGENDS NEVER DIE~
JUPITER「ZEUS~LEGENDS NEVER DIE~」(2019)

このブログでも紹介したことのあるヴィジュアル系メタルバンドVERSAILLESが2012年に活動休止後、元メンバーが2013年に立ち上げたJUPITERの3rdアルバム。VERSAILLESの演奏メンバー4人がJUPITERを結成、ボーカルのKAMIJOはソロ活動をしていたことは知っていましたがどちらもこれまで聴く機会を逃していました。僕がJUPITERに注目するようになったのはCONCERTO MOONの元シンガー久世 敦史(JUPITERではKUZE名義)が加入したこと、コメント欄でお薦めいただいたB!13さんを始め、各所で評価が高かったのがきっかけです。今回のアルバム以外は聴いていませんが率直な印象としてはヴィジュアル系っぽさは希薄で、メロディックメタルの好盤という感じでしょうか。序曲の①New World Orderから②Theory of Evolution、③Beyond the Horizonという疾走曲に繋がる流れはメロパワ好きとしては熱くなるし、ごった煮感のある④Drastic NightAMARANTHE風のモダンな⑤SHOW MUST GO ONなど幅の広さも見せてくれるのも好印象。そして極め付けは11分に及ぶエンディング曲⑬Zeus:Ⅰ.Legend Never Die / Ⅱ.Conversations with Godで、GALNERYUSを想起させる勇壮でクサいメインメロディを前半はスピーディーに、後半は大仰に聴かせる展開に引き込まれます。メインソングライターのHIZAKI(G)曰く、日本を代表するメロスピバンドを目指しているそうですが、そうなり得る可能性は十分あると思うのでこれからも注目したいですね。

LIGHT BRINGER「MONUMENT」(2014)

  • 2019/04/23(火) 00:00:00

MONUMENT.jpg
【No.530】
★★★(2014)
年間ベスト2014年ノミネート作品

アルバム発売の僅か数日前にあたる2014年11月1日に年内をもって無期限の活動休止に入ることを発表したLIGHT BRINGERの5作目にして現時点でのラストアルバム。活動休止の主な要因はリーダーでメインソングライターでもあるHibiki(B/ALHAMBRA)が燃え尽き状態に陥ってしまったことにあるようでHibikiが脱退を申し出たところ、メンバー達は彼抜きでLIGHT BRINGERを続けるのではなく活動休止を選んだのだそうです。そんなHibikiのモチベーションの変化は作曲クレジットにも如実に表れていて、前作「SCENES OF INFINITY」(2013) では全ての作曲に関わっていたのに対して今回は2曲のみで大半はMao(Key)のペンによる曲となっています。活動休止を発表した当初のコメントではHibikiが音楽活動そのものから身を引いてしまう可能性すらありそうでしたがYuhki(Key/GALNERYUS)率いるALHAMBRAにはそのまま在籍しているし、2017年には北の凶獣SABER TIGERに加入するなどベーシストとしては今も精力的に活動しています。インタビュー記事などを読んでいても彼が曲を書くときには細部にまで強いこだわりを持っているように感じられたので、創作面から距離を置きプレイヤーに徹したかったということなのかもしれません。

メインソングライターが代わりHibiki BRINGERからMao BRINGERとなったことにより作風も変化していて前作に溢れていた力強さとメタリックな印象は後退。それに合わせてFuki(Vo)のボーカルは更に幅を広げていてアメリカンなハードロック④Dicerではくだけた歌い方、ポップサイドに振り切れた⑤「魔法」では力を抜いた歌唱を披露しています。Maoが書く楽曲は淡々と流れていく印象が強いため、Hibiki曲を主体とした中に数曲あるくらいだとほどよいアクセントになるのですがMao曲メインの作品となると地味に感じてしまうというのが正直な感想です。一般的に見れば十分魅力的なのは事実ながら、LIGHT BRINGERの過去作品と比べるとインパクトに欠ける感は否めませんね。

ハイライトとなっているのは本作では浮いてしまうほどのメタリックチューン⑥ICARUS、そしてアルバム本編を⑧monumentという、Hibikiが関わった2曲ですね。特に⑧は序曲①「旅途」に続く疾走曲②Clockwork Journeyと対になった歌詞らしいのですが「時計仕掛けの旅はここで途切れている」という歌い出しを始めとしてバンドの終わりを連想させる内容なので、これまでLIGHT BRINGERを応援してきた身としてはウルっときてしまいます。個人的には静寂の後に「カチッ…カチッ…」と秒針を刻むSEが入り、そこからサビに繋がる4:45辺りで胸が熱くなりました。ひとつの作品として見るとLIGHT BRINGERの中ではお気に入り度は高くありませんが、本作のように落ち着いたアルバムの先にとんでもない名盤を生み出してくれるのではないかという気がするだけに彼等の「次」が聴きたかったですね。LIGHT BRINGERが活動を再開してくれることを心から願っています。

【音源紹介】
monument

【CD購入録】HIDE BOUND「THE CURSE REDEMPTION」(2017)

  • 2019/04/11(木) 00:00:00

【CD購入録】
THE CURSE REDEMPTION
HIDE BOUND「THE CURSE REDEMPTION」(2017)

2002年に結成された神奈川出身のメロディック・デスメタルバンドHIDE BOUNDの1stアルバムを買いました。僕はこのバンドのことを知らなかったのですがメンバーの方から直接メールをいただいたことがきっかけで、YouTubeでトレイラーをチェックしてみたところ好感触だったので購入した次第です。アルバムの根幹となっているのはブルータルなデスメタルでありながら、そこに流れ込んでくる叙情メロディがなかなか強力。幕開けを飾る①The Curse Temptationはこの手のバンドには珍しいオーケストレーションを導入したスケールの大きいイントロ、それに続く②Teratogenesisは激しいドラムと獰猛なデスボイスで始まる爆走チューン!サビの裏で流れる①でも用いられていた泣きメロは僕の琴線に触れまくりだし、それを受け継ぐギターソロで更にテンションが上がりますね。本作の中では攻撃性控えめでメロディ重視の⑤Daybreakのような曲があるのも好印象。またエンディングの⑩Poetryではクリーンボイスで歌うパートを取り入れていて良いアクセントになっています。力で押しまくる楽曲が大半を占めるため、メロディ重視の僕としては通しで聴くとやや一本調子に感じる場面もありますが結成から15年の時を経て完成した初めてのアルバムだけに曲単体としては聴き応えがありますね。このところ活況を見せている国産メロデスシーンに新たな注目バンドが現れました。

LIGHT BRINGER「SCENES OF INFINITY」(2013)

  • 2019/03/31(日) 00:00:00

SCENES OF INFINITY
【No.529】
★★★★★(2013)
年間ベスト2013年第1位

メジャーデビューシングル「NOAH」(2011)発売前にソングライターの1人でnoahも作曲していたKazu(G)がバンドを離脱、メジャー第1弾アルバム「GENESIS」(2012)リリース後にはSeiya(G)、Satoru(Ds)が脱退するなどメンバーチェンジが相次いでいたLIGHT BRINGERのメジャー2作目にして通算4枚目となるアルバム。JaY(G)Yumi(Ds)を迎えた新体制の第1弾となる本作はグッとメタル度を増した仕上がりとなっています。前作はこのバンドにしてはキャッチーさを抑え、深みを増したように感じられる作風でしたが今回は「GENESIS」の路線を継承しつつ一度聴いただけでガツンと来るインパクトがありますね。そんな特色は緊張感溢れるイントロとFuki(Vo)の強力なシャウトが響く①Hyperionでいきなり発揮されています。これまで以上に壮大な世界観が広がっていて、冒頭からエンディングに至るまで大仰かつ濃密なサウンドは圧巻です。

そんなオープニングの勢いを引き継ぐ軽快なアップテンポ②Fallen Angelを挟んで繰り出される③ifはアニソンテイストと切ないメロディが高次元で融合し、ドラマティックに展開していくメタリックチューンで①から③までの畳み掛けは凄まじいものがあります。これまでにはなかった怪しさが漂う④「孔雀とカナリア」、曲調と歌詞の両方にダークな雰囲気が感じられる⑤「人形が見た夢」辺りは新機軸と言えそうだし、LIGHT BRINGERがFukiだけのバンドではないことを雄弁に語るインスト⑥Eau Rougeから懐かしさを感じる歌謡曲タイプ⑦Hydrangeaに繋がる構成もグッド。ここまでも充実した内容の本作ですがHearn's HeavenDream!に匹敵する「これぞラブリー!」な名曲にして、インディーズ時代の1st「TALES OF ALMANAC」(2009)に登場する男女の後日譚を描いた⑧「Tales of Promise~天国に寄せるポエトリー~」が大きなハイライトとなっていますね。そしてキーボードを主体とした⑨Infinite Fantasyは最後に少しだけボーカルが入る2分弱の小品。本作には10曲が収録されていますがエピローグのようなこの曲が事実上のラストトラックだと思っています。

⑩VenusはLIGHT BRINGERとしては珍しくオルガンが引っ張っていくハードロックで僕は直感的にDEEP PURPLEを連想しました。歌詞も他曲とは一線を画す砕けた感じなので陰陽座でいうところのお祭りソングの位置付けにあたる曲でしょうか。過去にLIGHT BRINGERの代表曲を生み出してきたKazuを欠いたバンドがどう変化するのか注目していましたがほぼ全曲をリーダーのHibiki(B/ALHAMBRA)が手掛け、一部をMao(Key)と共作することで完成した本作は骨太でメタリックな印象が強く僕好みですね。それでいて⑦や⑧のようにKazuが書きそうな曲もあって良いアクセントになっているのも見逃せません。僕にとってラブリーの最高傑作はこのアルバムですね。

【音源紹介】
Hyperion