SYMPHONY X「TWILIGHT IN OLYMPUS」(1998)

  • 2017/03/18(土) 00:00:00

TWILIGHT IN OLYMPUS
【No.489】
★★★(1998)

3rd「THE DIVINE WINGS OF TRAGEDY」(1996)が過去のアルバムを凌駕する出来だったこともあり、それまでの日本に加えてヨーロッパでも人気に火がつきはじめたSYMPHONY Xが放つ4作目。ギターサウンドがグッとヘヴィになってファンを驚かせた前作よりも初期2作品で濃かったネオクラシカルテイストが前に出ているため、本作が2nd「THE DAMNATION GAME」(1995)の次のアルバムと言われてもシックリくる作風です。これまで不動だった演奏陣にメンバーチェンジがありドラマーのJason Rulloがレコーディング前に脱退、後任にTom Walling(Ds)を迎えていますが次回作「V: THE NEW MYTHOLOGY SUITE」(2000) ではJasonが復帰しています。

毎回思うのですが、このバンドはアルバムの掴みがいつも強力ですね。今回もネオクラシカルなフレーズが乱舞する疾走曲①Smoke And Mirrors、SYMPHONY Xにしては珍しく一緒に歌えそうなサビと「ヘイ!ヘイ!」という掛け声をフィーチュアした②Church Of The Machineから間髪入れずにベートーヴェンのピアノソナタ「悲愴」をモチーフにしたインスト小品③Sonataを挟み、④In The Dragon's Denで再びパワフルに疾走する流れに引き込まれました。今回のアルバムは全8曲と収録曲が少ないのですが後半も「鏡の国のアリス」を題材にした13分の大作⑤Through The Look Glass (PartⅠ,Ⅱ,Ⅲ)に始まり、やや薄味ながらも疾走感が心地よい⑥The Relic、メロディが捻くれているため即効性はないもののMichael Romeo(G)Michael Pinnella(Key)による圧巻のソロバトルが楽しめる⑦Orion - The Hunter、和音階を取り入れた叙情バラード⑧Lady Of The Snowなど魅力的なナンバー並びます。

Candlelight Fantasia、Out Of The Ashesというバンドの「静」と「動」それぞれの魅力を凝縮した名曲を収録した3rdに比べると小粒な感は否めませんが、今回もネオクラシカルのマスターピース①を筆頭になかなかの力作に仕上がっています。また②の「バ〜ゥ ダ〜ゥ♪」という歌い出し(サビから曲がスタートするのはこのバンドで初めてかも)や⑥のサビメロなど一度聴いただけで口ずさんでしまいそうなメロディがあるのも本作の特徴でしょうか。当時のSYMPHONY Xはライヴを行っておらず事実上スタジオバンドだったことを差し引いても1994年にデビューして以降、ほぼ毎年フルアルバムを作り上げる彼等の創作意欲には頭が下がりますね。なおバンドは1998年6月に初来日公演(SYMPHONY Xとして初のライヴだったとか)を行い、その後ワールドツアーを敢行するなどライヴ活動が本格化していくため次作からはアルバム発表の間隔は2年毎、4年毎と長くなっていくこととなります。

【音源紹介】
Smoke And Mirrors

SYMPHONY X「THE DIVINE WINGS OF TRAGEDY」(1996)

  • 2017/03/02(木) 00:00:00

THE DIVINE WINGS OF TRAGEDY
【No.488】
★★★★(1996)

圧倒的な演奏テクニックとアメリカのバンドらしからぬ叙情メロディで、日本のパワーメタルファンの心を掴んだSYMPHONY Xの3作目。このアルバムはバンド初期の代表作であり、2017年現在でもSYMPHONY Xの最高傑作に挙げられることも多い1枚です。過去の作品に比べるとギターが骨太になりヘヴィでモダンなサウンドを導入している点に変化が見られるものの、肝心のメロディは疎かになるどころか更に磨きがかかっていますね。従来のネオクラテイストは減退し、本作以降も程度の差こそあれどその傾向は維持されているため本作でSYMPHONY Xサウンドが確立されたと言えるかもしれません。複雑になりがちな彼等の作品群の中では比較的わかりやすいメロディが多いので僕にとってもお気に入り盤となっています。

本作はなんと言ってもアルバム序盤の流れが圧巻です。過去2作品とは明らかに異なるヘヴィネスに驚かされるものの楽曲の根幹はSYMPHONY X節全開な①Of Sins And Shadows、このバンド特有のミステリアスな雰囲気の中で炸裂するMichael Romeo(G)の滑らかなギターソロとそれに対抗するMichael Pinnella(Key)、そこにThomas Miller(B)のテクニカルプレイも加えた②Sea Of Lies、怒涛の勢いと哀愁のメロディが高次元で融合したSYMPHONY Xの最速チューンにして本作のハイライト③Out Of The Ashesの3曲はどれもがキラーチューンと呼べるほどの素晴らしさ。そんな疾走系3連発の後を受け継ぐ④The Accoladeは10分近くある長尺曲で、ここでは一転してバンドのプログレメタルの側面を強調していて聴き応え満点です。この一連の流れは前作「THE DAMNATION GAME」(1995)のThe Damnation Game、Dressed To KillからThe Edge Of Foreverへ繋がる展開を彷彿とさせますが、更にグレードアップしていてバンドの成長を感じさせてくれます。

また本作はラストを⑨Candlelight Fantasiaという超名曲で締めくくっているのも大きなポイント。この曲で聴ける「悲哀のメロディの極致」と呼ぶべき美旋律が堪りません。個人的には③と⑨の2曲を聴くためだけに本作を買う価値があると思いますね。そして7部構成20分越えの超大作⑧The Divine Wings Of Tragedyも存在感抜群。各パートの繋ぎ方が強引だったり、率直に言って長すぎると感じたりするのも事実ですがSYMPHONY Xの凄みを見せつけてくれています。これらの曲のインパクトが大きいために、ヨーロッパ民謡風フレーズを散りばめたネオクラ疾走曲⑦The Witching Hourなどは単体で聴けば十分魅力的なのですが、本作の中では影が薄くなっていますね。一方で捻くれた歌メロが怪しげな雰囲気を醸し出す⑤Pharaohは聴けば聴くほどクセになるナンバーです。楽曲の充実度が過去最高なのに加えて、バンドのウィークポイントだった音質面も改善されているのも好印象。SYMPHONY Xをこれから聴くという方には、まず本作をオススメしたいですね。

【音源紹介】
Candlelight Fantasia

SYMPHONY X「THE DAMNATION GAME」(1995)

  • 2017/02/22(水) 00:00:00

THE DAMNATION GAME
【No.487】
★★★(1995)

Michael Romeo(G)率いるSYMPHONY Xがバンドの声と呼べる看板シンガーRussell Allenを迎え、デビュー作「SYMPHONY X」(1994)から僅か9ヶ月という短いインターバルで発表した2ndアルバム。僕が初めてこのバンドの音に触れた1枚でもあります。音楽性は前作と同じくネオクラシカル風サウンドを盛り込んだプログレメタルながら、クオリティは大幅にアップしていますね。その功労者はやはりRussellでしょう。今ではマフィアのボスのような風貌でドスの効いた歌声を響かせてリスナーを圧倒するスタイルを持ち味としている彼ですが、本作では比較的クリーンに歌っている場面が多いですね。剛柔どちらでも表現力豊かに歌い上げられるRussellがバンドに加わったことでSYMPHONY Xのラインナップは完成したと言えると思います。バンドは本作以降リズム隊に若干のメンバーチェンジがあったもののMichael Romeo、Russell AllenそしてMichael Pinnella(Key)の3人は不動で2017年現在まで活動しています。

楽曲面でもスケールアップを遂げていて、イントロ数秒で聴き手の心をガッチリ掴む疾走曲①The Damnation Game、怪しげなムードの中で緊迫感溢れるサビメロが冴え渡る②Dressed To Killの畳み掛けが実に強力!そんなオープニング2曲に続く③The Edge Of Foreverはドラマティックな長編曲で、バラード風に始まり終盤へ向かうに連れて盛り上がっていく展開が秀逸です。中でも3分15秒辺りのピアノソロが凄く印象的で、僕としてはテクニカルなギターソロ以上にこういうパートを聴くと「SYMPHONY Xだなぁ」と感じます(少数意見かもしれませんが)。また⑤Whispersは優しくも儚いメロディが至福のひとときを与えてくれる逸品。こういう楽曲はバンド初期ならではの特徴だと思いますね。

YNGWIE MALMSTEENHELLOWEENでHR/HMに目覚めたメタラー1年生(1995年当時)の僕にとって本作の①と②はあまりに衝撃的でした。幸か不幸かこの2曲がこのバンドとの出会いだったため、本作の後半や彼等の他のアルバムを聴く時にハードルが上がってしまい、結果として「SYMPHONY Xは好きな曲とそうでない曲の落差が激しいバンド」というイメージが僕の中で定着してしまった感があります(苦笑)。率直に言うと、もっとわかりやすいメロディが欲しいんですよね…。とはいえデビュー作と比べるとボーカル交代は成功だったと思うし、まだ物足りなさは残るものの音質も向上しているので順当な成長作と言えるでしょう。ちなみに今回ブログ記事を書くために聴き直すまで、本作の後半に収録された曲は印象に残っていなかったのですが最近になってラストを飾る⑧A Winter's Dream - Prelude(Part I)、⑨A Winter's Dream - The Ascension(Part II)の2部作がジワジワと好きになってきました。

【音源紹介】
Dressed To Kill

SYMPHONY X「SYMPHONY X」(1994)

  • 2017/02/14(火) 00:00:00

SYMPHONY X
【No.486】
★★(1996)

今や押しも押されぬネオクラシカル系プログレメタルバンドの重鎮としてその名を馳せるSYMPHONY Xが1994年にリリースした1stアルバム。デビュー当時はグランジ/オルタナティヴ全盛期ということもあって母国アメリカやヨーロッパでは全くと言っていいほど話題にならず、ゼロ・コーポレーションが彼等を発掘して日本でのみリリースされた作品のようです。このアルバムの時点でダークかつミステリアスなSYMPHONY Xサウンドは既に確立されているものの、僕は2nd「THE DAMNATION GAME」(1995)でこのバンドを知り、後追いで本作を聴いたため物足りなさを感じる点も少なくありません。その最たる例が本作でフロントマンを務めていたRod Tyler(Vo)のボーカルで、独特の味があるヘタウマ系と感じる場面もなくはないですが、次作から加入する実力派Russell Allen(Vo)に比べると不安定さが目立ってしまいますね…。

そんな弱点があるのは事実ながら僕の琴線に触れる楽曲も聴くことができます。特に④Masqueradeはゼロ・コーポレーションが所属アーティストの曲をテーマ毎に集めたコンピレーション盤「煌 CRYSTAL」(1996)に収録されているほか、バンド自身も1998年にリメイクしたバージョンをベストアルバムの1曲目、6th「THE ODYSSEY」(2002)のボーナストラックに再録している初期の代表曲です。それ以外にも「トゥナ〜イ♪」のコーラスが耳に残る②The Raging Season、骨太なサウンドに変化した今では聴けそうにないメロウなバラード⑥Shades Of Grey、キャッチーなサビメロを持った⑧Rapture Or Pain辺りは結構好きですね。コーラスワークにQUEENっぽさが感じられるのも本作ならではの特徴でしょうか。

DREAM THEATERに通じるプログレッシブメタルにYNGWIE MALMSTEENを彷彿とさせるネオクラシカルテイストを融合させたものがSYMPHONY Xの根幹部だと思っているのですが、その中でも本作はネオクラ要素が強い作風となっています。リーダーでもあるMichael Romeo(G)の流麗なギタープレイは同時期の本家YNGWIE以上に聴き応えがありますね。SYMPHONY Xは作品を重ねる度に複雑でプログレ色が濃くなっているので、このバンドの中では比較的聴きやすい1枚だと思います。本作はボーカルと音質(特にドラム)に難はあるものの、ダイヤの原石のような輝きも見せてくれる作品なので現メンバーでリメイクすると面白いかもしれませんね。

【音源紹介】
Masquerade

FORTUNE「MAKING GOLD」(1993)

  • 2014/09/02(火) 00:00:00

MAKING GOLD
【No.406】
★★★(1995)

先日記事をアップしたMASQUERADE同様、ゼロ・コーポレーションに見出だされて日本デビューを果たした叙情派北欧メタルバンドFORTUNEの1stアルバム。MASQUERADEがTNTから影響を受けていたのに対して、このバンドはSILVER MOUNTAIN、初期EUROPEに通じるものがありますね。FORTUNE最大の武器はメインソングライターBenny Soderberg(Vo、Key)が紡ぎ出す哀愁と泣きのメロディです。悲哀に満ち、それでいて煮え切らないメロディの数々とそれを歌うBennyの頼りなくて垢抜けないボーカルは聴き手を選ぶかもしれませんが、独特の味わいがあります。1997年にBennyが新たに結成したCLOCKWISEのデビュー作では洗練性を増したサウンドとBennyによるB級ボーカルがミスマッチのように感じられましたが本作では全てがB級(誉めてます/苦笑)なので、それがプラスに作用しているようにも思えますね。

BON JOVIRunawayを思わせるイントロを持つ①Eyes Of Iceは「これぞ北欧メタル!」と呼べるナンバーでアルバムの掴みとして申し分ありません。そんな本作のハイライトはFORTUNEの魅力をギュッと凝縮した④Renegade、物悲しく切ないメロディが胸を締め付けるバラード⑤Life Goes On、曲名通りの荒涼とした雰囲気が漂うドラマティックチューン⑥Stormy Roadsが並ぶアルバム中盤です。哀メロ全開な曲調とは不釣り合いな軽い歌詞が多い本作において⑥の「Once we were forever friends, now it seems like never again♪」という一節は凄く印象に残りました。アルバムの肝となっているのがBennyのメロディセンスであることは間違いありませんが、後にTHE POODLESに参加することになるHenrik Bergquist(G)のギターワークも各曲に華を添えていることも見逃せません。難点を挙げるとすれば好きな曲とそうでない曲が分かれ、後半に進むにつれてメロディのフックが弱くなっているように感じられることでしょうか。

古き良き北欧メタルを愛するリスナーから好意的に受け止められ、日本で巻き起こった90年代の北欧メタルブームに上手く乗ったかに見えたFORTUNEでしたがMASQUERADEと同じく2枚目のアルバムで流行を意識したグランジ路線に変化したことが原因で人気は急落。1996年に再びメロディアスな音楽性に舵を切った3rd「LORD OF FLIES」をリリースしたものの、本作の哀愁路線とは一線を画したハードロック作品(これはこれで悪くないのですが…)だったこともありファンを呼び戻すことができずバンドはその後解散しています。中心人物のBennyはCLOCKWISEでの活動も長続きせず、2枚のアルバムを発表しただけで表舞台から姿を消してしまいました。9月3日にアヴァロン・レーベルから再発されるリマスター盤の収録曲はゼロ・コーポレーション盤と全く同じらしく、改めて「Bennyはもう引退した」という事実を突きつけられたようで残念ですね…。

【音源紹介】
・Life Goes On

【CD購入録】MASQUERADE「SURFACE OF PAIN」(1994)

  • 2014/08/30(土) 00:00:00

【CD購入録】
SURFACE OF PAIN
MASQUERADE「SURFACE OF PAIN」(1994)

北欧ハードポップの魅力が詰まったセルフタイトル作で1992年にデビュー、当時はTNTの後継者との呼び声も高かったMASQUERADEの2作目を買いました。「当時流行っていたグランジの影響を受けてダーク/ヘヴィな路線になった」という評判だったので覚悟はしていましたが、確かに大胆な路線変更をしていますね。正直なところ前作と同じバンドによるアルバムとは思えません。通して聴くにはなかなか厳しい作品ではありますがサビメロがキャッチーな④Sufferingは耳に残りますね。そのインパクトたるや、この曲をたまたま聴いていた長男(6歳)が「さっふぁり、さっふぁり♪」と歌い出したほど(笑)。本作がリリースされた1994年というと、それまでメロディアスな音楽を生み出していたバンドがダークなサウンドに変貌してしまうケースが多くゼロ・コーポレーションに在籍していたアーティストだけ見てもこのMASQUERADEだけでなくTALISMAN、FORTUNEもそのパターンに含まれると思います。個人的にはバンドの独自性を強調した結果としてヘヴィになったTALISMANはまだしも、他の2バンドの路線変更は好きになれないですね。ただ本作に関してはデビューアルバムと切り離して聴けば充実盤だという評価も少なくないようなので、聴き込めば印象が違ってくる…かも?

MASQUERADE「MASQUERADE」(1992)

  • 2014/08/26(火) 00:00:00

MASQUERADE.jpg
【No.405】
★★★★(2010)

90年代前半に創設、1999年に閉鎖されるまでメロディアスなHR/HMを好んで聴く僕にとって最重要レーベルのひとつだったゼロ・コーポレーション。このレコード会社は超マイナーであっても良質のバンドであれば作品を世に送り出すというスタンス(後に有名バンドの作品もリリース)を持っていて、ゼロ・コーポレーションに見出だされた代表格としては今や大物へと成長したSYMPHONY X、僕に哀メロとは何かを教えてくれたMIKAEL ERLANDSSONなどが挙げられますが、このスウェーデン出身の4人組MASQUERADEもゼロ・コーポレーションを語る上で欠かせないバンドだと思います。彼等がデビューした1992年はEUROPE、TNTといった北欧のビックネームが活動休止や解散を表明(後にどちらも再結成)したこともあり、MASQUERADEは北欧メタルシーン期待の若手としてその筋ではかなり注目されていたようですね。

キーボードをフィーチュアした煌びやかで透明感のあるサウンド、伸びやかなハイトーンボーカル、楽曲に華を添えるテクニカルギターといった要素からはTNTの遺伝子が感じられるし、爽やか系ハードポップの極致⑤Ride With The Windは正にその王道を行くナンバーです。しかし本作のハイライトはなんと言っても①Gimme All Your Loveでしょう。「キュイィ~ン♪」と唸るギター、「フゥォッ!」という掛け声から始まるキャッチーでノリのいい曲調とその中に絶妙なバランスで配された哀メロが一体となったこの曲は北欧メタル史に残る名曲ですね。そんな①と同系統のロックチューンでは前述の⑤に加えて⑧Wild Child、⑬Give It A Shotが素晴らしいし、持ち前のメロディセンスを活かしたミッドテンポも明るいムードと北欧ならではの透明感が見事に融合した②Four Letter Words、終盤のオーオーコーラスが◎な③Our Time Has Come、ゆったりしたメロディが心地よい⑨Dancin' On The Edgeと粒揃い。特にアルバム前半の充実振りは目を見張るものがありますね。注文をつけるとすればバラード系のナンバーにもう少しインパクトが欲しかったということくらいでしょうか。アルバム構成にも気を配っているようで⑦Le Baugeux De Triomphe、⑩Liaisonといったアコギインストの小品を挟んだり、曲間をSEで繋いでいたりしています(SEが効果的かどうかは微妙ですが…)。

本作がリリースされるや北欧メタルファンの間で話題となり、シンガーTony Yoansonの声質がTony Harnell(Vo/ex-TNT)を彷彿とさせることもあって「ポストTNTの最右翼」と呼ばれるほどだったとか。そんな当時の盛り上がりもデビューアルバムとは思えないクオリティを誇る本作を聴いていると納得できます。1stアルバムで早くもファンの心を掴んだかに見えたMASQUERADEですが、1994年に発表した2nd「SURFACE OF PAIN」では当時流行していたグランジに感化されたかのようなヘヴィでダークな作風へと変化していて日本での人気は急降下。2001年に2ndの路線を引き継いだ作風の3rd「FLUX」、2005年には未発表音源集(?)「IN DISGUISE」をリリースしたものの、その後は音沙汰がありません。本作の路線で復活してくれたら嬉しいんですけどね…。ちなみに今年の9月3日にアヴァロン・レーベルからリリースされる再発盤にはボーナストラックとして「IN DISGUISE」に収録されていた1stアルバム寄りのナンバーが3曲、⑤と⑬のデモバージョンが追加されているようです。

【音源紹介】
・Gimme All Your Love

【CD購入録】JEFF SCOTT SOTO「LOVE PARADE」(1995)

  • 2014/08/23(土) 00:00:00

【CD購入録】
LOVE PARADE
JEFF SCOTT SOTO「LOVE PARADE」(1995)

YNGWIE MALMSTEENの初期2作品でフロントマンを務め、その後はMarcel Jacob(B/ex-YNGWIE MALMSTEEN )と結成したTALISMANを軸にしつつAXEL RUDI PELL、EYES、TAKARAなどでもその歌声を披露してきたJeff Scott Soto(Vo)の1stソロアルバムを買いました。ソロ第2弾となる「PRISM」(2002)がバラード主体のメロディックロック作品だったのに対して、このアルバムはソウル/ファンク路線となっています。メロディアスなHR/HMを主食としている身として本作のサウンドはなんだか新鮮に感じました。ライナーノーツによると本作の音楽性はJeffのルーツに根差したものらしく、それを踏まえるとTALISMANがデビュー当初のキラキラ北欧サウンドからグルーヴィなハードロックへと変化していった要因はJeffによるところが大きいのかもしれませんね。なお本作にMarcelは関与しておらず、TALISMANやTAKARAのアルバムでプレイしたこともある女性キーボードプレイヤーJulie GreauxGary Schutt(B/ex-TAKARA)といったメンバーがJeffをサポートしています。お気に入りはアルバムの中で一番ロック色の濃く、作曲から演奏まで全てをJeffが1人でこなしている⑩Funk Sandwichですね。

【CD購入録】TALISMAN「HUMANIMAL」(1994)

  • 2014/08/20(水) 00:00:00

【CD購入録】
HUMANIMAL
TALISMAN「HUMANIMAL」(1994)

Marcel Jacob(B)、Jeff Scott Soto(Vo)という元YNGWIE MALMSTEEN組を中心としたスウェーデン産ハードロックバンドTALISMANの3作目を買いました。1994年のリリース当時は日本とヨーロッパで収録曲が異なるバージョンが発売されていましたが今回僕が買ったのは再発盤の2枚組仕様です。

トラックリストはこちら
DISC-1
01. 3233 + Colour My XTC
02. Fabricated War
03. Tainted Pages
04. TV Reality
05. Seasons
06. All + All
07. D.O.A.P.S.
08. Blissfull Garden
09. Lonely World
10. Delusions Of Grandeur
11. Since You've Gone
12. Humanimal
13. Doin' Time Wit' My Baby

DISC-2
01. Animal Ritual
02. You Cannot Escape From The Revelation Of The Identical By Seeking Refuge In The Illusion Of The Multiple
03. My Best Friends Girl
04. Dear God
05. Hypocrite
06. Wastin' R Time
07. To Know Someone Deeply(Is To Know Someone Softly)
08. Todo Y Todo(All + Allのスペイン語バージョン)

デビュー作は北欧メタルの王道、2ndアルバムではそこにグルーヴィな味わいを加えるなど音楽性を変化させてきた彼等ですが、今回は一段とヘヴィなサウンドに傾倒していますね。このアルバムで展開されている路線がTALISMANの持ち味のひとつであることは確かながら、バンドのダークサイドをかなり強調した仕上がりとなっていてデビュー当時とはまるて別バンドのよう。特にDISC-1①Colour My XTCPVは曲調もさることながらラッパーのような風貌と振り付けで歌うJeffに驚かされました。僕は本作を後追いでチェックしたため、ある程度の耐性はできていましたがリアルタイムで聴いていたらショックだったでしょうね…。ただ過去の音楽性と切り離して聴くと決して悪い作品ではないし、DISC-1⑨Lonely World、⑫HumanimalはTALISMANらしさ全開の好メタルチューンとなっています。ちなみにタイトルが異様に長いDISC-2②You Cannot Escape From The Revelation Of The Identical By Seeking Refuge In The Illusion Of The Multipleはテクニカルな演奏をバックにJeffが曲名をメロディに乗せて歌う実験的なナンバーです。全21曲という長尺のボリューム、曲調の振り幅の大きさなどから冗長、散漫といったイメージもありますがもう少し聴き込んでみようと思います。

TALISMAN「GENESIS」(1993)

  • 2014/08/16(土) 00:00:00

GENESIS_20120810161737.jpg
【No.404】
★★★(1995)

結成当初はMarcel Jacob(B/ex-YNGWIE MALMSTEEN)のスタジオプロジェクトと見なされていたTALISMANの2ndアルバム。バンド名を冠したのデビュー作から約3年振りとなる今回のアルバムでもJeff Scott Soto(Vo/ex-YNGWIE MALMSTEEN)がMarcelの相棒を務めていますが、JeffはもうひとつのバンドEYESに専念するために一時TALISMANを脱退するなど再びタッグを組むまでは紆余曲折があったようです。またギタリストにはオーディションで発掘した新人Fredrik Akessonを迎えており、彼は後のTALISMAN作品にも多く参加することとなります。Fredrikは2005年にChristopher Amott(G)ARCH ENEMYから脱退した際にツアーギタリストとして加入(2007年にChristopherが復帰したためスタジオ盤には不参加)、今ではOPETHに在籍するなど現代北欧ミュージックシーンで名うてのギタリストとしての地位を確立しているのでMarcelは見る目があったということですね。

音楽性はというと「典型的な北欧メタル」だった前作から一皮剥けて、後のTALISMANサウンドのキーとなる「独特のうねり」が顔を出すようになっているためデビュー作はMarcelのソロ、今回がTALISMANとしてのリアルファーストアルバムと捉えることができるかもしれません。そんな変化を象徴するかのように1stアルバムで楽曲を彩っていたキーボードは大幅に減少してサウンドが骨太になっています。グルーヴィなバッキングとキャッチーなサビメロが耳に残る①Time After TimeYNGWIE MALMSTEENの「MARCHING OUT」(1985)に収録されてそうなハードチューン②Comin' Homeで掴みはOK。HR/HMには似つかわしくないファンキーなアレンジを巧みに取り入れた④If U Would Only Be My Friendを聴いているとTALISMANが凡百の北欧メタルバンドと一線を画す存在だと感じさせられますね。そんなバンドの新生面が強調されている今回のアルバムは楽曲のインパクトという面ではデビュー作に一歩譲りますが、強力な哀メロが炸裂する⑨Give Me A Signはバンドを代表する名曲です(サビ直前のアコギもいい!)。また、MR.BIGの有名曲Addicted To That Rushに酷似した⑤All Or Nothingは冒頭の歌詞までもがそっくりなのできっと確信犯でしょうね(笑)。

TALISMAN最大の特徴であるMarcelのベースはかなり目立ってきているし、Jeffの剛柔を巧みに使い分けたボーカルも安定感を増しています。「お行儀のいい」タイプの曲が多かったデビュー盤よりも、本作ぐらい適度にロックした作風の方がJeffの声が活かされていますね。さほどのめり込めない曲があるのも事実だし音質が良くなかったり、ドラムが打ち込みであるため迫力に欠けるといった弱点は今回も改善されていませんが「GENESIS」(=「創世記」、「起源」)と題された本作でTALISMANは自分達のサウンドを掴んだと言えると思います。なおアヴァロン・レーベルから9月3日にリリースされる再発盤は2012年に輸入盤でのみ発売されていたバージョンと同じ内容のようです。

【音源紹介】
・Give Me A Sign

TALISMAN「TALISMAN」(1990)

  • 2014/08/12(火) 00:00:00

TALISMAN.jpg
【No.403】
★★★(1995)

10代の頃からYngwie Malmsteen(G)と音楽活動を共にし、 彼のソロ名義で2作目にあたる「MARCHING OUT」(1985)にも参加していたスウェーデン屈指のベースプレイヤーMarcel Jacob(故人。2009年7月に自殺)が自分のやりたい音楽を追及するために結成したTALISMANの1stアルバム。後にMarcelとJeff Scott Soto(Vo/ex-YNGWIE MALMSTEEN)を中心としたバンドへと成長していったTALISMANですが、結成当時はMarcelのソロプロジェクト的な色合いが強かったようでシンガーもJeffではなく「Mr.北欧ボイス」ことGoran Edman(Vo/ex-MADISON)が想定されていたのだとか。ところがGoranがYngwieに引き抜かれたためMarcelが「MARCHING OUT」のバンドメンバーでもあったJeffに声をかけたという経緯があったようです。なおキーボードプレイヤーとしては後のYngwieバンドに長期間(1989年から2001年まで)在籍することとなるMats Olaussonも参加していて良い仕事をしています。

TALISMANは後にファンキーでグルーヴィーな要素を強めていきますが、本作は透明感あるキラキラサウンドと瑞々しいメロディの数々が楽しめる「これぞ北欧メタル」な1枚となっています。力強くもキャッチーな歌メロをフィーチュアしたオープニングチューン①Break Your Chains、冒頭のアカペラからして爽快感に溢れたハードポップ③I'll Be Waiting、北欧ならではの哀メロが冴え渡る⑤Just Between Us、⑨Day By Dayなどはこのバンドのみならず北欧メタルを代表するナンバーだと思います。また上記4曲には一歩譲るもののハードにドライヴィングする⑦Queenも結構好きだし、それ以外も佳曲揃いでMarcelが優れたソングライターであることを証明してくれていますね。アルバムの中で明らかに浮いているロックンロール⑩Women, Whiskey, And Songsこそ微妙ですが、本編を締めくくるインスト⑪Great Sandwichでは泣きのギターとMarcelらしいベースソロが楽しめて好印象。

このアルバムにはいくつかのバージョンが存在していて、僕が最初に聴いたのはオリジナルの11曲にボーナストラックとしてライヴ音源が6曲も追加されたゼロ・コーポレーションからの国内盤でした。追加音源の中にはMarcelも参加していたJohn Norum(G/EUROPE)の1stソロ「TOTAL CONTROL」に収録されていたLet Me Love You、Eternal FlameやMarcelがJoey Tempest(Vo/EUROPE)と共作したEUROPE随一のメタルチューンScream Of Angerといった興味深いナンバーも含まれていますが音質が極めて悪いためほとんど聴いていません(苦笑)。また2003年には本作のナンバーをGoranが歌ったデモバージョン7曲とインスト1曲が追加されたリマスター盤が再発され、GoranによるTALISMANの曲が聴きたくて買い直しました。一部、曲タイトルや歌詞が異なるGoranバージョンはJeffが歌うオリジナルと聴き比べても遜色ないばかりか、中にはDay By DayのようにGoranの方がはまっていると思える曲もあるほどです。バンドはJeffの持ち味を活かすため作を重ねるごとに今回のアルバムで展開しているような北欧サウンドから離れていくことになるのですが、もしGoranがフロントマンになっていたらTALISMANがどのような方向性へ進んでいたのか聴いてみたい気もしますね。ちなみに9月3日にアヴァロン・レーベルから再発される国内盤にはGoranが歌っている音源は収録されていないようです。

【音源紹介】
・I'll Be Waiting

MAJESTIC「ABSTRACT SYMPHONY」(1999)

  • 2014/07/29(火) 00:00:00

MAJESTIC A SYMPHONY
【No.402】
★★★(1999)
年間ベスト1999年第10位

Jens Johansson(STRATOVARIUS)Vitalij Kuprij(ARTENSION)がメロディックメタル界屈指のキーボードプレイヤーとして注目されていた1999年、その2大巨頭に割って入ったのが本作でデビューを果たすMAJESTICを率いるRichard Andersson(Key)です。Vitalijもデビュー時にはキーボード版YNGWIE MALMSTEENといわれていましたが、MAJESTICはARTENSION以上に音楽性とプレイスタイルの両方でよりYNGWIE度が高いため、本作はネオクラシカルメタルというジャンルに興味のある人ならば聴いて損のない1枚となっています。実際、YngwieがRichardの腕を見込んで自身のバンドへの加入を要請したが「MAJESTICに専念したい」という理由で固辞したというエピソードもあるようですね。

いかにもネオクラなインスト①Medieval Nightsに続き、哀愁に満ちたメロディを撒き散らしながら疾走する②Golden Sea、一度聴いたら忘れられないキャッチーソング⑦Black Moon Risingという飛び抜けた名曲を筆頭にネオクラの王道をいく⑤Crimson Sun、笑ってしまうほどのハイスピードで爆走する⑩Nitro Pitbullなどの疾走曲やリリカルなバラード③Standing Aloneなど強力なナンバーが並びます(個人的にツボにはまった曲とそうでない曲の差は結構ありますが)。そしてバンド最大の特徴となっているのがスピードチューンかバラードか、バッキングだろうがソロパートだろうが、お構いなしに弾いて弾いて弾き倒すRichardの激速キーボードです。またARTENSIONと比較してみるとRoger Staffelbach(G/ARTENSION)が存在感でVitalijに完敗していたのに対し、このバンドのギタリストPeter Espinoza(ex-ESPINOZA etc)は強烈な個性を持つRichardを相手に真っ向勝負を挑み、手に汗握るバトルを繰り広げる場面もしばしば。そしてシンガーのJonas Blum(ex-POLE POSITION)も⑤など一部の曲のキーについていけず苦しそうではあるものの、持ち前の甘いハスキーボイスで魅力的な歌を聴かせてくれるし、リズム隊もなかなかの手練揃いなのでRichardの弾きまくりキーボードに頼りっきりになっていないのもポイントです。とはいってもバンドのアイデンティティの大部分をキーボードが担っているのは間違いないんですけどね…。

Richard Andersson関連の作品に必ずと言っていいほど登場する過去の楽曲からの借用フレーズ(メタルバンド、クラシック作曲家問わず)は本作で既に散見されていて⑦の出だしはYNGWIEのDeja Vu(「ODYSSEY」収録)だし、④Abstract Symphonyはモーツァルトのフレーズをそのまま引用しています。個人的にはメロディさえ良ければ借用はさほど気になりませんが、上記以外にもどこかで耳にしたフレーズが散見されるので、それが嫌だという人にとって本作は聴くに絶えない作品かもしれません。ただし、そんなパクリフレーズがあることを差し引いても⑦はインパクト絶大だし、②はネオクラメタル史に燦然と輝く名曲なので「パクリ」の一言で片付けるには勿体ない存在ですね。

【音源紹介】
・Golden Sea

冒頭の20秒弱はMedieval Nightsの音源です

【CD購入録】RENEGADE「TIME TO CHOOSE」(1993)

  • 2010/09/23(木) 00:00:00

【CD購入録】
TIME TO CHOOSE
RENEGADE「TIME TO CHOOSE」(1993)

先日CD購入録を書いたMASQUERADE「MASQUERADE」(1992)と同じくゼロ・コーポレーションが遺した90年代北欧メタルの逸品との呼び声が高いスウェーデン出身RENEGADEのデビュー作を買いました。僕がこのバンドに興味を持ったのはMASQUERADE同様、オムニバス作品「煌(CRYSTAL)」(1996)に収録された名曲①Hold Back The Nightがきっかけでした。90年代にゼロ・コーポレーションからデビューした北欧メタルバンドというと前述のMASQUERADEや後にCLOCKWISEを立ち上げるBenny Soderberg(Vo、Key)率いるFORTUNEの名前が浮かびますが、RENEGADEは煌びやかなサウンドが美旋律を奏でる中でハイトーンボーカルが舞うという点でMASQUERADEと同じくTNTからの影響が濃いと言えそうです。ただこのバンドの場合はEUROPEを連想させたり、時にはアメリカンな曲調も顔を出したりするのが特徴でしょうか(ちなみに泣きメロで勝負するFORTUNEはSILVER MOUNTAINタイプかな)。総合的に見るとMASQUERADEに軍配があがるという気もしますが、僕の好きなタイプのバンドであることに間違いありません。

【CD購入録】MASQUERADE「MASQUERADE」(1992)

  • 2010/09/21(火) 00:00:00

【CD購入録】
MASQUERADE.jpg
MASQUERADE「MASQUERADE」(1992)

メロディ派リスナーの僕にとって最重要レーベルのひとつだったものの、1999年に倒産してしまったゼロ・コーポレーションより1992年に日本デビューを果たした北欧メタルバンドMASQUERADEの1stアルバムを買いました。ゼロ・コーポレーション所属アーティストによるオムニバス作品「煌(CRYSTAL)」(1996)に収録されているGimme All Your Loveを聴いて「素晴らしい曲だなぁ」と思いつつも、オリジナルアルバムをゲットするには至らずにいたところ、ゼロ・コーポレーションが消滅し入手困難になってしまったため僕にとって本作は「いつか聴きたい幻の1枚」となっていたのですが、輸入盤を中古で発見したので即捕獲しました。前述の名曲①Gimme All Your Loveが素晴らしいのは言わずもがな、それ以外にも印象的な楽曲が多いのは嬉しい誤算ですね。ボーカルの声質がTony Harnell(Vo/STARBREAKER etc、ex-TNT)に似ていることもあって黄金期TNTを連想させるピュア北欧メタルサウンドは正に僕好み。末永く愛聴することになりそうな予感がしています。

MIKAEL ERLANDSSON「UNFAMILIAR」(1997)

  • 2009/11/19(木) 00:00:00

UNFAMILIAR
【No.199】
★★(1997)

僕に泣きメロ/哀メロの何たるかを教えてくれた名盤「THE 1」(1995)、肩の力を抜いたアコースティックサウンドで質感は違えど相変わらずのメロディセンスを発揮してくれた2nd「UNDER THE SUN」(1996)に続く、Mikael Erlandsson(Vo)の3作目は前作の路線を引き継ぐ淡い色彩とリラックスムードが漂う作品となっています。僕としては、1stの頃のような泣きと哀メロを期待していたんですが…。

瞬間的にはMikaelならではの極上のメロディが顔をのぞかせるものの、「泣きメロの権化」Mikaelの作品としては物足りないと言わざるを得ない1枚ですね。とはいえ⑤Hold Back The Tears以降は流石のクオリティで、歌詞を詰め込んだ早口パートで気持ちを高めておいてサビで落とす⑥Don’t Be A Strangerの歌メロは凄く耳に残るし、明るくポップな⑦Carousel Of Seasons、改めてMikaelのメロディ作りの上手さを思い知らされる⑨What It’s All About、これぞMikael Erlandssonな⑩A Lot Of Love、楽しげな曲調でアルバムのラストを飾る⑪Hold Tightと続く後半を聴いていると、やはり彼は並のソングライターではないと思い知らされます。

アルバム購入当初はデビュー作を頂点として彼の音楽性が僕の好みから離れつつある印象もあり、Mikael Erlandssonのソングライティングに衰えが見え始めたのかと心配しましたが、過去のアルバムと切り離して聴いてみれば良質のメロディが詰まったポップロック作品だとわかってきました。本作を発表後、Mikaelは2002年に4thアルバム「THE GIFT」でカムバックを果たすまで、表舞台からは姿を消してしまうことになります。

【音源紹介】
・Hold Back The Tears

MIKAEL ERLANDSSON「UNDER THE SUN」(1996)

  • 2009/11/16(月) 00:00:00

MIKAEL UNDER THE SUN
【No.198】
★★★(1996)

北欧美旋律サウンドの極致「THE 1」(1995)で彗星の如くデビューしたMikael Erlandsson(Vo)の2ndアルバム。まず一聴して驚いたのが、前作での繊細な雰囲気は減退していて肩の力を抜いたアコースティック風のサウンドとなっていること。大らかなメロディで優しく包んでくれる①Open Bookに始まり、ノリのいいポップロックチューン②Can’t Turn Back Now、ほのぼのムードが漂う③Todayと続くアルバム冒頭からして、前作とは印象が大きく異なります。

聴き始めの頃はその変化に違和感を覚えましたが、Mikaelの抜群に上手いメロディセンスという根幹部分に変わりはないので、徐々に好きになっていきました。中でも、都会的でオシャレなアレンジのポップソングに哀愁のサビを持ってきた④Under The Sunは絶品です。一方で新たな側面として、ロックンロール色を前面に出した⑥Hot Shoes、Mikael流のパンク⑩The Loserなども面白いですが、やはりこの人には⑦Down To Earth⑫A Place To Hide In Townのような胸を締め付けるような哀愁バリバリのメロディを期待してしまいますね。

演歌に通じる泣きとクサメロが胸を打つ⑨Supposeはあるものの、前述の②や⑤Touch You Now、⑧Televisionなど軽快で明るい感じの楽曲が多いので、前作そのままの路線を期待すると肩透かしをくらいますが、メロディ自体は相変わらず強力。Mikael本人の味わい深いハスキーボイスも健在なので、彼の持ち味をしっかり発揮した1枚だと思います。

【音源紹介】
・Open Book

FAIR WARNING「LIVE AND MORE」(1998)

  • 2009/06/21(日) 00:00:00

LIVE AND MORE
【No.152】
★★★★(1998)

メロディアス・ハードロック界の至宝FAIR WARNINGの3作目にして傑作アルバム「GO!」リリース後の東京公演を収録したライブ作品。「LIVE AND MORE」というタイトルが示すように、ライブ盤のDisc-1と未発表曲からなるDisc-2の2枚組仕様となっています。当時のメンバーはAndy Malecek(G)が体調不良で一部の曲でしかプレイできないためにHenny Walter(G/ex-THUNDERHEAD)がセカンドギタリストとして参加しているほか、ツアー直前に脱退したオリジナルドラマーC.C.Behrensの後任に次回作「4」でもプレイすることになるPhilippe Candas(Ds)を迎えています。

まず「LIVE」の方から見ていくと、デビュー作の楽曲をほぼ全て収録したライブ作品「LIVE IN JAPAN」との重複を避けるというバンド側の意図から、セットリストは2ndと3rdからの楽曲で構成されています。というわけで本作がFAIR WARNINGの歴史を網羅しているとは言い難いのですが、オープニングトラック①Angels Of Heaven、②I'll Be Thereという「GO!」からの2曲でライブが始まった時点で、そんなことはどうでもよくなってしまいました(笑)。正直なところ、この曲よりもあの曲を聴きたかったと思うものもありますが、曲名通りのメッセージを観客に届けるTommy Heart(Vo)のボーカルソロパートを経てエンディングへ向かう④Don't Give Upなど、ライブならではのアレンジが秀逸な曲もあり嬉しさがこみ上げてきます。そして、本作でのみ聴けるアコースティックギターによるインスト曲⑥We Used To Be Friends以降は名曲のオンパレード。⑥におけるアコースティックサウンドの温かみを引き継いで始まる⑦Follow My Heart、キーボードソロがそのまま曲のイントロへと繋がっていく名曲⑧Save Me、オリジナルアルバム未収録にしておくには勿体ない隠れた名曲⑨Come On、当日のステージに初登場したAndyのギターソロに続いて演奏される2ndの代表曲⑩Burning Heartという流れは文句のつけようがありません。2枚のアルバムから、これだけのセットリストが組めるFAIR WARNINGは本当に名曲が多いバンドだと改めて感じました。

また「MORE」については、僕が持っているゼロ・コーポレーション盤(現在は廃盤)の時から収録されている3曲に加えて、マーキー・インコーポレイティドから再発されたバージョンにはシングル「SAVE ME」のカップリング曲(Come Onを含む未発表曲2曲と「GO!」収録曲のバージョン違い1曲)と再発盤でしか聴けない⑦Rivers Of Love(Different Version)が収録されていてお得感がアップしています。もともと「MORE」に収録されていた3曲については、どれもアウトテイクっぽさはあるもののメロディ運びは流石に上手くて、中でも②Meant To Beは「GO!」に入っていても不思議ではないほどのバラード佳曲です。

【音源紹介】
・I’ll Be There(TV Show)

FAIR WARNING「GO!」(1997)

  • 2009/06/19(金) 00:00:00

GO
【No.151】
★★★★★(1997)
年間ベスト1997年第3位

メロディアス・ハードロックというジャンルの中で、僕にとっての最重要アルバムといえるFAIR WARNINGの3作目。名盤と称えられるデビュー作以上に僕はこちらの方が気に入っています。高音域も力強く伸びるTommy Heart(Vo)のボーカル、伝説のギタリストUli Jon Rothから譲り受けたスカイギターで曲のハイライトを作り上げるHelge Engelke(G)のプレイ、体調不良のためHelgeより出番は少ないが泣きのフレーズで心を揺さぶってくるAndy Malecek(G)のギターといった要素がメインソングライターUle W. Ritgen(一部はHelgeの作曲)によって生み出される楽曲に乗ることで完成する唯一無二のFAIR WARNINGサウンドを完璧に表現したのが本作だと思ってます。

とにかく曲がハンパじゃなく良いんですよね。シングルカットされたFAIR WARNINGらしさ満点の①Angels Of Heaven、②Save Me、Andyのギターが堪能できるバラード③All On Your Own、哀愁の中にポップさも兼ね備えた④I’ll Be Thereという冒頭の4曲がどれも超がつくほどの名曲で、この時点で名盤決定です。その後、アルバム中盤でややテンションが下がる気もしますが、それは他の曲が良すぎるからであって並のバンドなら名曲扱いされそうな楽曲ばかりです。アコースティックギターが心地よく響く⑦Follow My Heart、アルバム後半の山場となっている⑫The Way You Want It、⑬The Love Songといったバラードチューンも絶品。

このアルバムを聴いてると不思議とポジティブな気持ちになり、元気が出てきます。「好きなハードロックアルバムは?」と聞かれたら、僕はまず本作を挙げますね。普段ハードロックを聴かない人にも受け入れられやすい音だと思うので、多くの人に聴いてもらいたい作品です。ちなみに僕が持っているのはゼロ・コーポレーションから発売された1997年盤ですが、2000年にマーキー・インコーポレイティドからリリースされた再発盤にはミニ・アルバム「ANGEL OF HEAVEN」にのみ収録されていた隠れた名曲Light In The Darkや本作収録曲の別バージョンなど、ボーナストラックが4曲追加されています。

【音源紹介】
・All On Your Own

【CD購入録】ABSTRAKT ALGEBRA「ANSTRAKT ALGEBRA」(1995)

  • 2009/06/16(火) 00:00:00

【CD購入録】
ABSTRAKT ALGEBRA
ABSTRAKT ALGEBRA「ANSTRAKT ALGEBRA」(1995)

北欧ドラマティック・ドゥームメタルの代表的バンドCANDLEMASSのメインソングライターLeif Edling(B)がCANDLEMASSの活動停滞中に結成したABSTRAKT ALGEBRAによる唯一のアルバムを買ってみました。メロディアスなHR/HMを好んで聴く僕にとってドゥームメタルはストライクゾーンではないし、CANDLEMASSも未聴なのですが、ABSTRAKT ALGEBRAには以前から関心があったんですよね。今は亡きゼロ・コーポレーションから発売されていた本作の中古盤をゲット。音楽性はというと、リリース当時に「漆黒の旋律」という謳い文句で称されていたのも納得の重く暗いヘヴィメタルで、一歩間違えばスローなだけの退屈な作品になりかねないところを厳かで呪術的なムードが僕を包み込んでくれます。「メロディアス」という言葉とは縁遠い作風でありながらも印象的な曲もあり、美しさが感じられる①Stigmata、本作では比較的スピード感のある②Shadowplay、闇のミサとでも呼びたくなる荘厳さに満ちた⑥April Clouds、15分の大作⑧Who What Where Whenなど、ついリピートを誘われる不思議な1枚です。後にYNGWIE MALMSTEENと名盤「FACING THE ANIMAL」を作り上げるMats Leven(Vo)のダーティな熱唱スタイル、語尾を吐き捨てるようなボーカルパフォーマンスも良いですね。もう少し聴き込んでみて更に本作を好きになるようならCANDLEMASSにも挑戦してみようかな。

TEN「TEN」(1996)

  • 2008/10/30(木) 17:50:35

TEN
【No.063】
★★★★(1996)
年間ベスト1996年第2位

英国人シンガーGary Hughes(Vo)Vinny Burns(G/ex-DARE)を中心とした、湿り気のあるメロディアス・ハードロックバンドのTENデビュー作。この時点ではバンドというよりもGaryのソロプロジェクトの色合いが濃く、上記2人とGreg Morgan(Ds/ex-DARE)を除いてはセッションミュージシャンがバックをかためています。

これまでGary Hughesというアーティストは知りませんでしたが、彼の生み出す楽曲はやや暗さと儚さをを感じさせる哀愁のメロディ満載で、FAIR WARNINGのような突き抜けた爽快感というよりは胸にジンワリ広がる美旋律が味わい深いですね。全10曲どれも好きですが勢いのあるアップテンポ⑤Stay With Me⑨Lamb To The Slaughter、ポップフィーリング溢れる⑦Eyes Of A Child、⑧Can’t Slow Downもあれば、メロディアスなサビが秀逸なミドル②After The Love Has Goneそして甘美なメロディに酔いしれるバラード⑥Close Your Eyes And Dreamや10分の大作⑩Soliloquy~The Loneliest Place In The Worldと楽曲のバリエーションも豊富で幅の広さを見せつけてくれます。特に⑨~⑩へと展開するアルバム終盤は素晴らしい流れです。

そして、本作をより魅力的にしているのがもう1人の主役Vinny Burnsのギターです。②でのメロディアスかつ印象的なリフワーク、⑥での甘く優しいギタートーン、⑩の後半で炸裂する強烈な泣きのギターソロなど、どの楽曲でも彼のギターが大活躍。Garyのロウトーンを主体としたマイルドな歌声と、情感溢れるVinnyのギターの相性は抜群です。この後、TENは正式なバンドとしてコンスタントにアルバムをリリースしてますが、僕が一番好きなのは本作ですね。

【音源紹介】
・After The Love Has Gone