MEAT LOAF「BAT OUT OF HELL Ⅲ‐ THE MONSTER IS LOOSE」(2007)

  • 2016/08/11(木) 00:00:00

BAT OUT OF HELL 3
【No.475】
★★★★(2007)
年間ベスト2007年第8位

1977年に発表されたシリーズ1作目が約3,700万枚、1993年にリリースされた2作目が約1,500万枚とロック史に燦然と輝くセールス記録を樹立したMEAT LOAFのモンスターアルバム「BAT OUT OF HELL」(邦題:地獄のロック・ライダー)の3作目にして、足かけ30年で完結を迎えるシリーズ最終作。これまでの「BAT OUT OF HELL」シリーズといえばJim Steinmanが書いた大仰でドラマティックな楽曲群をMEAT LOAFがクドく、暑苦しく歌い上げるのが大きな特徴でした。それに対して今回はJimのペンによる楽曲は14曲中7曲にとどまり、BON JOVI等を手掛けたヒットメーカーDesmond Childが6曲(全て他のライターとの共作)、AEROSMITHのヒットバラードI Don't Want To Miss A Thingなどの作曲者としても知られるDiane Warrenが1曲を提供しています。

創作面でJimのインプットが少なくなっているほかNikki Sixx(B/MOTLY CRUE)、John 5(G/ROB ZOMBIE、ex-MARILYN MANSON)がDesmondと共作という形で作曲に関わっていたりBrian May(G/QUEEN)、Steve Vai(G)をゲストとして迎えるなどHR/HM畑からの登用が目立つのも本作の特徴ですね。それが顕著に現れているのがオープニングの①The Monster Is Looseで、過去2作にあった華麗なピアノは影を潜めヘヴィなギターが曲を引っ張っています。本作のハイライトは北欧の歌姫Marion Ravenとのデュエットが見事な名バラード③It's All Coming Back To Me Now〜記憶の中へ…、ドラクエのラスボスが現れそうな出だしからクワイアに繋がる小品⑦Monstroに導かれてスタートする飛翔感に溢れたロックチューン⑧Alive、Jim Steinman節全開の⑫Seize The Night辺りでしょうか。ちなみに③は元々JimがプロデュースしたPANDORA'S BOX「ORIGINAL SIN」(1989)の収録曲で後にCeline Dionが歌い大ヒットしたナンバーですがMEAT LOAF曰く、元々は「BAT OUT OF HELL」シリーズのために用意された曲なんだそうです。

上記の曲以外にも聴き応えのある曲が目白押し。Brian Mayがいかにも彼らしいギターを奏でて強烈な個性を放っている④Bad For Good、Diane Warrenのペンによるドラマティックバラード⑤Cry Over Me、ダイナミックな曲調の中でSteve Vaiのギターソロが冴える⑥In The Land Of The Pig, The Butcher Is King(タイトルを見ただけでJim Steinmanの曲だとわかりますね/笑)の流れは申し分ないし、ブラスサウンドがファンキーな雰囲気を生み出す⑩If It Ain't Broke Break It、MEAT LOAFのツアーに長年帯同しているPatti Russoとデュエットした爽やかソング⑪What About Love、映画「DREAM GIRLS」でオスカーを獲得したJennifer Hudsonが力強い歌声を響かせる⑬Future Ain't What It Used To Beなどなどお気に入り曲を挙げだすとキリがありません。本シリーズの生みの親でもあるJim Steinmanの関わりが薄い今回のアルバムは「BAT OUT OF HELL」とは呼べないという声もあるようですが、過去2作品の流れはしっかり受け継いでいると思います。僕は本作から「BAT OUT OF HELL」シリーズにハマりました。

【音源紹介】
・It's All Coming Back To Me Now〜記憶の中へ…

ERIC CARMEN「WINTER DREAMS」(1998)

  • 2014/04/30(水) 00:00:09

WINTER DREAMS
【No.396】
★★★★(1998)
年間ベスト1998年第5位

オハイオ州クリーブランド出身のシンガーソングライターEric Carmenによる前作から13年振りとなる6thアルバム。僕はBURRN!誌上の今月のおすすめコーナーで藤木さんが本作を取り上げていたのがきっかけでEricのことを知ったのですが、彼は70年代のポップミュージックシーンで一世を風靡したバンドRASPBERRIESの中心人物でバンド解散後はソロに転向してヒットを飛ばしていたようです。中でもラフマニノフの「ピアノ協奏曲」を取り入れた名曲All By Myselfは世界の歌姫Celine Dionを始めとする多くアーティストにカバーされたり、日本ではCMソングに起用されるなどしていてEricのことを知らなかった僕もこの曲は聞き覚えがありました。

本作で聴くことができるのは「夢の面影」という邦題、幻想的なモノクロジャケットから連想される通り、どこまでも甘くセンチメンタルなメロディの数々。アルバムからのファーストシングルとなった①I Was Born To Love Youは作品を象徴するかのような優しさに溢れたラブバラード、それに続くセカンドシングル曲②Someone That You Loved Before(過ぎゆく恋)もバラードなのですがDiane Warrenとの共作でもあるこちらはメロディがより重厚で歌詞も失恋をテーマとするなど前曲とは対照的です。③Every Time I Make Love to You(愛を奏でよう)もまたまたバラードでヒットソングのお手本的なこの曲までを聴いて「個々の曲は魅力的だけれど同系統が続くのはちょっと…」と思っていたら④Cartoon Worldは楽しげな手拍子を伴ったポップチューンでいいアクセントになっています(というかこの曲は単体としてもかなりのお気に入り)。そして本作のハイライトとなっているのが⑤Almost Paradise(パラダイス~愛のテーマ)。この男女デュエットによるバラードは映画「フットルース」のためにEricが手掛けたもので、オリジナルではMike Reno(Vo/LOVERBOY)Ann Wilson(Vo/HEART)が歌っていました。今回のセルフカバーではEricがJaney Clewerなる女性シンガーとデュエットしていて個人的には本作のバージョンの方が好きですね。それ以降も楽しげな曲調の⑥Top Down Summer、タイトル通りのロマンチックなムードに包まれる⑦Isn't It Romantic、④と並んで本作のポップサイドを担う⑧I Could Really Love You、EricがかつてPeter Cetera(Vo/ex-CHICAGO)に提供した好バラードのリメイク⑩I Wanna Take Forever Tonightなど彼の優れたメロディセンスが遺憾なく発揮されたアルバムとなっています。

そんな楽曲群を歌い上げるEricの歌声は温かくて繊細、それでいて曲によっては力強く響いていて各曲をより一層魅力的なものとしてくれています。普段HR/HMを中心に聴いている僕にとってはサウンドがソフト過ぎる感はあるものの、作品全体が醸し出す穏やかな空気が実に心地いいんですよね。ただ13年振りの作品でありながら前述の⑤と⑩はセルフリメイク、⑨Caroline, NoTHE BEACH BOYS⑪Walk Away Renee(いとしのルネ)THE LEFT BANKEのカバーなのでEricの新作を長年待ちわびていた人にとっては腑に落ちないかもしれませんね(ちなみに⑪はオーストラリアのシンガーソングライターRick Priceもカバーしていて個人的にはあちらの方が好きです)。このアルバムでEricと出会った僕は書き下ろし曲が少ないことは気になりませんでしたが、本作発表から15年以上が経過した2014年になってもニューアルバムの情報が入ってこず待ちくたびれた状態なので、もし次回作の3分の1がリメイクやカバーだったらガッカリするかも…。いつかEricの新曲が聴ける日が来ると信じて気長に待ちたいと思いますが、彼の寡作っぷりはギター仙人Uli Jon Roth以上ですね(苦笑)。なお本作は母国アメリカでは2000年になって「I WAS BORN TO LOVE YOU」というタイトルで発売されています。

【音源紹介】
・I Was Born To Love You