SAVAGE CIRCUS「OF DOOM AND DEATH」(2009)

  • 2012/04/19(木) 00:00:00

OF DOOM AND DEATH
【No.324】
★★(2010)

方向性の違いを理由にBLIND GUARDIANから脱退したThomas "Thomen" Stauch(Ds)が自分のやりたい音楽を追求するために結成したバンドだったはずが、デビュー作「DREAMLAND MANOR」(2005)リリース後のツアーに体調不良のためほとんど参加できなかったThomenが事実上解雇という形でバンドを去る「事件」が勃発したSAVAGE CIRCUSの2ndアルバム。Thomenの後任には実力者Mike Terrana(Ds/MASTERPLAN、ex-YNGIWE MALMSTEEN、RAGE etc)を迎えていますが、このバンドはThomenがBLIND GUARDIAN時代に温めていた楽曲がきっかけで誕生したと思っていたので彼抜きでSAVAGE CIRCUSが成り立つのか疑問でした。ところが、いざ蓋を開けてみると前作と同レベルかそれ以上の突進力で迫りサビを分厚いコーラスで盛り上げるという3rd「TALES FROM THE TWILIGHT WORLD」(1990)時代のBLIND GUARDIANを彷彿とさせるサウンドを今回も響かせてくれています。これは今やバンドの中心人物となったPiet Sielck(G/IRON SAVIOR)が初期BLIND GUARDIANのプロダクション等に深く関わっていた経験が活かされているようですね。

作品全体から発散されるBLIND GUARDIANっぽさの大きな要因であるJens Carlsson(Vo/PERSUADER)の熱唱が若かりし頃のHansi Kursch(Vo/BLIND GUARDIAN)を連想させるばかりか、本作ではNils Patrik Johansson(Vo/WUTHERING HEIGHTS)ばりの暑苦しさを感じさせるほどパワフルに進化しています。本家BLIND GUARDIANが「A TWIST IN THE MYTH」(2006)で従来のパワーメタルとはやや質の異なる要素を感じさせる音楽性を提示したのとは対照的にSAVAGE CIRCUSはとにかく力で押しまくるというのが印象的ですね。そんなバンドサウンドを象徴するかのようなオープニングトラックにしてタイトル曲①Of Doom And Deathで掴みはOK。アルバム中盤と終盤にそれぞれ⑤Empire、⑧From The Ashesという強力チューンを配していて、特に「ディエスティニィ~♪ディエスティニィ~♪」のサビメロが耳に残る⑧は僕的に本作のハイライトですね。また終始パワーと熱さがほとばしる作風の中で異彩を放つ「まるでQUEEN」なパワーバラード⑥Ballad Of Susanもアルバムの良いアクセントになっていると思います。ちなみに前作でSAVAGE CIRCUS版Barbara Annとでも言うべきカバー曲Ca Plane Pour Moi(PLASTIC BERTLANDをボーナストラックに収録していたバンドは本作でも⑩Don't Let Me Be Misunderstood(ANIMALSをカバーしています。これは日本でも歌手尾藤 イサオが「悲しき願い」としてカバーしたことで知られる曲のようです。

以上が「今や本家では聴けない初期BLIND GUARDIAN型突進系パワーメタルが楽しめる」「バンド創設者ThomenがいなくてもSAVAGE CIRCUSらしいアルバムを完成させてくれた」といった本作のポジティブな点に注目した場合の感想ですが、SAVAGE CIRCUSの2ndアルバム単体として見ると若干厳しいというのが正直なところです。その理由としては、前作でも感じられた「聴いている最中はカッコいいと思えるけれども聴き終えた時に印象に残るメロディの少なさ」が挙げられます。しかも総合的に見ると前作よりフックのあるメロディが減ったように思えるし、楽曲の大半が6分~7分と長尺になっているため1曲1曲がクドく、本家が辿った作り込みと複雑化の道を後追いしているように思えるのも気がかりな点です。あとはSAVAGE CIRCUSのバンド感の希薄さもマイナス要素でしょうか。Pietと本作から加入したYenz Leonhardt(B)IRON SAVIOR、JensとEmil Norberg(G)PERSUADERというメインバンドを持っているし、Mikeもメタル界屈指の渡り鳥ドラマーなのでSAVAGE CIRCUSが最優先だというメンバーがいない状況下でバンドが今後も存続していくのか心配でもありますね。

【音源紹介】
・From The Ashes

SAVAGE CIRCUS「DREAMLAND MANOR」(2005)

  • 2012/03/26(月) 00:00:00

SAVAGE_CIRCUS_DM.jpg
【No.322】
★★★(2005)

結成当初から数えると約20年間も在籍していたBLIND GUARDIANからThomas "Thomen" Stauch(Ds)が2005年に脱退して結成した新バンドSAVAGE CIRCUSの1stアルバム。元々はBLIND GUARDIANがメインでこちらはあくまでもサイドプロジェクト的な位置付けだったようですが、初期の突進型スタイルを好むThomenとストレートなパワーメタルから距離を置こうとするバンドとの音楽性の相違が大きくなってきたことがきっかけでThomenがIRON SAVIORPiet Sielck(G、B)にコンタクトを取ったところ、スウェーデン産のBLIND GUARDIAN型パワーメタラーPERSUADERJens Carlsson(Vo)、Emil Noberg(G)を紹介されてバンド結成へと至ったようです。

本作最大の特徴はThomenがBLIND GUARDIANの新作用に書いていながら他のメンバーの賛同を得られなかった楽曲を用いているほか、それに影響を受けたPiet、Jens、Emilもソングライティングに加わることで完成した初期BLIND GUARDIANを強く連想させるパワーメタル曲の数々と、それらを表現するのに最適な「Hansi声」の持ち主Jensの強力なボーカルに尽きますね。5th「IMAGINATIONS FROM THE OTHER SIDE」(1995)から徐々にパワーメタルという枠を超え、細部まで作り込まれた壮大でオペラティックな音楽性を追求するようになったBLIND GUARDIANに今ひとつのめり込めずにいた僕のようなファンにとってSAVAGE CIRCUSは「これが聴きたかったんだ!」と思わず膝を叩いてしまうサウンドを提示してくれています。BLIND GUARDIANが成長する中で失いつつあった刺々しさや大仰でクサいメロディといった要素を多分に含んだ本作は、本家のアルバム群の中でも傑作3rd「TALES FROM THE TWILIGHT WORLD」(1990)に最も近いように思います。まずは荒々しいギターリフと前のめり気味な展開が初期BLIND GUARDIANらしさを発散しまくる①Evil Eyesを挨拶代わりに叩きつけてくれた時点でガッツポーズ。前曲の勢いを引き継ぎつつ更にスピードを増した②Between The Devils And The Seas、劇的な展開美が魅力のミドル③Waltz Of The Demon、畳み掛けるような劇メロをゴツいクワイアで歌い上げる④Tomorrowland、勇壮で力強い疾走曲⑤It- The Gathering、JensがHansiそっくりに歌うだけでなく自身の持ち味を発揮したパワーバラード⑥Beyond Realityなど、とにかく劇的なパワーメタルで押しまくる作風が好印象ですね。

ただ、序盤に比べるとアルバム後半はやや失速気味なのは否めないし、ズバ抜けたキラーチューンもないと言わざるを得ないのが惜しいかな。それでも本作の収録曲が与えてくれる爽快感や高揚感は今のBLIND GUARDIANでは味わえない魅力として僕の心を熱くしてくれます。本家の傑作アルバムを越えてはいませんが、個人的にはThomen擁するラインナップでのラストアルバムとなった7th「A NIGHT AT THE OPERA」(2002)と比べると本作の方が好みだし、Thomenの後任にFrederik Ehmke(Ds)が加入した8th「A TWIST IN THE MYTH」(2006)を聴いているとThomenとBLIND GUARDIANは別の道を歩んで正解だったと感じますね。フォロワーの一言で片付けられるサウンドかもしれませんが、そうしてしまうには勿体ないクオリティを誇っているし「もしBLIND GUARDIANがパワーメタル道を邁進していたら…」というファンの想いを具現化してくれているという意味では価値の高いサウンドだと思います。ところが、バンド首謀者であったはずのThomenは体調不良を理由に本作のツアーに参加することはほとんどなくEDGUYのオープニングアクトとして実現した2006年3月の初来日にも代役として元GAMMA RAY~IRON SAVIORのドラマーThomas Nackが同行していたようで、結局はその問題が原因でPietが主導権を握るようになったバンドからThomenは事実上解雇に近い形で脱退。バンドは後任にMike Terrana(Ds/MASTERPLAN、ex-RAGE etc)を迎えて次回作「OF DOOM AND DEATH」(2009)を発表することとなります。

【音源紹介】
・Evil Eyes