HARTMANN「OUT IN THE COLD」(2005)

  • 2014/12/06(土) 00:00:00

OUT IN THE COLD
【No.414】
★★★(2006)

ネオクラシカル・メタルバンドAT VANCEの実力派シンガーとして名を馳せたOliver Hartmannがバンド脱退後に結成した自身のプロジェクトHARTMANN名義で放つ1stアルバム。AT VANCEがYNGWIE MALMSTEEN直系のサウンドだったのに対して、本作は肩の力を抜いたメロディアスハード路線となっています(Tシャツにジーンズ姿のOliverが写ったブックレットも新鮮)。「より広い音楽性に挑戦したい」という思いでOliverはバンドを離れたそうですが、AT VANCE時代はOlaf Lenk(G)が創作面のほぼ全てを担っていたため彼の作曲能力は未知数で一抹の不安もありました。ところが本作にはそんな心配を一蹴するだけの楽曲が並んでいます。

ボーカリストによるプロジェクトということもあり、各曲の中心に据えられているのは「歌」。それでいて楽曲はミドルテンポ、バラードが大半を占めるためAT VANCEの要素を求めると肩透かしをくらいますが、ひとつの作品として聴くと十分楽しめる1枚となっていますね。本作の中では珍しいアップテンポ⑥What If I、⑩Listen To Your Heartは出色の出来だし、アルバム随一のヘヴィチューン④The Same Againもカッコいい。バラードに関しても優しく爽やかなメロディが心地よい⑤I Will Carry On、曲名の通り眩い光に向けて歩むOliverの姿が目に浮かぶ壮大な⑫Into The Light辺りが印象に残りました。そして一際素晴らしいのが哀感を爆発させたパワーバラード③Brazenですね。この曲は丸坊主の女性シンガーSkin擁するヘヴィロックバンドSKUNK ANANSIEのカバーで選曲の妙もさることながら、ファルセットを交えたボーカルパフォーマンスが圧巻でハイライトとなっています。

そんな③に象徴されるように本作をワンランク上に押し上げているのがOliverの歌唱力。David Coverdale(Vo/WHITESNAKE)のような深みとEric Martin(Vo/MR.BIG)ばりのソウルフルな響きを併せ持つ彼のボーカルは絶品です。音楽性の関係もあってAT VANCE時代と比べると声を張り上げて歌う場面は激減、HARTMANNではマイルドかつ表情豊かなアプローチとなっていてシンガーとしての力量はこちらの方が活かせているような気もします。AT VANCEから脱退してしまったのは残念ですがHR/HMというジャンルにOliverを止めておくべきではないのかもしれませんね。個人的にはHARTMANNと並行して、どこかのメタルバンドのパーマネントメンバーとして活動して欲しいというのが正直なところですが…。

【音源紹介】
・What If I

AT VANCE「ONLY HUMAN」(2002)

  • 2014/11/24(月) 00:00:00

ONLU HUMAN
【No.413】
★★★★(2003)

1999年にデビューして以降、新鮮味には欠けるものの高品質なネオクラシカルアルバムを毎年リリースし続けるAT VANCEの4作目。2nd「HEART OF STEEL」(2000)が素晴らしかったため期待に胸を膨らませて聴いた前作「DRAGONCHASER」(2001)は曲単体としては光るものがあるけれど、1枚のアルバムとしては物足りなさが残る内容でした。そんな3rdの印象が尾を引き、本作を聴いたのはリリースから1年以上経ってからだったのですが今回は最高傑作との呼び声が高いのも頷ける起死回生の作品となっていますね。何と言っても楽曲の充実度が過去最高クラスで疾走曲からミドル、バラード、インストなどバラエティに富んでいるだけでなくバンドの代表曲と呼べそうなナンバーも収録されています。

ダークな雰囲気を纏いながら疾走するAT VANCEの王道①The Time Has Come、バンド屈指の名曲として語り継がれるであろう②Only Human、歌メロが耳に残るミッドテンポ③Take My Pain、渋い低音で歌っていたサビを終盤では伸びやかなハイトーンで歌い上げるOliver Hartmann(Vo)の歌唱力に魅了される④Fly To The Rainbowと続く流れがまず素晴らしい。アルバム中盤は曲数をもう少し絞っても良かったかなという気はするものの、アンセミックなコーラスをフィーチュアした⑩Sing This Song、妖しい笑い声が不気味さを醸し出す一方でメロディ自体は明るい⑪Witches Dance、物悲しく重厚なバラード⑫Wings To Fly、原曲を忠実に再現しつつオリジナルにないエンディング部分ではOlaf Lenk(G)が独自色を出して弾きまくるRAINBOWのカバー⑬I Surrenderなど後半にも強力なナンバーが並んでいるので聴き終えた時の満足感は高いですね。日本盤ボーナス⑭Heroes Of Honorも前作収録のAges Of Gloryに通じるハイテンションなジャーマンメタルで本編に入らなかったのが不思議なほどです。前作では8分に及ぶクラシックカバーBeethoven, 5th Symphonyを4曲目に配したことがアルバムの勢いを削いでいたのに対して、今回は⑥Four Seasons/Spring、⑨Solfeggietto共に3分以内とコンパクトにまとめられているため良いアクセントとなっているのも好印象。

そんな楽曲面のみならずB級臭さを発散していた音質、ジャケット(特に前作は酷かった/苦笑)についてもミキシングをSascha Paethが担当、アルバムカバーにはLuis Royoのイラストを用いるなどしてグレードアップしています。バンドとしての成長を見せつけてくれた本作を聴いて、AT VANCEが中堅ポジションから飛躍することを期待していたのですがバンドの顔でもあるOliverが本作を最後に脱退。2nd以降は不動だった演奏陣も離脱が相次ぎAT VANCEはOlafのソロプロジェクト色を強めていくことになります。一方Oliverは自身のバンドHARTMANNを立ち上げメロハー寄りの作品(特に1st「OUT IN THE COLD」がお気に入りです)をリリースしたり、AVANTASIAを始めとするプロジェクトにゲスト参加したりしていますがメタルから距離を置くようになってしまったのが残念。彼をシンガーに迎えたいと考えるバンドは少なくないと思うんですけどね(Oliverがその手のサウンドに興味を持たなくなったのかもしれませんが)。

【音源紹介】
・Only Human

AT VANCE「DRAGONCHASER」(2001)

  • 2014/11/12(水) 00:00:00

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【No.412】
★★(2001)

1999年に「NO ESCAPE」で彗星の如くデビュー、僅か5ヶ月後に2nd「HEART OF STEEL」(2000)をリリースしたドイツ産ネオクラシカルメタルバンドAT VANCEによる3rdアルバム。前作から1年も経たずに発表された本作はドイツの国民的英雄叙事詩「ニーベルンゲンの歌」を題材としたコンセプトアルバムとなっています。前作と同じラインナップで制作された今回のアルバムではOlaf Lenk(G)、Oliver Hartmann(Vo)だけでなくUli Muller(Key)も存在感を発揮しており、バンドらしさが強まってきていますね。

「HEART OF STEEL」が近年稀に見るネオクラメタルの名盤だったので今回も期待していたのですが、鐘の音と轟く雷鳴のSEを切り裂くように流れ込んでくるギターで幕を開けるネオクラチューン①Dragonchaser、AT VANCE史上最速を誇るクサメロ疾走曲②Ages Of Glory、いかにもこのバンドらしい佳曲③Crucifiedと続く冒頭3曲は「2ndをも上回るのではないか」と思わせるだけの勢いがありますね。ところがアルバム中盤でその勢いは失速してしまいます。その大きな要因となっているのがベートーベンの超有名曲「運命」をカバーした④Beethoven, 5th Symphony。これまでにもクラシック曲をカバーしてきたAT VANCEなので流石の出来ではあるのですが、この位置に8分に及ぶクラシックカバーを配したことで中弛みしてしまっているんですよね。しかもそれに続く⑤Heaven Can Waitもダークな曲調なのでアルバム序盤のいい流れが寸断されているように思います。その後は3作連続となるABBAのカバーの中でも最高の仕上がりとなった⑥The Winner Takes It All(オリジナル以上に好きです)、ストーリーの関係もあってか暗く悲しい雰囲気が支配的なバラード⑦My Bleeding Heart、②に匹敵するほどの高揚感をもたらしてくれるスピードチューン⑨Too Lateもあって結構楽しめるのですがアルバム全体の印象としてはもどかしさが残ります。

リアルタイムで本作を聴いていた時は中盤にダレるというイメージが強くて好きになれず、次回作「ONLY HUMAN」(2002)の購入をためらってしまうほどでした。ところがこのブログ記事を書くために本作をリピートしていると、そんなマイナス面だけでなく①、②、⑨といったキラーチューン候補やAT VANCEによるカバー曲の最高峰⑥の素晴らしさを再発見できたと思います。こうして考えてみると「本作のキーはやはり④」というところに戻ってしまうんですよね。この曲が2~3分の長さだったり、もう少し緩急をつけたアレンジとなっていればアルバムの印象もグッと良くなったと思うのですが…。というわけで個々の楽曲を取り出して聴くとAT VANCEでも屈指の名曲があるものの、アルバムの流れが良くないため損をしている1枚と言えそうですね。

【音源紹介】
・Ages Of Glory

AT VANCE「HEART OF STEEL」(2000)

  • 2014/10/19(日) 00:00:00

HEART OF STEEL
【No.410】
★★★★(2000)
年間ベスト2000年第5位

Olaf Lenk(G)、Oliver Hartmann(Vo)という2枚看板を擁するネオクラメタル界の新星AT VANCEがデビュー作「NO ESCAPE」(1999)から僅か5ヶ月という短いインターバルで発表した2作目。ベーシストがリズムギターに転向、ドラマーは実力不足を理由に解雇されたためリズム隊が一新された6人編成となっています。今回のアルバムはそんなメンバーチェンジの影響を微塵も感じさせないばかりか、前作から成長した姿をまざまざと見せつけてくれる名盤に仕上がっています。

物悲しいアコギによるイントロ①Preludeから、その旋律を引き継ぐクサメロ疾走曲②Soldier Of Timeへ至る流れは「メタルアルバムの幕開けはかくあるべし!」と言わんばかりのオープニングで胸が熱くなりますね。それ以降もメジャーキーを使ったアップテンポ③The Brave And The Strong、曲名が示す通り鋼鉄魂を鼓舞してくれるミドル④Heart Of Steel、理屈抜きでカッコいいと思える疾走チューンズ⑥King Of Your Dreams⑩Don't You Believe A Stranger(特に前者はグイグイ引っ張っていくOlafのギターリフが気持ちいい)、Oliverの渋い声質が素晴らしい泣きのバラード⑦Princess Of The Night、クラシカルな美旋律が舞う⑧Goodbyeなど前作以上に充実したナンバーが目白押しです。また曲としては地味ながら⑨Why Do You Cry?でフィーチュアされている「ボン♪」という男声コーラスはAT VANCEの隠れた代名詞だと思うのは僕だけでしょうか。そしてこのバンドに欠かせないカバー曲はABBAシリーズ第2弾の⑤S.O.S.、ショパンの曲をOlafが弾きまくる⑪Chopin/Etude No. 4SUPERTRAMP⑫Logical Songを収録。どれもなかなかの出来映えでアレンジ力の高さが窺えますね。

デビューアルバムの時点で既に高かった楽曲のクオリティは更に向上しているしギタリスト、シンガーというバンドのセンターラインに実力者が揃っているため安心して聴くことができます。特にOliverは声質が太いこともあってハイトーンで歌っていても常に余裕を感じさせるボーカルパフォーマンスで作品をワンランク上に押し上げていますね。前作より音は良くなっているもののパタパタ感が残るドラムサウンドが残念ではありますが、それ以外の要素がそんな弱点を見事に補っています。一般的にAT VANCEの最高傑作と言えば4作目にしてOliver在籍時のラストアルバムとなった「ONLY HUMAN」(2002)が挙げられることが多いようですが僕は本作の方が好きですね。

【音源紹介】
・Goodbye

AT VANCE「NO ESCAPE」(1999)

  • 2014/10/03(金) 00:00:00

NO ESCAPE
【No.409】
★★★(1999)

CENTERSというバンドで活動を共にしていたOlaf Lenk(G)Oliver Hartmann(Vo)が新たに結成したネオクラシカル・パワーメタルバンドAT VANCEの1stアルバム。YNGWIE MALMSTEENからHR/HMに入門した僕にとってネオクラ系メタルは最重要ジャンルのひとつなのですが、90年代末期はこの手のサウンドに食傷気味でもありました。その当時にデビューしたバンドの中でよく聴いていたのが以前にブログで紹介したMAJESTICとこのAT VANCEですね。やり過ぎなほどに弾きまくるキーボードと大胆な借用フレーズが話題となったMAJESTICに対してAT VANCEはこれがデビュー作とは思えないほど質の高いサウンドで僕を魅了してくれました。

本作を語る上で外せないのがフロントマンOliver(本作ではHardmannと表記)による抜群の歌唱力。Jeff Scott Soto(Vo/TALISMAN)にも似たハスキーな声質と高音域も難なく歌いこなすレンジの広さを併せ持つ彼は本作以降、Tobias Sammet(Vo/EDGUY)主宰のプロジェクトAVANTASIAやソロ活動でその名を広めていくこととなります。その相棒でメインソングライターのOlafも丁寧に組み立てられたソロパートで流麗なプレイをビシバシ決めています。楽曲についてもネオクラシカルなムード漂う疾走曲①Flying High、②No Escape、スピーディーなインスト小曲③No Speakと続く冒頭の流れは文句なしのカッコよさ。フックに満ちたサビメロが冴えるミドル④Die In Your Arms、荘厳なオルガンサウンドで幕を開けシンガロングを誘うコーラスへと繋がるキャッチーソング⑤All For One, One For Allといった速さに頼らないナンバー、哀愁のバラード⑧Lost In Your LoveからGAMMA RAY直系の爽快ジャーマンメタル⑨Power & Gloryなどバリエーションも豊富です。

ボーカルとギター、そして楽曲というバンドの根幹部分がしっかりしているため新人離れした安定感がありますね(OlafもOliverもCENTERSでのキャリアがあるので当然かもしれませんが)。また巧みな選曲とアレンジを用いてカバー曲でも楽しませてくれるのがAT VANCEの特徴で、本作ではABBA⑥Money, Money, Money、ヴィヴァルディの「四季」をギターインストに仕上げた⑦The Four Seasons - SummerSURVIVORの大ヒット曲⑪Eye Of The TigerTEARS FOR FEARS⑫Shoutと4曲も収録していながらどれも上々の出来となっています。惜しむらくは迫力に欠ける音質と本編ラストを凡庸なミディアムチューン⑩Seven Seasで締めくくっている点でしょうか。とはいえデビュー作としては十分なクオリティを誇っているし、楽曲の充実度は後の作品群と比べても遜色ないと思います。

【音源紹介】
・Power & Glory

TOBIAS SAMMET'S AVANTASIA「ANGEL OF BABYLON」(2010)

  • 2011/03/29(火) 00:00:00

ANGEL OF BABYLON
【No.282】
★★★★(2010)
年間ベスト2010年第10位

当初は前編・後編で完結する予定だったもののTobias Sammet(Vo/EDGUY)の創作意欲が止まらなかったため3部作となった「THE SCARECROW」物語のパート3にしてAVANTASIAの5thアルバム。同時リリースされた第2部「THE WICKED SYMPHONY」と同じくバラエティに富んだ、それでいてキャッチーなメロディを持った楽曲が目白押しな充実作です。ゲストシンガーのインパクトではKlaus Meine(SCORPIONS)、Tim Ripper Owens(YNGWIE MALMSTEEN、ex-JUDAS PRIEST)が参加していた前作に一歩譲りますが、本作ではJorn Lande(Vo/MASTERPLAN)が大きな存在感を放っているし、個性派シンガーJon Oliva(Vo/SAVATAGE)やメタル界を代表するキーボードプレイヤーJens Johansson(Key/STRATOVARIUS)が参加するなど相変わらずの豪華さを誇っています。

Jornによる説得力抜群の歌唱でスタートした後TobiasにRussell Allen(Vo/SYMPHONY X)、前作ではギタリストに徹していたOliver Hartmann(Vo/HARTMANN、ex-AT VANCE)が加わってパワフルにせめぎ合い、伸びやかなサビはMichael Kiske(Vo/UNISONIC、PLACE VENDOME、ex-HELLOWEEN)が朗々と歌う①Stargazersは正に「AVANTASIAオールスターズ」と呼ぶべきナンバーで、それに続いて王道を行くメロディックメタル曲②Angel Of BabylonはJensによる特徴的なキーボードソロをフィーチュアしながらスリリングに疾走していきます。オープニングに9分半の長編①とわかりやすいメロパワ②を並べるという入り方は前作と同じですね。また楽曲の多彩さという点で本作は過去最高と思えるほどで、ポップな歌メロがインパクト抜群な③Your Love Is Evil、3rd「THE SCARECROW」収録曲のThe Toy MasterではAlice Cooper(Vo)が演じていたストーリー上のキャラ「トイ・マスター」がJon Olivaの客演で再登場するミステリアスチューン④Death Is Just A Feelingという対照的な2曲、Eric Singer(Ds)による「1、2、3、4!」のカウントで始まりクワイアやシンフォニックな質感を排除しているためラフな仕上がりとなったハードロック⑤Rat Race、AVANTASIAのプロデューサーSascha Paeth(G/ex-HEAVEN'S GATE)のペンによるゴシックメタル調をAVANTASIAのツアーに帯同した経験もある女性シンガーCloudy Yangが全編を歌う⑧Symphony Of Life、オールドスタイルなロックサウンドを前に出した⑨Alone I Remember(Jornのパフォーマンスがこれまた素晴らしい)など非常にカラフル。それでいて各曲にはTobias節が貫かれているし、アルバム終盤をEP「LOST IN SPACE PART 2」(2007)にも収録されていた名曲⑩Promised LandBob Catley(Vo/MAGNUM)が希望を感じさせるメロディを優しく聴かせるシンフォバラード⑪Journey To Arcadiaといった「らしい」曲で締めてくれているため「散漫」ではなく「バラエティがメチャクチャ豊富」という印象になっています。ちなみに⑩のEPヴァージョンではTobias、Jorn、Kiskeの3名がボーカルを分け合っていましたが、本作ではTobiasとJornのみが歌うヴァージョンとなっています。

このプロジェクトの初期2作品はアルバムタイトルからして「メタルオペラ」だったのに対して、この「THE SCARECROW」3部作をTobiasは「ロックオペラ」と表現しているとおりメタル色は確実に薄まっているのでメロパワを求めると肩透かしをくらうかもしれませんが、練り上げられた楽曲群はどれも高品質だと思います。気になる点を挙げるとすれば本作のオープニング、エンディング曲がやや尻切れトンボ気味に終わっているのと、今回の3部作はゲーテの「ファウスト」をモチーフにしていながらも内容が抽象的なため物語の情景を思い浮かべながら音楽を聴くというコンセプトアルバムならではの楽しみが味わいにくいことでしょうか。本作ならびに「THE SCRECROW」サーガはストーリーに沿って聴き進めるというよりは、優れた楽曲集として楽しむアルバムという感じですね。

【音源紹介】
・Promised Land(ANGEL OF BABYLON VERSION)

TOBIAS SAMMET’S AVANTASIA「THE SCARECROW」(2008)

  • 2008/11/25(火) 07:55:41

THE SCARECROW.jpg
【No.075】
★★★★(2008)
年間ベスト2008年第6位

EDGUYというバンドだけでなく、今やジャーマンメタル界のリーダーといえる存在になりつつあるTobias Sammet(Vo/EDGUY)が主宰するプロジェクトAVANTASIAの3作目。Tobias自身、AVANTASIAの3枚目のアルバムはないと公言していた時期もあっただけに、こうして3rdアルバムがリリースされたことはファンとして嬉しいですね。

このプロジェクトの目玉であるゲスト陣は相変わらずの豪華さです。ミステリアスな①Twisted MindRoy Khan(Vo/KAMELOT)、一般のボーカルものとしても通用しそうなバラード⑤What Kind Of Loveには女性シンガーAmanda Somaville、邪悪なムード漂う前半からキャッチーな後半になだれ込む⑦The Toy Masterには重鎮Alice Cooper(Vo)と今回初参加のメンバーのみならず、今やここでしかメタルを歌う声を聴けないMichael Kiske(Vo/ex-HELLOWEEN)の伸びやかな歌唱が楽しめる超HELLOWEENタイプの疾走曲③Shelter From The Rainなど各シンガーの持ち味を活かしまくった楽曲を生み出すTobiasの作曲能力に改めて感服。が、しかし本作の美味しいトコを持っていったのはJorn Lande(Vo/ex-MASTERPLAN)ですね。ケルト風味のドラマティック大作②The Scarecrow、キャッチーな歌メロと躍動感が魅力の⑥Another Angel Downなどでの熱唱振りは他のどのシンガーよりも輝いてます。ちなみに演奏陣はパワーメタル界の名プロデューサーSascha Peath(G/ex-HEAVENS GATE)がギター、リズム隊はTobias自身がベース、Eric Singer(Dr/KISS etc)がドラムというバンド形態を基本にKai Hansen(G, Vo/GAMMA RAY)、Rudolf Shenker(G/SCORPIONS)がゲスト参加しています。

アルバム全体としてはEDGUYと呼応するかのようにメロディックパワーメタル色は後退しているので、パワーメタルの王道的作品を求めるとやや厳しいかもしれませんが、過去2作以上にバラエティに富んだ楽曲が揃っていて、そのどれもが耳に残るメロディを持っているのは流石。すでに「THE SCARECROW」後編の制作も決定しているらしいので、次回作にも期待大ですね。

【音源紹介】
・Shelter From The Rain

TOBIAS SAMMET’S AVANTASIA「THE METAL OPERA PART 2」(2002)

  • 2008/11/23(日) 07:58:45

THE METAL OPERA PART 2.jpg
【No.074】
★★★★(2002)

若き天才Tobias Sammet(Vo/EDGUY)によるソロプロジェクトAVANTASIA待望の第2弾。メロディックメタルとして、圧倒的な完成度を誇ったPART 1と同時期にレコーディングされていた本作は、絵に描いたようなジャーマンメタル作品だった前作に比べると更にシンフォニックなものはより壮麗にしつつ、ハードロックサウンドも取り入れ曲の幅を広げてきたように感じます。参加メンバーも前作同様の豪華なメンツに加え、気品ある英国ボイスが魅力のBob Catley(Vo/MAGNUM)が参加してるのも注目。

いきなりクライマックスかというほど大仰でドラマティックな大作①The Seven AngelsからAVANTASIAストーリーの後編はスタート。ゲストシンガーの大半が参加し、入れ替わり立ち代り歌い上げる14分の感動絵巻はこの手の音楽が好きな人にとっては至福のひと時となるでしょう。その後はコンパクトにまとめられた楽曲が続き、TobiasとMichael Kiske(Vo/ex-HELLOWEEN)のデュエットで高揚感あるメロディが歌われるジャーマンチューン②No Return、Bob Catleyの渋い歌声がはまるバラード④In Quest ForAndre Matos(Vo/ex-ANGRA)Kai Hansen(Vo、G/GAMMA RAY)がボーカルを分け合い、サビではTobiasが「Welcome To Avantasia~♪」と歌い上げる本作最高の疾走曲⑧Chalice Of Agonyを筆頭にハイクオリティな楽曲が揃っています。

気になるのは「METAL OPERA」の名を冠している割には、音楽的には各曲のつながりが希薄でオペラ作品というより優れたシンフォニックメタル作品になってるということ。豪華絢爛な①を冒頭に持ってきて終盤はどう盛り上がるのかと期待してたのに、淡白なラスト⑩Into The Unknown(いい曲なんですけどね)でAVANTASIAストーリーが締めくくられてしまってるのが残念。純粋に一つの作品として見た場合は美味しいメロディがテンコ盛りなので、その辺りは気にしないでいれば十分楽しめる1枚です。

【音源紹介】
・The Seven Angels(前半部分)

TOBIAS SAMMET’S AVANTASIA「THE METAL OPERA」(2001)

  • 2008/11/21(金) 09:59:06

THE METAL OPERA.jpg
【No.073】
★★★★★(2001)
年間ベスト2001年第2位

新世代ジャーマンメタルバンドEDGUYの若きフロントマンTobias Sammet(Vo)が自ら作ったファンタジック・ストーリーを展開させるコンセプトアルバム。このアルバムの目玉は何といっても豪華すぎるゲストでしょう。主なところを挙げてみても、伝説のハイトーンシンガーMichael Kiske(Vo/ex-HELLOWEEN)をはじめ、Rob Rock(Vo/ex-IMPELLITERI)、Oliver Heartmann(Vo/ex-AT VANCE)、Andre Matos(Vo/ex-ANGRA、SHAMAN)といったメタル界の実力派シンガーに加え、麗しのエンジェリックボイスの持ち主Sharon Den Adel(Vo/WITHIN TEMPTATION)他多数のゲストシンガーが参加しています。そしてバックを支える演奏陣もHenjo Richter(G/GAMMA RAY)、Markus Grosskopf(B/HELLOWEEN)、Alex Holzwarth(Ds/RHAPSODY)(曲によってゲストプレーヤー参加)というメンツで、このラインナップ見ただけで興奮してしまいます。

これだけのメンバーを集めたTobiasの人望とゲストシンガー陣にも引けをとらない堂々たる歌唱に感心しきりですが、ここに収録されている曲のなんと素晴らしいことか。一聴して思い出したのは、HELLOWEENがメタル界に残した金字塔的アルバム「KEEPER OF THE SEVEN KEYS」ですね。序曲からジャーマンメタルの王道を行く疾走曲②Reach Out For The Lightに始まり、キャッチーなサビを持つ③Serpents In Paradiseはいわゆる「キーパーなメロディ」が魅力の曲でHELLOWEENのFuture WorldRise And Fallの雰囲気を感じさせます。2005年に「本家」HELLOWEENが「KEEPER OF THE SEVEN KEYS」の続編を発表したけど、このアルバムの方がキーパーらしいメロディが味わえます。それ以降も抜群のメロディを持った曲が続きますが、Andre Matosの繊細な歌声がはまっているバラード小曲⑪Inside、威厳に満ちたミドルチューン⑫Sign Of The Cross、クライマックスを飾る10分の大作で完成度の高い疾走曲⑬The Towerと異なるタイプの曲調で畳み掛けるアルバム終盤は圧巻です。

「METAL OPERA」というタイトルから想像するほど、オペラティックな要素はなく基本的な音楽性はEDGUYと大差ないけど、本作以前にリリースされたEDGUYのどのアルバムよりも好きです。「KEEPER OF THE SEVEN KEYS PART 3」というフレコミで聴いたとしても、僕はすんなり受け入れられそうなアルバム、即ちメロディック・パワーメタルの名盤ということですね。

【音源紹介】
・Sign Of The Cross(Live)
後半は「THE METAL OPERA PART 2」(2002)の1曲目The Seven Angelsです。