ROYAL HUNT「2006 LIVE」(2006)

  • 2010/06/02(水) 00:00:00

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【No.238】
★★★★(2006)

発売から10年以上が経過した今でも愛聴しているライブ盤「1996」から10年の時を経てリリースされたJohn West(Vo/ARTENSION)が歌うROYAL HUNTとしては初のライブアルバム。「1996」と同じ2枚組仕様の本作はAndre Andersen(Key)の故郷ロシアはサンクトペテルブルグ公演の模様が収められDVDも同時リリースされています。正直なところ7th「EYEWITNESS」以降、孤高の輝きが弱まってきた感もあったROYAL HUNTですが、こうして各アルバムから満遍なくグレイテストヒッツ的に名曲の数々をプレイされると、やはり素晴らしいバンドだと実感せずにはいられませんね。思わず2枚組CDだけでなくDVDも買ってしまいました。

スタジオヴァージョン以上にカッコよくなっている最新作のタイトルトラックDisc-1①Paper Bloodに続いて早くも名曲Disc-1②Timeが登場する冒頭の2曲で一気にテンションが上がります。喉の調子が心配されたJohnもパワフルで伸びやかな歌声を聴かせていて、自身が加入した5th「FEAR」以降の楽曲は勿論ROYAL HUNTクラシックスも自らの持ち味を加えて見事に歌いこなしています。個人的ハイライトはDisc-2①Martial Arts~②Surrender~③Running Wildですね。そしてライブを締めくくるのはバンドの代表曲Disc-2⑧Epilogue。この曲を演奏する前にAndreがロシア語で「しばらくの間にいろいろあったが残留したメンバーもいる…ジョン・ウェスト」と述べてJohnを紹介するシーンと、曲の終了後にAndreとJohnがガッシリ抱擁する姿には目頭が熱くなりますね。この10年間で栄光と解散の危機という苦悩を味わったバンドのリーダーAndreが奏でる「あのピアノイントロ」が流れてきた瞬間、僕のミュージックライフにおける重要曲のひとつである名曲Epilogueと出会ってから15年以上も経ったのかと感慨にふけってしまいました。

ちなみにDVD盤には1曲(「PAPER BLOOD」のインストSK983)多く収録されています。これはインストを元にした各プレイヤーのソロパートで、ショルダーキーボードを手にしたAndreがMarcus Jidell(G)とじゃれ合いながら弾きまくるシーンからバンド状態の良さが伝わってきますが、これは映像あってこそだと思うのでDVDにのみ収録したのは正解かと。DVD盤を見ると新加入のMarcusとPer Schelander(B)はすっかりバンドに溶け込んでいるようで、2人のステージ上での華やかさとルックスが目を惹く一方でKenneth Olsen(Ds)のポッコリお腹に切なさと時の流れを感じますね。「FEAR」収録のバラードDisc-1⑦Follow Meが1コーラスだけで終わって物足りないとかDisc-1⑧Cold City Lightの掛け合いでの煽り方がイマイチだとか、女性コーラスがMaria McTurk1人になったためバックコーラスの厚みが減ったなど気になる点もありますが全体の完成度からしてみれば些細なことなので、実力派バンドROYAL HUNTのステージングを存分に楽しめる作品となっています。残念ながらJohnは2007年にバンドを脱退してしまいましたが、John West時代の優れたライブパフォーマンスを収録したお薦め作品であり、「1996」と並んでROYAL HUNT入門盤には最適だと思います。

【音源紹介】
・The Mission(Live)


・Epilogue(Live)

ROYAL HUNT「PAPER BLOOD」(2005)

  • 2010/05/29(土) 00:00:00

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【No.237】
★★(2005)

ROYAL HUNTからSteen Mogensen(B)とJKことJacob Kjaer(G)が脱退」というニュースは僕を含めたファンだけでなく、BURRN!誌のインタビューで「シンガーとドラマーのメンバーチェンジはよくあるが、SteenとJKはファミリーだ」と語っていたAndre Andersen(Key)にとっても大きな衝撃だったであろう「事件」でした。バンドの重要メンバーが相次いで脱退し、解散の危機に直面したROYAL HUNTでしたがAndreとJohn West(Vo/ARTENSION)が見事にそれを乗り越えて作り上げた8作目です。本作のベースはAndreが兼任、気になるギタリストにはスウェーデン出身のMarcus Jidell(ex-JEKYLL & HYDE、THE RING)なる人物を迎えています。そのMarcusですがタイプとしてはネオクラシカルな速弾きスタイルでJK以上のアグレッションを持ちつつ、僕の心を震わせてくれるフレージングも披露してくれていてバンドに新たなエネルギーをもたらしてくれています。

多様性が目立った前作「EYEWITNESS」とは違い、今回はROYAL HUNT本来の叙情味溢れるメロディックメタルに焦点を絞り、それでいてこれまで以上にパワフルな仕上がりとなっています。Marcusのプレイに触発されてか、Andreがスピードチューン①Break Your ChainsのイントロからしてVitalij Kuprij(Key/ARTENSION)っぽい電子音でこれまでにないほどピロピロと弾きまくっているのが印象的ですね。①の勢いを引き継いで美しいボーカルハーモニーから曲がスタートする②Not My Kind、ROYAL HUNTの真骨頂ともいえるナンバー④Never Give Upやタイトル曲⑧Paper Bloodなど疾走曲の割合が多く、それ以外にもドラマティックな⑤Seven Days、パワーバラード⑨Season's Changeなど「おっ」と身を乗り出す場面は存在するものの、過去の作品で僕を魅了してくれたメロディに以前ほどの凄みが感じられないというのが正直な感想です。John Westという超絶シンガーを擁しているのにボーナストラックを除く全10曲中3曲がインストで、そのどれもが平均的な出来というのも惜しいですね。このインスト曲の多さはJohnが喉の治療後だということに関連しているのかもしれませんが…。そういえば歌の上手さは相変わらずながら、マイルドだったJohnの声質が若干ざらついた感じになっているように思います。

本作に関しては解散の危機を無事に乗り切ってくれたということを喜びつつも、天才メロディメイカーAndreの実力はまだまだこんなものではないはずという気持ちが残ります。客観的に見れば、一定水準を超えた作品ではあるのですが、ROYAL HUNTは僕にとっての最重要バンドのひとつなだけにハードルが高くなってしまうんですよね。あと、このジャケットはちょっと…。元々ジャケットに定評のあるバンドではありませんでしたが、本作の迷ジャケ振りは2nd「CLOWN IN THE MIRROR」を超えたかもしれません(苦笑)。

【音源紹介】
・Never Give Up(Live)

ROYAL HUNT「EYEWITNESS」(2003)

  • 2010/05/23(日) 00:00:00

EYEWITNESS
【No.236】
★★★(2003)

「新作はニューメタルやジャズ、ゴスペルなどの要素を取り入れ、これまでと違う作風になる」とAndre Andersen(Key)がコメントをしていたため、期待よりも不安の方が大きい中で購入したROYAL HUNTの7thアルバム。いざ本作を聴いてみると、パイプオルガンをバックにJohn West(Vo/ARTENSION)が深みのある歌声を響かせる様が教会の荘厳なイメージを連想させるゴスペル調③The Prayer、ピアノやサックスのサウンドがジャジーな空気を生み出している⑥Wicked Lounge、これまでになくモダンなアレンジで迫る②Can't Let Go、④Edge Of The World、⑧Help Us Godなど、確かにAndreの言う新しい要素は含まれてはいるものの、その根底に流れるのはこのバンドがこれまでに聴かせてくれたメロディック・メタルサウンドで一安心という感じです。

そんな新機軸と呼べる楽曲を含んでいる一方で①Hunted、⑤Burning The Sunなど従来路線のナンバーも健在で、多様性はあれど結果的にはどこを切ってもROYAL HUNTらしいアルバムといえそうです。ただ初期に比べるとネオクラシカル色は確実に薄くなっていて、それと反比例するようにJacob Kjaer(G)のエモーショナルプレイの旨みがどんどん増してきているのが特徴ですね。バンド史上初めて同一シンガーで制作した3枚目のアルバムということもあってか、Johnのボーカルとバンドのフィット具合が一段と増していてROYAL HUNTが円熟期を迎えたと感じさせてくれる1枚でもあります。③、⑥などはソウルフルなフィーリングを持ち合わせたJohnあってこその楽曲ですね。

気になるのは過去のアルバムには必ず存在していたキラーチューンがないことでしょうか。⑤などはかなりいい線を行っているとは思うのですが、もう一押し突き抜けた感覚が欲しいというのが正直なところです。本編ラストのタイトルトラック⑩Eye Witnessもメロウな冒頭部分から徐々に曲が盛り上がってきてJohnのハイトーンが炸裂して「さぁ、ここからだ」というところでレコードの針が壊れたような効果音が入って曲が唐突に終わってしまうためモヤモヤ感が残ってしまいます。曲が良いだけに勿体ないですね。その後を非常に美しいバラード⑪Day Is Dawning(日本盤ボーナス)で締めくくってくれているので聴後感は悪くないし、全体を通して聴いて良いアルバムだと感じることはできるものの音楽性の幅を広げた反面、小粒な楽曲が並び大きく盛り上がるハイライトがないままに終わってしまっている感もあります。といっても本作が僕好みのメロディックメタル作品であるということは間違いなく、上に挙げた不満点についてもROYAL HUNTだからこそ要求してしまう贅沢な希望なんですけどね。

【音源紹介】
・Edge Of The World

ROYAL HUNT「THE WATCHERS」(2001)

  • 2010/05/09(日) 00:00:00

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【No.234】
★★(2001)

名盤「THE MISSION」から僅か4ヵ月のインターバルでリリースされたROYAL HUNTの企画盤。レコード会社は先行ミニアルバムの「INTERVENTION」、6thフル「THE MISSION」と本作をまとめて3部作として売り出していますが、これら3作品の間にストーリー性は全く感じられません。本作の内容は先行ミニ「INTERVENTION」では途中で終わっていたInterventionという曲が完全版(14分)とラジオエディット版(6分)という形で収録されている他、ヨーロッパツアーからの音源4曲とJohn West(Vo/ARTENSION)のボーカルによってリ・レコーディングされたデビュー作とセカンドアルバムのナンバーを2曲ずつ収録しています。

本作のリーダートラック的存在であり14分と長丁場の①Interventionは6分もあるイントロを過ぎれば叙情メロディが楽しめるROYAL HUNTとしては平均的な曲で、僕はスマートな仕上がりとなっているエディット版の方が気に入っています。そんな僕にとって本作の目玉は⑥One By One、⑦Clown In The Mirror、⑧Day In Day Out、⑨Legion Of The Damnedといったリメイク曲です。全体的にテンポが遅くなっているので、オリジナルが疾走曲だった⑧は違和感がなくもないですが、Johnの素晴らしい歌唱と2001年版ROYAL HUNTによるソリッドでシャープなサウンドプロダクション、そして今やバンドには欠かせない声となっているKenny Lubcke(Vo/ex-NARITA)のバックボーカルによって、新たな生命が吹き込まれた名演となっていて良いですね。特に⑥、⑧は初代ボーカルHenrick Brockmannバージョンしか聴けなかったのでファンとしては嬉しい限りです。

②Lies、③Flight、④Message To God、⑤Epilogueのライブ音源4曲に関しては、2枚組ライブ盤「2006 LIVE」がリリースされた今となっては③以外の収録曲がダブっているのであまり聴くことはなくなりましたが、「2006 LIVE」を買うまではよくリピートしていました。それにしてもJohnはライブでも余裕があって丁寧な歌い方をしていますね。安定感抜群なのでライブならではの熱気に欠けるきらいはあるものの、その歌唱力には惚れ惚れします。リメイクされた4曲は流石の出来栄えですが、①がROYAL HUNTにしては可もなく不可もない楽曲だと思っている僕にとっては熱心なファン向けの企画盤という印象です。ちなみに3部作の第1作目「INTERVENTION」はInterventionの前半部分のみバージョンと本作と同じライブテイクの②、③という3曲がダブっている他、Follow Me(「FEAR」収録)のアコースティックバージョン、ブルージーな未発表曲U-Turnとい内容で、このアルバム以上にマニア向けの1枚と言えるでしょう。

【音源紹介】
・Intervention(Radio Edit)

ROYAL HUNT「THE MISSION」(2001)

  • 2010/05/05(水) 00:00:00

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【No.233】
★★★★★(2001)
年間ベスト2001年第1位

ニューシンガーとしてJohn West(Vo/ARTENSION)を迎えて発表した前作「FEAR」(1999)が、過去の作品に比べてもう一息という印象だったROYAL HUNTの6作目。今回は作家Ray BradburyのSF小説「THE MARTIAN CHRONICLES」(邦題:火星年代記」)をモチーフにしたストーリーアルバムで曲間をインストやSEで繋いでいるため、全13曲が途切れることなく展開していきます。結論からいうと「ROYAL HUNTはやはり僕にとって最重要バンドのひとつだ」と再確認させてくれる1枚ですね。分厚いストリングス系の音を使うことの多かったAndre Andersen(Key)によるキーボードが従来とは違ったひんやりとしたサウンドとなっていて、メカニカルな印象を感じさせる音像の中でROYAL HUNTらしい気品あるメロディックメタルが繰り広げられています。前作同様、初期に比べて普遍的なメロディック・パワーメタル寄りの作風ながら今回は楽曲の充実度が素晴らしいですね。

SE①Take Offに続く②The Missionはデジタルビートを取り入れたイントロに驚かされますが、ROYAL HUNTらしいメロディのフックを持ったミドルチューンだし、それ以降も僕の琴線を刺激するメロディが次から次へと出てきます。中でも本作のキラーチューン④Surrender⑧World Wide Warはバンドの新たな名曲だと断言できる出来栄えで、この2曲を聴けるだけでも本作を買った価値があると思えるほどです。また本作で収録曲の半数を占めるインストもAndreのピアノソロをフィーチュアした⑦MetamorphosisJacob Kjaer(G)らしい泣きのギタープレイを堪能できる⑨Dreamline、デビュー作に収録されている名インストMartial Artsをビルドアップさせたかのような⑪Fourth Dimensionとそれぞれのキャラ立ちがしっかりしているのが◎。そして⑪に続く⑫Days Of No TrustはROYAL HUNTの王道とは一味違うAORっぽい大陸系バラードながら極上のメロディを持った名曲だし、ラストが勢いのある⑬Total Recallだというのも現在のバンドに漲るエネルギーを象徴しているようで好印象です。

そんな本作を更に素晴らしいものとしている大きな要因がJohn Westの圧倒的な歌唱力でしょう。シンガー未定のまま曲作りが進められた前作では発揮できなかった真の実力をこれでもかとばかりに見せつけてくれています。このアルバムでの歌いっぷりはARTENSION時代よりも断然魅力的で、彼のパフォーマンスの中でもトップクラスだと思います。John West在籍時のROYAL HUNTが生み出した最高傑作ですね。

【音源紹介】
・Surrender(Live)

ROYAL HUNT「FEAR」(1999)

  • 2010/05/01(土) 00:00:00

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【No.232】
★★★(1999)
年間ベスト1999年第9位

ベスト盤並みの濃厚さを持った2枚組ライブ盤「1996」、コンセプトアルバムの名盤「PARADOX」、それをライブで完全再現してみせた「PARADOX~CLOSING THE CHAPTER~」と、僕がROYAL HUNTに最ものめり込んでいた時期に突然届いた看板シンガーD.C. Cooper解雇という衝撃のニュース…。D.C.がソロ活動に力を入れ始めたことからAndre Andersen(Key)との間がギクシャクし始めているという噂は飛び交っていましたが、実際にこの第一報を耳にした時は本当にショックでした。しかし後任がARTENSIONの超絶シンガーJohn Westだと聞き、それまでの不安が期待に変わった5thアルバムです。1stと2ndが「華麗」、3rdと4thが「荘厳」なイメージだったとすると、本作はそこに「剛健」な要素が加わったという印象です。また本作はコンセプトアルバムではありませんが作品タイトル通り、全ての楽曲が「恐怖」をテーマにしていて曲間をSEで繋ぐという手法を取っています。

アルバム製作の最終段階でJohnの加入が決定したため本作の楽曲が彼の声域をフルに活かしきれてないのが残念ではありますが、それでもやはりJohn Westは抜群の歌唱力の持ち主だと感心せずにはいられません。D.C.にはなかったブルージーな渋さを発散する③Cold City Light、耳をつんざくハイトーンシャウトが炸裂する④Lies、⑥Voicesなどの歌いっぷりには痺れます。そして本作はギターオリエンテッドと言えそうなほどJacob Kjaer(G)のリードギターが大活躍していて、彼ならではの粘りのあるトーンで繰り出されるギターソロの登場頻度も過去最高で、ROYAL HUNTになくてはならない魅力的な要素となりましたね。④のイントロなどは正に彼の独壇場でAndreのキーボードが引き立て役にまわっているし、勢いのあるスピードチューン②Faces Of Warで切れ味鋭く入ってくるソロ、叙情バラード⑤Follow Meでの泣きのプレイも素晴らしいです。

ただ全7曲ともが5分以上、長いものは9分というAndre Andersenの1stソロ作「CHANGING SKIN」を継承するかのような大作志向の楽曲はというと、これまでのアルバムに比べると即効力に欠けるため地味な印象は拭えません。その要因のひとつは本作最長曲であるオープニング①Fearのイントロの長さで、Johnが本格的に歌い出すのは曲がスタートして5分近く経過してからだったりします。この曲後半の劇的な盛り上がりが素晴らしいだけに惜しいですね。1998年にリリースされた「CHANGING SKIN」(全6曲)と本作の楽曲から選りすぐりのものをピックアップして、適度な長さにアレンジすれば名盤になったのでは…という気もします。とはいえAndre節は本作でも健在なので聴けば聴くほど味わいが増してくる1枚ではあります。本作の2008年リマスター盤にはこのバンドにしては珍しくブルージーなU-Turn(ミニアルバム「INTERVENSION」収録)、14分に及ぶ大作Intervension(企画盤「THE WATCHERS」収録)というオリジナルアルバムには入っていない2曲が追加されています。

【音源紹介】
・Lies

EMIR HOT「SEVDAH METAL」(2008)

  • 2008/12/17(水) 08:15:39

SEVDAH METAL
【No.083】
★★★★(2008)
年間ベスト2008年第7位

かつてはNEON KNIGHTSというバンドに在籍していたボスニア・ヘルツェゴビナ出身のギタリストEmir Hotのソロ1作目。アルバムタイトルからもわかるように、東バルカン地方のトラッドミュージック「Sevdah(セヴダ)」を程よいアクセントとして取り入れたネオクラシカルメタルが楽しめる好盤です。こういったフォーク/トラッド色をメタルに融合させるというスタイルはヴァイキングメタルの専売特許という印象でしたが、正統派メタル好きの僕にとっては本作の基本線がネオクラ路線というのが嬉しいですね。例えるなら、YNGWIEスタイルのギタープレイにジプシー音楽をミックスさせたSteven Anderson(G)の名盤「GYPSY POWER」の歌モノバージョンという感じでしょうか。

本作でEmirを強力バックアップするのは、声質が変わったような気がするものの伸びやかなハイトーンは健在なJohn West(Vo/ex-ROYAL HUNT etc)、パワーヒットで楽曲にグルーヴをもたらすMike Terrana(Ds/MASTERPLAN、ex-RAGE)という2人のベテランで、本作をより魅力的なものにしてくれています。楽曲も②Devils In Disguise、④Skies And Oceansといったスピードチューン、ネオクラの王道をゆくミッドテンポ③World Set On Fire、Emirの繊細なアコギとJohnの熱唱が強烈な泣きを発散するバラード⑥Stand And Fight、Steven Andersonの作品でも使われていた欧州民族音楽フレーズを用いたインスト⑧Hora Martisoruluiとバリエーション豊かで、アルバムの流れとしてもバランスよく配されています。またアルバム中盤の⑤Sevdah Metal Rhapsodyは12分近くの大作で、ヨーロッパ民謡風の情緒とヘヴィメタルの攻撃性の両方を併せ持ち、途中にMikeのドラムソロまでもフィーチュアした聴き応えたっぷりの1曲。個人的お気に入りチューンは、エキゾチックな歌メロで駆け抜ける⑦Endless Painですね。曲のラストでスローダウンしたかと思うと、その後再び加速するというアレンジがツボです。

アルバムの主役であるEmirのギターは安定感とセンスの良さが感じられるだけでなく、ギタリストのソロ作品でありながら良質な歌メロ満載というのがいいですねぇ。サウンドプロダクションのショボさが気にならなくはないけど、そんなマイナス面を補って余りある充実の楽曲と各メンバーのプレイがぎっしり詰まった1枚です。John、Mike共に数多くのバンドを渡り歩くタイプのプレイヤーなので難しいかもしれませんが、次作も同じメンバーで作ってもらいたいですね。

【音源紹介】
・Devils In Disguise