FORTUNE「MAKING GOLD」(1993)

  • 2014/09/02(火) 00:00:00

MAKING GOLD
【No.406】
★★★(1995)

先日記事をアップしたMASQUERADE同様、ゼロ・コーポレーションに見出だされて日本デビューを果たした叙情派北欧メタルバンドFORTUNEの1stアルバム。MASQUERADEがTNTから影響を受けていたのに対して、このバンドはSILVER MOUNTAIN、初期EUROPEに通じるものがありますね。FORTUNE最大の武器はメインソングライターBenny Soderberg(Vo、Key)が紡ぎ出す哀愁と泣きのメロディです。悲哀に満ち、それでいて煮え切らないメロディの数々とそれを歌うBennyの頼りなくて垢抜けないボーカルは聴き手を選ぶかもしれませんが、独特の味わいがあります。1997年にBennyが新たに結成したCLOCKWISEのデビュー作では洗練性を増したサウンドとBennyによるB級ボーカルがミスマッチのように感じられましたが本作では全てがB級(誉めてます/苦笑)なので、それがプラスに作用しているようにも思えますね。

BON JOVIRunawayを思わせるイントロを持つ①Eyes Of Iceは「これぞ北欧メタル!」と呼べるナンバーでアルバムの掴みとして申し分ありません。そんな本作のハイライトはFORTUNEの魅力をギュッと凝縮した④Renegade、物悲しく切ないメロディが胸を締め付けるバラード⑤Life Goes On、曲名通りの荒涼とした雰囲気が漂うドラマティックチューン⑥Stormy Roadsが並ぶアルバム中盤です。哀メロ全開な曲調とは不釣り合いな軽い歌詞が多い本作において⑥の「Once we were forever friends, now it seems like never again♪」という一節は凄く印象に残りました。アルバムの肝となっているのがBennyのメロディセンスであることは間違いありませんが、後にTHE POODLESに参加することになるHenrik Bergquist(G)のギターワークも各曲に華を添えていることも見逃せません。難点を挙げるとすれば好きな曲とそうでない曲が分かれ、後半に進むにつれてメロディのフックが弱くなっているように感じられることでしょうか。

古き良き北欧メタルを愛するリスナーから好意的に受け止められ、日本で巻き起こった90年代の北欧メタルブームに上手く乗ったかに見えたFORTUNEでしたがMASQUERADEと同じく2枚目のアルバムで流行を意識したグランジ路線に変化したことが原因で人気は急落。1996年に再びメロディアスな音楽性に舵を切った3rd「LORD OF FLIES」をリリースしたものの、本作の哀愁路線とは一線を画したハードロック作品(これはこれで悪くないのですが…)だったこともありファンを呼び戻すことができずバンドはその後解散しています。中心人物のBennyはCLOCKWISEでの活動も長続きせず、2枚のアルバムを発表しただけで表舞台から姿を消してしまいました。9月3日にアヴァロン・レーベルから再発されるリマスター盤の収録曲はゼロ・コーポレーション盤と全く同じらしく、改めて「Bennyはもう引退した」という事実を突きつけられたようで残念ですね…。

【音源紹介】
・Life Goes On

CLOCKWISE「NOSTALGIA」(1997)

  • 2014/03/02(日) 00:00:00

CLOCKWISE NOSTALGIA
【No.394】
★★★★(1997)
年間ベスト1997年第10位

今は亡きゼロ・コーポレーションから3枚のアルバムをリリースし、北欧美旋律マニアの間で話題になったバンドFORTUNEの中心人物Benny Soderberg(Vo、Key)が立ち上げたソロプロジェクトCLOCKWISEの1stアルバム。ライナーノーツによると「Bennyとバンドとの方向性にズレがあったためCLOCKWISEが始動した。ただしFORTUNEは解散したわけではない」とのことでしたが、FORTUNEが4枚目のアルバムを制作することはなくバンドはいつの間にか消滅しています。本作に参加しているのは北欧メタルの名盤との呼び声高い「DANGER IN THIS GAME」(1989)を生み出したGLORYのリーダーでFORTUNEにギタリストを紹介するなど以前からBennyとは親交の深かったJan Granwick(G)、リズム隊は当時活動休止中だったEUROPE組のJohn Leven(B)Ian Haugrand(Ds)という顔触れです。そんな魅力的なメンバーに加えてブルーを基調とした美麗ジャケット、邦題が「北欧のノスタルジア」と来れば北欧メタルファンを自認する僕としては買わずにいられない1枚でした。

冒頭の2曲を聴いて「今回はFORTUNE時代で最も人気のあったデビュー作「MAKING GOLD」(1992)に近いサウンドだな」程度に思っていたのですが、本作の真価はそれ以降の楽曲で発揮されています。儚げなイントロと「Traveler, traveler...」という歌い出しで涙、その後に押し寄せてくる強烈な哀感に号泣必至な③Traveler、前曲から一変してポップかつキャッチーな④Higher Ground、FORTUNE時代に足りないと感じていたメタルらしい疾走感がBennyお得意の哀メロと融合した⑤Run The Race、楽曲そのものが放つ泣きもさることながら3:00過ぎのCメロからギターソロに繋がる部分が堪らないバラード⑥Angel Eyes、流麗なメロディ展開に心奪われる⑦Changesと続く中盤は実に強力です。その中盤のイメージが強すぎるため1枚のアルバムとして聴くと若干テンションが下がる部分があったり、Bennyのやや線の細い歌唱に頼りなさを感じたりするのですが民謡調の物悲しいフレーズが涙を誘う⑩The Tales Of King Solitude 1:3でラストを締めくくってくれているので聴き終えた時の満足感は高いですね。

北欧ならではの透明感と泣き/哀愁の旋律、楽曲を優しく包み込むキーボードとテクニカルなギターが織り成す美しい音世界が凝縮された本作は、北欧メタルのお手本のようなアルバムです。天才メロディメイカーとしてシーンに登場したもののFORTUNEの2nd「CALLING SPIRITS」(1994)で早くも迷走していたBenny Soderbergに僕が求めるものがここにあると言っても過言ではありません。本作のような北欧メタル史に名を刻むアルバムを生み出しておきながら2nd「NAIVE」(1998)でCLOCWISEというかBennyは再び失速(「NAIVE」にも楽曲単位では素晴らしいものもありましたが)、その後は一切音沙汰がありません。「NAIVE」に続編が収録され、元々3部作として構想が練られていたはずの⑩は最後まで聴きたかったなぁ…。

【音源紹介】
・Traveler